96話 ケーズバルト防衛戦 1
ーカオル・パルト視点ー
お兄ちゃんが村を出て3ヶ月くらいが経った。
お兄ちゃんは村を出た後、様々な国に赴いて「三世界共同戦線」の準備をしていると聞いた。
そんな中、この人族世界も戦線に参加することになり、戦闘能力がある人たちは、全員ケーズバルトに集められた。
僕もそこへ行った。
そして、僕はケーズバルトの防衛につくことになった。
「カオル。準備はできたか?」
僕が準備をしていると、お父さんが話しかけてきた。
僕の父であるバオス・パルトは、元ケーズバルト近衛騎士団第二部隊小隊長だったこともあり、1分隊の隊長を務めている。
僕はそこに所属し、任にあたっている。
「うん。準備はバッチリだよ!」
「そうか。レオ達から、前線が動き始めたという情報が来た。おそらく、もうすぐここにも敵が来る」
そう。
これは兄、レオリオス・パルトが率いる前線チームが竜獣の軍勢と接敵した直後のことである。
「死ぬなよ」
「うん!」
僕は力強く返事をした。
すると、事は起きた。
「バオスさん!ウェストン方面に、竜獣の軍勢が確認されました!」
「何?ウェストン方面だと?」
この時、僕もお父さんも疑問に思った。
「なぜ竜族世界の真逆から来るんだ?」
そう。
ウェストンはケーズバルトの西に位置する国。
対して、竜族世界はケーズバルトのはるか東の方にある。
つまり、竜獣の軍勢は、わざわざ遠回りして攻めてきたのだ。
「…まずいい!分隊を西門に集めろ!」
「はっ!」
こうして、防衛軍は西門に集められた。
そして、戦いは始まるのであった。
「全軍、出撃せよ!」
ケーズバルト国王、ディール・ラノスさんの合図とともに、防衛戦の火蓋が切られた。
「カオル!援護!」
「はい!お父さん!」
僕は魔術で援護をしながら、竜獣と戦った。
「ぐぁぁぁ」
「フンッ!」
そして、近くまで来た敵を衝術で倒した。
そんな中。
「「「「「ー・ーー〜・ー」」」」」
相手の方から、詠唱が同時に聞こえた。
「でかいの来るぞ!」
「魔術師班!結界を張れ!」
「「「「「「扇結界!!」」」」」」
ドーーン!!
相手の大型の魔術は結界に衝突した。
結界は割れることなく、その攻撃を防いだ。
「よし!このまま攻めろ!!」
戦況は僕達の優勢だった。
その時だった。
「まて!なにか様子がおかしいぞ」
お父さんが全員を静止させた。
見ると、竜獣は動きを止め、明後日の方向を向いていた。
「…なにこれ?」
「わからん。だが、何かただならんことが起きようと…」
お父さんが何かを言いかけたときだった。
ズンッ!!
「!?」
「!?」
「ん!?」
急に空気が重くなったのを感じた。
そして、それはお父さんも同じだった。
「何か…くる…」
すると、軍勢の奥の方から、一体の竜獣がこちらに向かってきたのが見えた。
そいつは、他の竜獣とは格好も雰囲気も違った。
そして、僕達は思った。
「マズいのが来た」と。
そいつは私達と竜獣の軍勢の真ん中で止まり、言葉を発した。
「ーー?ーーー!」
それは、意味が理解できない言語だった。
私達が警戒した目で見ていると、そいつの様子は変わった。
「あぁ…そうか。言語が違ったようだな」
やつは突如として人族語で話し始めた。
「すまぬすまぬ。母語で話してしまった」
どうやら、さっきの言葉は「龍神語」だったらしい。
「改めて、我は竜獣五槍の三先『イド・ゲート』である。以後、お見知り置きを」
そう名乗った彼、イドはその後、背中にあった双剣を抜き、構えた。
「さぁ!来るがいい!ここからは我一人が相手だ!」
イドの出現に対し、僕達は混乱していた。
無理もない。
突然のことだった。
突然の襲来に、僕達の頭はついていけてなかった。
「…来ないか」
それを見たイドはため息を漏らした。
そして、構え方を変えた。
「ならば…こちらから」
ヒュン!
その瞬間、イドは姿を消した。
僕達は警戒した。
が、その警戒は遅かった。
「竜族秘伝…」
「「「「「「!?」」」」」」
気づいたときには、イドは防衛軍の中央にいた。
「…龍下!!」
ズドドドド!!
その瞬間、イドの周囲は血の海となった。
上から複数の魔力が降ってきて、周囲の人達を無差別に殺した。
その場にいた人は、魔力に押しつぶされ、跡形もなかったようだ。
「離れろ!!」
誰かがそう叫ぶと、全員が散り散りにその場を離れた。
だが、それは意味をなさなかった。
「どこへ行く?」
グチャ!
いたるところから気持ち悪い音が響き続けた。
「ヒャヒャヒャヒャヒャ…!!」
イドは気持ち悪い笑い声を上げながら、辺りを蹂躙していった。
その時だった。
カンッ!
気持ち悪い笑い声と音が止まったのと同時に、金属がぶつかる音が響いた。
慌てていると、そこにはお父さんがいて、イドの剣を受け止めていた。
「ほう…止めるか」
「………」
僕は言葉を失った。
それは全員そうだった。
止めたことにではなく、姿にだった。
だってそうだろ。
お父さんには…
…片腕がないのだから。
「知ってるか獣?怒りってのは、それなりの力を発生させるんだ」
僕はこの時、恐怖を感じた。
お父さんの怒った所を、僕は見たことがなかった。
「剣術使い!逃げるな!」
お父さんはイドの剣を受け止めたまま、そう叫んだ。
「勝つために…命をかけろ!!」
そう叫ぶと、辺りの空気が変わった。
最初は恐怖しかなかった雰囲気がその瞬間、覚悟と勇気のようなものを感じる雰囲気になった。
ドドドドドドッ…
そして、立ち止まっていた剣術使いが一斉に駆け出した。
そして、
「ぐぁぁぁぁぁぁ!!」
「あぁぁぁぁぁぁ!」
剣術使いはイドに飛びかかった。
「数が増えようと無駄だ!!」
そう叫ぶと、イドは全員を薙ぎ払いで吹き飛ばした。
「カオル!!」
その中で、お父さんは僕を呼んだ。
「奴の魔術を…解析してくれ!!」
その言葉に、僕はハッとした。
この瞬間まで、僕は何をすればいいのか悩み、何もできないことに絶望していた。
けれど、そうではなかった。
お父さんは、自分の命をかけている中で、僕に道を示した。
けど、どうやってだ?
どうやってアイツの技を見極めるのかがわからない。
ー解析…ー
僕はこの言葉に引っかかり、そして理解した。
「…開眼!!」
僕は眼帯を取り、模倣眼を開いた。




