99話 ファジサイトの戦士と龍 2
俺はつなげた双剣の片方を持ち、体勢を低くして構えた。
「…なんだ?その構えは?」
ユダは俺の構えに警戒を強めた。
そして俺は、目をつぶった。
………。
………。
………。
「…ッ!」
俺は目を開き、ユダに向かって走り出した。
「双術・転!!」
俺は術を出すと、鎖についたもう一方の剣を回し、ユダを攻撃した。
「…!?なに!?このハチャメチャな動き!?」
そう言って、ユダは技を受け止めた。
「けど!!」
そして、ユダは反撃してきた。
高速で剣技を出し、俺めがけて攻撃してきた。
しかし、
カカカンッ!!
「何!?」
ユダの攻撃は、俺の剣の回転に弾かれた。
「…っ!?なら!」
そう言って、ユダは剣の回転の外側から攻撃しようとした。
だが、
バシンッ!!
その攻撃は、リューの流術に捌かれた。
「攻撃が…当たらない!?」
双術・転。
リューが開発した技であり、神級でも稀にしかない「混術」である。
混術とは、魔術、剣術、体術の組み合わせによって生まれる技のこと。
リューはこの技に「月光斬」「周花」「界外剣」「流術」を組み合わせた。
剣を回しながら相手に急接近することで、相手に攻撃をする一方、敵の攻撃を回転で受け止める。
その対象外の攻撃を流術で流す。
これが、リューの「逆手」の所以であり、この技はファスト・ドーズより「絶対防御の攻撃」と言われた。
俺はひたすら攻撃を続けた。
力のままに。
勢いのままに。
「くっ!!リュー・ダリウス!!!」
「ごぁぁぁぁぁぁぁ!!」
俺とユダの攻撃は絶え間なく激突し続けた。
いつまでも…勢いのままに。
「あぁぁぁぁぁぁ!!」
「ぐぁぁぁぁぁぁ!!!」
お互いの攻撃は加速していき、他の人の目には見えないほどまで速度が上がった。
そして、
キーーーンッ!!
俺とユダの剣は弾かれ、攻撃に隙が生まれた。
(ここ!!)
俺は弾かれた剣ではない方。
右手に持っていた剣の剣先をユダに向け、突き刺した。
グシャッ!!
肉に何かが刺さるような鈍い音が、ユダの体から聞こえた。
「ぐはっ!」
そして、ユダが血を吐いた。
しかし、それで油断してしまった。
「…!?」
ユダは俺を蹴り飛ばした。
その蹴りの威力は尋常ではなく、俺の体から骨が折れる音が聞こえた。
「…がっ!!」
俺は地面に激突し、倒れこんだ。
「…まさか…ここまでやられるなんて」
ユダは傷口を押さえながら、こちらへゆっくり向かってきた。
「…もうおしまいよ。ここで…」
そして、ユダは剣を構えた。
「任務完了だ!リュー!」
その瞬間、俺の後方から声が響いた。
俺はうつ伏せになりながらも、そちらの方を見た。
そこにはファジサイトの国王「ファスト・ドーズ」が立っていた。
「ファスト…様…」
「よくここまで耐えた。ここからは我の番だ」
そう言うと、ファスト様は俺の前に立った。
「やっと…大将の登場…のようね」
ユダは立ち止まり、剣を構えた。
「出てはきた。だが終わりだ」
「は?」
それを聞くと、ユダはとてつもない形相でファスト様に近づいた。
「舐めるなよ!ただの竜人の老人が!!」
今までにないほどに激昂したユダは、どんどん近づいていく。
「この範囲に入った時点で、お前は負けたのだ」
「は?…!?」
その時、ユダは気付いた。
自分がファジサイトのすぐそこまで来ているということに。
「お前は負けたのだ」
そう言って、ファスト様は杖を出した。
「リューの作戦にハマった、お前の負けなのだ」
そうして、ファスト様は魔術を発動させた。
「蒼龍水神」
「………」
「………」
術を発動させたと思われるが、何も起こらなかった。
そう、何も起こらないのだ。
「ふっ…かの国王が…ハッタリとは…」
ユダは笑みを浮かべた。
しかし、ファスト様も笑っていた。
「何を言っているのだ。上だ」
俺は這いつくばりながら上を見た。
そして、ユダも上を見た。
「「は?」」
そこには、とんでもない大きさの水の龍が5体いた。
「なに…この魔術…」
蒼龍水神。
ファスト・ドーズの神級魔術。
これはあまりの規模が故、自信の魔力では龍を一体出すのがやっとであるが、魔術の研磨によって、自身の魔術効果範囲をファジサイト全域以上に広げた。
そして、国の周りにある魔術効果範囲内の海の水を用いて、無数の龍を作れるようにした。
そして、龍を敵に一点集中でぶつけ、敵を圧殺する。
ユダは青ざめた。
自身が消耗している中、この魔術は受け止められないと悟ったのだ。
「さらばだ…まだ若き竜よ」
「…!?まっ…!?」
その瞬間、上空にいた龍は一斉にユダに襲いかかり、ユダを押しつぶした。
そして、それによって発生した水流は残りの竜獣の軍勢を押し流し、くぼみに流れ込んだ。
流れ込んだ水はくぼみを満たし、湖を作った。
こうして竜獣の軍勢は殲滅された。
防衛戦は、こうして勝利した。
「ファスト…様」
「リューよ。お前のお陰で、やつをここまで誘い込めた」
そう言って、ファスト様は俺を背負った。
「よくやった」
「ありがとう…ございます…」
俺は、ここで気絶するのであった。




