106話 終戦
俺はロンとの戦いを終え、その後気絶した。
意識が戻ったのは約3時間後のことだった。
その間、他の兵士は固まっている竜獣の捕獲に動いていた。
俺が目覚めると、俺はまだクレーターの中にいた。
近くにはロンもいた。
奴はまだ目覚めていないようだ。
その時だった。
「せんせーい!!」
遠くから声が聞こえた。
俺は体勢を起こして声の方向を見た。
するとそこには、俺の方に駆け寄ってくるラーラとエルがいた。
「大丈夫ですか先生!?」
「あぁ…俺は…大丈夫だ。状況は?」
「戦場はほとんど収束しました。他の戦場からも終息を伝える伝達鳥が来ています」
「そうか…なら…終わったんだな」
どうやら、他の戦場でも戦いは終わったらしい。
俺はそれを聞いた後、その場に立ち上がった。
そして杖を出し、魔力を溜めて空に放った。
ドーーン!!
魔力は上空で爆発した。
そして、作業に当たっていた兵士はそれを見て、歓声を上げた。
この魔術は、俺があらかじめ決めていた終戦を伝える合図だ。
爆発の音は凄まじく、戦場を通り越して全土に渡るレベルで響き渡った。
ーカオル・パルト視点ー
僕は戦いの後、サラさんと話していた。
「へぇ〜。衝術の練習ねぇ〜」
「はい!実は練習してて」
「最近だと柔術と流術が主流になってるから、そういう子は久しぶりに見たよ」
僕はこの戦いで、初めて衝術を戦いで使う瞬間を見た。
それによって、僕はサラさんに尊敬の念を抱いていたみたいだ。
「あの…よかったら今度教えてくれませんか?」
「お!いいよ!私も君に興味があるし」
「ありがとうございます!」
その時だった。
ドーーン…
遠くから爆発音のようなものが聞こえた。
「え?爆発?」
「敵襲か?」
サラさんは身構えた。
そんな中、1人の魔術師がハッとした表情になった。
あの人はたしか…戦況報告を他戦地に伝えるための兵だったような…
すると、その人は声高らかに言葉を放った。
「報告します!!前線より、戦線の終結の知らせあり!!戦線は終結いたしました!!」
え?
…終わった?
「「「「「「うぉぉぉぉぉぉ!!」」」」」」
その瞬間、軍の中から歓声が沸き上がった。
ーリュー・ダリウス視点ー
目覚めると、戦場は歓声に包まれていた。
そして、俺のそばにいたファスト様が声をかけてきた。
「どうやら、終わったようだな」
「終わり…ですか?」
「あぁ。戦争は終わったようだ」
そうか。
だからこんなに騒がしいのか。
「あの後、どうなりましたか?」
「特に何もなかった。敵の応援は来なかったしな」
俺の質問に、ファスト様は笑顔で答えた。
「まずはゆっくり休め」
「…はい」
俺はまた、眠りについた。
ードーラ・コンドル視点ー
俺達が王宮内で作業をしていると、遠くから爆発音が聞こえてきた。
これは、レオリオスが他戦地に終戦を知らせる狼煙のようなものだ。
「…少し後味の悪い終わり方だな」
「しょうがないですよ。この状況では」
俺の言葉に、シンはそう言った。
あのあと、王宮内を捜索した所、会議室と思われる場所から大量の死体が見つかった。
おそらく、この国の重役たちのものだろう。
国王は死亡し、重役も死亡。
この国はほぼ壊滅状態だったように見える。
不完全燃焼。
いや、それともまた違う感情が流れてくる。
「戦争は終わったようだが、俺達はまだ終わっていない。王宮内の探索を続けろ」
シンがそう言うと、俺達は作業を再開した。
ーナナ・L・コンドル視点ー
終戦の合図を聞いた私達は戦場を後にし、本部であるジークバルトに戻った。
「ナナ〜」
「あ!ネオさん!」
戻ると、そこにはネオさんがいた。
「あら?ロードもいたのね」
「あ、ネオ様。ご無沙汰しております」
「この前はサラさんと一緒にありがとね」
その言葉に、私は引っかかった。
「サラ?え!?今までサラと一緒だったんですか!?」
「あぁ。言ってなかったか?」
サラは元ノーボックスの中でもう1人の女性だ。
パーティーの中でも一番仲がよかった。
「会いたかったな〜」
「悪かったな、俺で」
「フフフッ…仲がいいのね」
そんな話をしながら、私達はジークバルトに入った。
ーレオリオス・パルト視点ー
終戦から2ヶ月が経った。
その間に俺はドラマルトに滞在し、戦線の事後処理を行っていた。
また、この2ヶ月間に、ジルさんの要望により、学校の臨時講師として、影魔術の講義や研究に携わった。
忙しくはあるが、苦ではない2ヶ月だった。
そしてこの日、俺はドラマルトの王宮内にある会議室にいた。
そこには各国の国王が勢揃いしていた。
「全員来たな。では、事後報告を始めるとしよう」
レナードさんの言葉の後、俺達は今回の戦線の報告を始めた。
報告は案外早く終わった。
まず人族世界。
ケーズバルト付近の平地が戦場となり、五槍の三先が襲来。
一度は劣勢になるも、剣術使いの積極的な攻撃と、模倣眼を持つ少女による観察により、敵の技を暴くことに成功。
その後、元ノーボックスのサラ・ディーンズにより撃破。
防衛戦は勝利したそうだ。
次にファジサイト。
接敵中に双翼の左翼が襲来。
リュー・ダリウスが戦闘するも劣勢。
しかし、リューの戦略により目標地点に誘導することに成功。
最後はファスト・ドーズの魔術により撃破。
そしてジークバルトの前線。
五槍の一先と四先が襲来。
ナナ・L・コンドルと元ノーボックスのロード・ゴーラン戦闘の末、ナナ・L・コンドルの魔術により撃破。
勝利はしたものの、森を半壊させた。
ソーザ奪還組は五槍の二先と五先と接敵。
シン隊長とドーラ・コンドルにより撃破。
国王確保に動くも、国王はすでに死んでいた。
状況的に他殺だそうだ。
最後にドラマルト。
双翼の右翼とレオリオス・パルトが戦闘。
撃破の後、確保。
以上が今回の内容だった。
「そうか。よく戦ってくれた。感謝する」
報告を終えると、レナードさんは深く頭を下げた。
「レナードよ。貴様のおかげだ。感謝はこちらから述べさせてくれ」
「そうです。この勝利はレナードさんの策略あってこそです」
レナードさんの反応に、ファストさんとネオさんがそう言った。
「では…」
レナードさんはそう言うと立ち上がった。
「ここに、戦争の終結と、三世界共同戦線の解散を宣言する!!」
こうして会議は終わり、三世界共同戦線は解散された。
「あ!レオ!戻ってきましたか!」
俺は会議の後、荷造りをし、ドラマルトの国門に行った。
そこには、馬車に荷物を詰め込んでいるナナ師匠とラーラ、エルがいた。
「帰りますよ先生」
「あぁ…そう言えばドーラ師匠は?」
「ドーラなら2週間前に先に帰りましたよ」
そうか。
もう帰ったのか。
ならまぁいっか。
「それじゃあ…帰りますか」
「そうですね」
「「はい!」」
俺達はエイサールに向けて出発した。
帰路はだいたい1ヶ月くらいだった。
俺達は何事もなくエイサールにたどり着いた。
俺にとっては久しぶりのエイサールだ。
実に半年ぶりである。
季節はもう秋になっていた。
9月の下旬といったところだろうか。
俺はまっさきに家に向かった。
荷物をおろし、そして家の中に入る。
「ただいま〜…」
俺は大きいが少し弱々しい声でそう言った。
ドタドタドタッ…
すると、居間の方から足音が聞こえてきた。
そして、ヒョコッとカオルの顔が出てきた。
「あ!!お兄ちゃん!!」
「ただいまカオル」
俺はカオルを見てホッとした。
表情から見ても、みんな無事のようだ。
まぁ…危ないことはないはずなんだが。
そんな事を考えていると、居間の方からもう一人の顔が出てきた。
その人はカオルよりも背が高く、ガタイのいい女性だった。
「え!?サラ!?」
「ナナじゃん!!久しぶり〜!!」
その顔を見た瞬間、後ろにいたナナ師匠が反応し、それにその女性も反応した。
なるほど。
この人がサラ・ディーンズさんか。
…めっちゃ強そうだな。
その後、玄関にはバオスやカーラが来た。
全員でお出迎えだ。
…?
あれ?
ニナがいないな。
「そう言えばニナ…っ!?」
俺がニナのことを聞こうとすると、後ろから何かに掴まれた。
いや…抱きつかれた?
「…ニナ?」
俺が後ろを向くと、そこにはニナがいた。
ニナのお腹は大きくなっていた。
それが邪魔をして、うまく抱きつけないようだった。
そして、今にも泣き出しそうなくらいの涙を目にためていた。
「…無事で…よかった……」
ニナはそう言って再度抱きついてきた。
俺はそれを受け止めるように体をニナに向けた。
「おかえりなさい…レオ!!…」
「あぁ…ただいま、ニナ」
こうして、俺は無事にエイサールに帰還するのであった。
三世界共同戦線編 〜完〜
真相と火種編に続く




