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101話 ソーザ奪還作戦 2

ファズマとアイズは2体の龍を操り、俺達を攻撃した。

対して、俺とシンは剣で攻撃を捌きながら、縦横無尽に駆け回った。


「へぇ〜。すごい動きだね」


ファズマはまるで感心したかのような声を漏らした。

その口調に、俺は思った。


(こいつ…まだ余裕があるのか?)


しかし、それを確信できない理由があった。

それはもう一方の敵、アイズの様子だ。

あいつの表情には怒りと必死さが見える。

そう。

ファズマと正反対の表情をしているのだ。


「兄さん?あとは任せるよ?」


「…あぁ」


そういった会話を交わすと、ファズマは背中にあった大剣を抜き、俺とシンに迫った。


「「…!!?」」


俺とシンは驚いた。

しかし、ファズマの行動に驚いたわけではない。

驚いたのは魔術の方だ。

ファズマは魔術の操作をやめ、俺達に切りかかってきた。


それなのに、ファズマが出した溶岩の龍は消えないどころか、俺達に攻撃を続けていた。


「操作していないのに動いてるだと!?」


シンは驚いたことをそのまま口に出した。

通常、魔術と剣術を同時に使うのはかなりの技術を要する。

剣力と魔力の同時併用は、脳に相当な負荷を与えるからだ。

しかし、あいつは魔術の出力を変えることなく切りかかってきた。


それはいわば異常だ。

この魔術でこんな芸当をできるとすれば、奴の脳は同時併用に追いつかずに廃人になっていてもおかしくない。


だが、ファズマは向かってくる。



キンッ!!


俺はファズマの剣を受け止め、その隙にシンがファズマに攻撃を仕掛ける。

しかし、


ゴォォォォ!!


近づいてきたシンを、2体の龍が阻む。


「ハハッ!さすが兄さん!!」


「お前はもう少し気をつけろ!」


2人は口論をしながら俺達に攻撃を仕掛けてくる。

まるで兄弟の遊び道具にされているようだ。

(チッ!)

俺は心の中で舌打ちをする。

だが、ムカついている中で俺は一つの考えに至る。


(この2体には、なにか種がある)


俺はシンに視線を送る。

すると、シンは俺に何かを伝えようとしている。

どうやら、シンも同じことを思っているようだ。


「ドーラ殿」


すると、シンは俺の下まで飛んで来た。


「俺が奴らを食い止めます。ドーラ殿は奴らのからくりを解いてください」


そう言ってきた。


「とは言うが、我もわからんぞ」

「可能性だけでもいいんです。それならおそらく、俺よりもドーラ殿の方が見聞が広い」


そう言って、シンは俺を見つめる。


…やるしかないか。


「よかろう。1分くれ」


「分かりました」


そう言うと、シンは再びファズマに切りかかった。


(なにかないのか?)


俺は自分の中で自問自答を始めた。

奴らの種を暴くために、自身の知識を最大限引き出す。

ファズマはどうして魔術と剣術を同時に使えるのか?

そもそも、なぜ奴は余裕の表情なんだ?

アイズはかなり苦しそうな表情だが…


…苦しそうな表情?


そうだ。

アイズとファズマの様子は正反対だ。

まさか、それに種があるのか?


…そう言えば、ファズマはアイズのことを「兄さん」と言っていたな。

つまり、奴らは兄弟?

…兄弟。

遺伝子のつながり。

魔力の性質…


…魔力は本人に戻る。

俺は魔力の性質ともう一つ、とあることを思い出した。


「双子は、片割れと魔力の性質が類似する…」


これは、ナナの持っていたとある本に書かれていた内容だ。

双子は同じ親の細胞からできる都合上、魔力性質がかなり似ているらしい。

そして稀に、完全一致の個体もいるんだとか…


「…そういうことか!!」


俺は奴らのからくりに気づき、それを攻略するすべを思いついた。






「ドーラ殿…!!」


シンはこの1分の間、ひたすらにファズマと戦っていた。

否。

ファズマとアイズの2体を相手にしていた。


「もう…限界です!!」


シンは限界を迎えそうになっていた。


「ハハハッ!!もう終わりなのか?」


「ファズマ。速く済ませ…!?」


アイズが何かを言いかけた瞬間、気付いた。

俺がアイズの懐に潜り込んでいたことに。


「な!?」



「蛇線・飛剣乱舞!」



俺はアイズめがけて無数の剣力を飛ばす。


「…くっ!貴様ぁ!!」


アイズはそれを防ぐために、それまでシンの攻撃に使っていた2体の龍を俺の攻撃の防御にまわした。

そう。


「2体の龍」だ。


「やはりな。お前らのからくりが分かったぞ」


「「「!?」」」


その発言に、その場にいた全員が驚いた。


「お前らのからくり…それは…」


俺は声高らかにこう言った。



「…双子の魔力類似を利用した、魔力と魔術、剣力の共有だ!」



奴らの種はこうだ。

まず前提として、奴らは双子だと予想した。

それと同時に、奴らの魔力の性質はほぼ同じとも言えるほどに酷似しているのだろう。

奴らはそれを利用し、2人の魔力を連結させた。

それを利用し、両者間での魔力譲渡を可能にし、魔術ごと一方に主導権を渡していたのだ。

これにより、ファズマは剣術を利用することができた。

対するアイズは、ひたすらに魔力を消費して魔術を操った。

魔力の枯渇状態をファズマの魔力で補っていたから、ひたすら魔術を打つ一方、枯渇状態の激痛に耐えていたから苦しい表情をしていたのだ。


これを踏まえて、俺が考えた作戦。

それは…


アイズの魔力消費を増やし、両者の魔力をなくすこと。


そこで、俺はアイズを集中攻撃した。


「使い切るまでやらせてもらう!」


「…くっ…竜人…風情が…」


「兄さん!?」


それに気づいたファズマは、俺めがけて攻撃を仕掛けようとした。



キンッ!



だが、それはシンによって止められた。


「ドーラ殿!任せます!!」


「ぐぁぁぁぁぁぁ!!!」


俺はひたすらに剣力を飛ばした。

速度を上げ、威力を上げ、ひたすらに剣を振った。




「「…ぐはっ!!」」



俺の限界が迫った瞬間、ファズマとアイズは同時に血を吐いた。

そして、その場にひざまずいた。



「魔力…切れ…だと…」



そう。

奴ら2人分の魔力が底をついたのだ。

奴らはもう、魔術も剣術も出せやしない。



「…終わりだ」



俺はアイズの、シンはファズマの首に、剣をたてた。


「…フン…負け…か…」


意外にも、アイズはかなり冷静に、そしてあっさりと敗北を認めた。


「兄さん!?ここで…死ぬわけには…」


「いいんだ…王がいない中…我らに…生きる意味など…!」


そう言うと、アイズは立ち上がった。


「…っ!!」


俺が首の剣を振ろうとしたその時。



シュン!!



グチャ!!



高速で移動したアイズは、ファズマの心臓を貫いた。


「ぐはっ!…兄…さん…」



「安心しろ…すぐ…行く…」



その言葉の後、ファズマは絶命した。

そして、アイズは俺に振り向く。



「竜人の剣士…正気になった我の…話を一言聞け」



そう言って、アイズは自分の首に剣を置いた。



「王の意志は、平和だった」



スパンッ!!



そう言い残し、アイズは自分の首を切った。

そして、絶命した。


「…正気に…戻った?」

「ドーラ殿、どうされた?」

「...いや。進もう」


俺はアイズの言葉に疑問を抱きながら、王室へと向かった。






俺達が王室へたどり着くと、兵士が群がっていた。


「どうした?」

「シン隊長…」


シンが聞くと、兵士は青ざめながら答えた。



「竜獣王が…居ません…」



王室はもぬけの殻だった。

いや、正確にはもぬけの殻ではないな。

床には血痕と思わしき跡が残り、部屋には気持ちの悪い匂いが立ち込めていた。


そして、玉座には白骨化した竜獣の死体があった。

血肉は完全になくなり、骨からは腐敗臭がする。

そして、その体にはマントがはおられていた。

竜獣の紋章がついた、赤いマントだ。

それを見た俺達は、竜獣の状況を理解した。

そして、更に恐怖した。

心の整理がつかない。

だが、まず言えることだけは言っておこう。



竜獣王は、殺害されていた。

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