102話 第二の前線 1
ーナナ・L・コンドル視点ー
『久しぶりね。ナナ』
『…え!?ネオおばさん!?』
竜獣との戦いに向けて、私はジークバルトまで来ていた。
すると、どこからともなく念話が聞こえてきた。
その正体は、私の母「ロロ・リーフ」の姉、「ネオ・リーフ」の念話だった。
『ナナ。ここでは「おばさん」はやめてくださらない?』
『どうしてネオおばっ、ネオさんが…というかどこから?』
『私はこの前線部隊のリーダーだから、そこにいるのよ』
『へ〜。そうですか…って、リーダー!?たしかリーダーってマントシティの国王じゃなかったですか!?」
『だって私、国王よ?』
『ごぇ!?』
知らなかった。
まさか身内が国王になっているなんて…
『レオリオスくんとも話したわ』
『え!?レオとですか!?』
『えぇ。とっても面白い子だったわ』
どうやらネオおばさんはレオを気に入ったらしい。
『…さて。あなたの結婚を祝ったり、レオリオスくんのことを聞いたりやりたいことは多いけど、まずは戦いを終わらせましょう』
『…!そうですね』
『ナナ。頼りにしてるわ』
『その任、承りました。国王』
『フフッ…普通に話してちょうだい。一応家族なんだから』
『フッ…はい!』
こうして、私は戦いの準備を始めた。
ドーーン!
キーーーンッ!
ドドーン!
その2日後、遂に戦いの火蓋は切られた。
私達は魔術師が主体となり、竜獣の軍勢に攻撃を仕掛けた。
「水の槍!」
私も遠距離攻撃で敵を相手にした。
「さすがナナさんだ。1人でもう敵の2割を殲滅してるぞ」
「全体でだいたい5割の殲滅なのに、その2割があの人の魔術なんだもんな…」
私の様子を見て、周りの兵は感嘆の声を漏らしていた。
それを聞いて悪い気はしないが、少しむず痒い。
こちらの戦場は優勢だった。
しかし、異変が起きた。
「…?どうした?」
「動きが…止まった?」
竜獣の攻撃が突如として止まったのだ。
私はそれを見て、攻撃をやめた。
「…やはり…操られてる?」
この時、私はレオとの旅のことを思い出した。
その時に戦った竜獣のことだ。
「奴らは操られている」とレオは言っていた。
つまり、これはあの時と同じ理屈なのか?
そう考えていると、
『ナナ。早急に奴らを一掃して』
後方からネオおばさんの念話が飛んできた。
『え?どうしたんですか?』
『千里眼に、2体の敵が写った。かなりの手練の』
千里眼。
半径約2000キロ(正確には約1963.5キロ)を上空含めさまざまな視点から見れる異能眼。(ただし、前方に限る)
ネオさんが持っている眼だ。
『それって…』
『えぇ。多分、話にあった「双翼」か「五槍」だと思う』
それを聞いた瞬間、ネオさんが言いたいことがなんとなく分かった。
『速く倒してみんなを避難させないと、爆破に巻き込まれちゃう。だから…』
『神級以外の戦線離脱のために、まずは敵勢力を最大限削れってことですね』
『話が早くて助かるわ。できる?』
『やってみます』
その指示のあと、私は詠唱を始めた。
この魔術はいつもは詠唱しないけど、威力を上げるために、詠唱をした。
「絶対零度!!」
絶対零度。
ナナ・リーフ(現ナナ・L・リーフ)が開発した神級魔術の一つ。
火魔術と水魔術を組み合わせることによって生まれた混合魔術だ。
自身を中心に冷気を生み出す。
その冷気は凄まじく、触れた対象全てを凍らせる。
その範囲も桁違いで、100%の絶対零度の範囲は、エイサールを全て飲み込むレベル。
ちなみに、以前レオリオスとのエキシビションで使った絶対零度は、だいたい威力50%、範囲10%未満のものである。
私は詠唱中に全ての兵を避難させた後、敵の軍勢のど真ん中でそれを放った。
軍勢は一瞬にして凍りつき、一掃された。
「す、すげぇ…」
「感心してる場合じゃないです!!逃げてください!!」
私がそう叫ぶと、兵士はすぐさま逃げていった。
そして、周囲を見渡した。
そこで気づいた。
私以外、誰もいなかったのだ。
『ネオさん!他に神級の方は?』
私が聞くと、ネオおばさんは答えた。
『…嘘…やられた…?』
『え?』
それは、ネオおばさんも想定外の事態だった。
そう。
全員やられたのだ。
『生きている者もいるけど、全員戦闘不能にされてる…』
ネオおばさんはかなりの衝撃を受けている。
私もそれを聞き、状況を理解できなかった。
その時だった。
スンッ…
周囲が謎の空気に変わった。
それはまるで、誰かに見られているような感覚だった。
「………」
私は念話をやめて、警戒を強めた。
………。
………。
………。
パリッ!!
「…!!?水鏡結界!!!」
パリーン!!
私は気配を察知して、反射的に王級の結界を張った。
しかし、その結界は何かに破られ、私は数メートル飛ばされた。
「…っ!!」
私は着地し、自分がいた方向を見つめた。
そこには一体の竜獣がいた。
その竜獣は体から「パリッ」という音を発していた。
「…雷?」
「…ん?死んでない?」
竜獣は私の存在に気づいた。
正確には”生きていることに気づいた”というところだろう。
スンッ!!
その間に、私は背後にもう一つの気配を察知した。
「…っ!?」
振り返ると、そこには槍を突き出そうとするもう一体の竜獣がいた。
「…っ!!光輪周斬!!」
「何!?」
ズンッ!!
私が咄嗟に魔術を出すと、槍使いの竜獣は即座に空に逃げた。
そして、雷のような魔術を纏った竜獣の隣に行った。
『ナナ!?大丈夫!?』
すると、私の脳内にネオおばさんの念話が流れてきた。
『大丈夫です。…奴らが?』
『えぇ。さっき言ってた2体よ』
そう聞いた後、私はその2体を睨んだ。
「…名乗ったほうがいいかな?」
「…お構いなく」
「そうか。なら名乗ろう」
私の応答に、雷のような魔術を纏った竜獣は言葉を続けた。
「余は五槍の『一先』ボルト・ライダーである」
「…俺も名乗るの?」
「…名乗れ」
ボルトがそう言うと、槍使いも言葉を放った。
「俺は『四先』。名前は…ランサー・ゴルゴンだ」
私はそれを聞いた後、杖を構えた。
「貴様は『不可視のナナ・リーフ』だろ?」
ボルトはそう言った。
「知ってるんですね?」
「知らぬ者のほうが稀だ」
そう言うと、彼らも臨戦態勢になった。
「では…始めるか」
「………」
私は考えた。
というのも、正直勝てる気がしないのだ。
私は魔術師であり、溜めて高出力の攻撃を放つのが得意だ。
故に、スピードで押されれば負ける。
対する2人は見たところスピード特化。
さらには数的不利。
(どうすれば…)
そう考えているうちに、2人は動き始めた。
「雷一閃」
「解・竜槍術!!」
2人は私めがけて高速で移動し始めた。
…どうする?
このままだと瞬殺だ。
けど、考えてる暇はない!
「内透結…」
私は間に合わないと分かっていながら、結界を出そうとした。
………。
「ちょっと…待てぇぇぇい!!!」
「え!?」
その瞬間、上空から何かが降ってきた。
いや…誰かが降ってきた。
「…!?」
2人はそれに驚き、咄嗟に攻撃の軌道をずらした。
(誰!?)
私は土煙の中、その姿を見た。
「…アタタタ…大丈夫かナナ?」
そこには1人の男がいた。
全身武装の鬼族だった。
額から角を生やし、少し肌が黒い。
そして、見覚えのある顔だった。
「ロード!?なんでここに!?」
ロード。
本名「ロード・ゴーラン」。
鬼族にして、元「ノーボックス」のメンバー。
ノーボックスのメンバーとしては唯一の王級の剣術使いだが、実力は他メンバー3名に劣らないと言われている。
そんなロードが、空から降ってきた。
私はあまりの出来事に、戦闘中にもかかわらず日常でも出さないような大きな声を出してしまった。
「サラとの話し合いでな。ここに向かってきたんだが…来て正解だったな」
私の質問に対して、ロードはそう応えた。
「…増援か?」
「そのようだな」
ボルトとランサーは警戒しながらこちらを見ていた。
「…あの2人…スピードタイプか」
「流石ですね…見ただけで分かるなんて」
「まぁ…鑑定眼あるし」
そう。
ロードは異能眼の一つ「鑑定眼」を持っている。
それによって、ロードは状況を瞬時に理解した。
「ま!俺が来たからには任せろ!『ノーボックスの速さ担当』といえば…」
「…フッ!そうでしたね!」
ノーボックスは前衛において、力はサラ、技術はドーラ、そして速さはロードと言われていた。
つまり、この戦いにおいて、ロードほど頼りになる味方はいない。
「2対2になったし、やるか!」
「反撃開始ですね!」
こうして、私達の戦いは次のラウンドに移るのであった。




