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97話 ケーズバルト防衛戦 2

僕は眼帯を取り、模倣眼を開眼した。

お父さんの言葉の意味。

それは、「俺達が時間を稼ぐ間に、模倣眼で奴の魔術の仕組みを解説しろ」というものだったのだ。

僕がそれを考えついた時、お父さんたちはひたすらに戦っていた。


「ヒャヒャ!まだまだ踊れ!!」


イドの攻撃は止まらない。

向かってきた人たちを次々とふっとばし、魔術で殺していった。


「のろいのろい!それでは我の魔術からは逃げられんぞ!!」


イドは高笑いをした。

僕はそれを見続けた。

模倣眼で観察を続けた。


その時、僕はお父さんの行動を理解した。

突然、剣術使いをイドに集めたのは、倒すためではなく足止めなのだ。

僕が魔術を解析するまでの。


カンッ!!


カンッ!


みんなが吹っ飛ばされる中、少数の実力者達はイドの近くにとどまり、動きを妨害した。

その中には、お父さんもいた。


「お前らだけはしつこいな」


「一応…守るものがあるんでね」


お父さんはそう言った。

けど、おそらくそれは意地だ。

お父さんの体力はいつ限界が来てもおかしくない。


「…!?」


僕はこの時気付いた。



イドはなぜか、お父さんたちに魔術を撃たない?



ふっとばした人には容赦なく魔術を撃つのに、自分の近くにいる人には撃ってこないのだ。


「…クソ…座標が…」


イドはそう言って舌打ちをした。


座標…


そんな時、僕はお兄ちゃんの技を思い出した。

「影の雨」や「光襲の矢・雨」は、イドの「龍下」に似てるけど、何かが違った。

何か…狙いを定めているような挙動をしているのだ。


…狙ってる?


僕はイドの目を見た。

すると、そこには衝撃的な光景が見えた。


「目から…魔力が出てる!?」


そう。

イドの魔術は目から発生していたのだ。

僕はそのまま、イドの魔力を追った。

すると、魔力はとある位置で止まった。

そして、その下に人が飛んできた瞬間だった。


ドンッ!


魔力は龍の形になって、その人に落ちた。

いや、その場に落ちた。

そこの人には幸い当たらなかったが、危なかった。


まさか…


僕は再びイドを見た。

イドの目から出る魔力は、お父さんの上にもあった。


「お父っ…」


しかし、僕の声が届く前に、魔術は発生し、お父さんめがけて放たれた。



ズドーン!



「お父さん!!」


辺りには土煙が立ち、一瞬何も見えなくなった。


シュンッ!!


すると、その土煙の中から複数の人が出てきた。

イドとそれを相手する剣術使い達だ。

その中には、お父さんもいた。

どうやら、お父さんには攻撃が当たらなかったようだ。


そう。

当たっていないのだ。


「…やっぱりそうだ!」


この時、僕はイドの魔術の仕組みに気づいた。



「お父さん!仕組みがわかった!!」



その言葉に、イドを含めた全員が動きを止めた。


「イドの魔術…それは…」


僕は全員に聞こえるくらい大きな声で叫んだ。



「指定した場所に魔術を発生させる魔術だ!!」



龍下。

「炎戒の龍」と同じく、竜族秘伝の魔術の一つ。

自身が指定した場所の上空に魔力を溜め、落とす。

圧縮された魔力は凄まじい質量を持ち、下にいる敵を押しつぶす。

イドはその技を同時使用することで、まるで雨を降らせるように多段で広範囲の攻撃を実現した。

けれど、この技の発生には一定の時間を用いるため、自分で吹き飛ばした敵にはタイミングを合わせることで攻撃を当てられるが、近距離で不規則に動く敵には狙いが定まらず、攻撃がはずれる。


これが、イドの魔術の仕組みだ。

つまり…



「全員!イドが把握できなくなるまで動き回れ!!!」



この魔術の対処法は…


イドに動きを読まれないこと!


僕の呼びかけの後、その場にいた防衛軍は一斉に動き始めた。

たかが少女1人の声ではあったが、周りの人はそれを信じ、即座に行動に移したのだ。


「…くっ!…小娘が!!!」


その瞬間、イドの顔から笑顔が消え、怒りをあらわにした。


「…やっと…ムカつく顔が消えたな!!」


それを見た剣術使い達はここぞとばかりに接近した。


「ここが踏ん張りどころだ!!全員、畳み掛けろ!!」

「おぉぉぉぉぉぉ!!」


しかし、その瞬間だった。



ビュンッ!!



イドは羽を広げ、上空へと向かった。


「バレたなら余興は終わりだ」


そして、僕の目には、とある光景が映った。

それは、防衛軍めがけて何十、何百にも発生し始めたイドの魔術だった。



「全員…潰れろ!!…が…」



そう言うと、イドは突如として姿を消した。

そして瞬く間に、僕の前に現れた。



「お前だけは…この手で殺す!」



イドは、魔術の種を暴いた僕を自分の手で殺すために、急接近したのだ。


「…!?カオル!!!」


お父さんは叫んだ。

僕は逃げようとした。

けれど、動く前に、イドの剣はすぐそこまで来ていた。

…あ。

これって…


死ぬ…


「…っ!!」




「よくやったね。お嬢ちゃん」



ピキーン!!



僕が目をつぶった瞬間、何処かから声が聞こえ、なにかにヒビが入ったような、砕けたような音がした。


パラパラパラ…


そして、僕の目の前に何かが落ちる音がした。


「…え?」


僕が目を開けると、そこにはイドと、イドの剣を受け止める女性が一人いた。

いや、受け止めると言うより…


双剣の片方を砕いていた。


「…!?貴様は誰だ!?」

イドは驚いたように声を上げた。


「あたいかい?まぁ…ただの元冒険者さ」


彼女は余裕の笑みを浮かべ、そう言った。

あたりを見ると、全員が驚いた表情で見ていた。


「あ…あの人は…!?」


その中で、1人の中年くらいの剣術使いが声を上げた。



「『ノーボックス』サラディーンズ!!」



「だ・か・ら!『サラ・ディーンズ』だって言ってんだろ!!何年言えば分かってくれるんだよ!!」



彼女は舌打ちして言った。


「…くそ…ドーラも未だにつなげるしよ…」


その名前を聞いて、僕は思い出した。


そうだ。

「ノーボックス」って、ナナさんとドーラさんのやってたパーティーだ!


「ふぅ…さて。嬢ちゃんのおかげで技の仕組みもわかったし…ここからは近づいて戦おう」


「くっ!!舐めるなよ!女が!!」


サラさんの言葉にイドは激昂し、壊れていないもう一方の剣を振ると同時に、魔術をサラさんめがけて撃とうとした。


「みんなに撃たれたらあれだし…」


そう言うと、サラさんは剣を避け、一瞬で懐に入った。



「一撃で!!」



そして、イドの腹めがけて拳を出して…止めた。


「…は?」



「柱衝(ちゅうしょう)」



魔術が発生しようとした瞬間だった。

サラさんが拳を出した瞬間…



イドの胴体は、円形にくり抜かれたように消失した。



「…がっ…」


そして、拳の方角の先にいた竜獣の集団は、何かの力に吹っ飛ばされたのが見えた。


「ばか…な…」


イドはそのまま息絶え、その頃には竜獣の集団も吹き飛ばされて戦闘不能になった。


「…おわ…終わった?」


防衛戦はあっけなく終わった。

それはまるで、何かの幻を見ているようだった。


「よくやったねお嬢ちゃん。いや〜助かったよ」


そう言って、サラさんは僕の頭を撫でた。


「さて…ロードはどうなったかな?」


そう言って、サラさんは東の方角を見つめるのであった。

サラ・ディーンズ

年齢・・・39歳

誕生季・・・春

容姿・・・・金髪で肩下まで・ガタイが良い・右腕に傷

技術・・・・衝術神級・操林魔術

その他・・・・エルフ・元ノーボックス・マントシティ盟友・魔獣ハンター・遅延眼持ち・二つ名「瞬衝(しゅんしょう)」

豪快で大雑把だが、誰よりも仲間思いな性格。「ノーボックス」が解散した後、マントシティから紋章付きの短刀を付与され盟友となり、マントシティからの依頼を受け、日々魔獣狩りをしていた。


遅延眼(ちえんがん)

この目の能力は、前世で言う「タキサイキア現象」を強制的に起こすものだ。視界に捉えた動きが一時的に1/20の速度で見える。ただ、時間を遅くするわけではないため、攻撃を避けたりは持ち主の反射神経次第。サラは持ち前の反射神経と先読み能力で、その目を使いこなす。なお、開眼の継続時間はおよそ5秒である。

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