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終わりが始まる

「今のって、なに?」

「なにかは分からない。けど、確実にやばいことは確かだな。あの感じからすると誰かに襲われたようにも聞こえたし」

「とにかく体育館に——」


近衛の言葉を遮るように廊下から生徒の悲鳴が聞こえてきた。

それも沢山の生徒たちの声。

何かから逃げるように、廊下を走って行く音。

俺は咄嗟に、保健室のカーテンを全て閉めた。

内側から部屋と窓に鍵をかけ、完全な密室を作った。


「ちょっと!なにしてんの?」

「聞こえるだろ?明らかに異常事態だ。聞こえる悲鳴が廊下と外、どちらからもしてるってことはどっちも危険ってことだ。今部屋から出て体育館に行けば、その危険に巻き込まれるリスクが増える」

「でもここにいたってしょうがないじゃん!あんたは——」

「佐々木一瀬ささきいちせ。俺の名前はあんたじゃない。一旦騒ぎが落ち着くのを待とう、動くのはそれからでも遅くないだろ?」

「…分かった」


近衛は少し口を尖らせながら、保健室のベッドに腰掛けた。

どうやら俺の案に乗ってくれるようだ。

先程から外からは悲鳴と叫び声、それと放送でも聞こえた異常ななにかの声が聞こえくる。

きっとみんな、あの声を出す生き物から逃げているんだ。

さて、どうしたものか…。





「佐々木!佐々木起きて!」


ガタガタという音と共に、誰かが俺の肩を強く揺すった。

この声は…近衛か?


「ん、なんだ?」

「なんだじゃない!あんた普通に寝るとかどういう神経してんの!?てか、あれみて!どうする?」

「どうするって…」


どうやら座っていたソファでうたた寝していたらしい。

自分のことながら、あまりの無神経さに驚くが今はそこではない。

近衛が指差すのは俺が施錠したドア、それがガタガタと激しく揺れていた。

無理やり開けようとする音だけが聞こえ、声といったものはなにも聞こえない。

こんなこと、命の危機がかかった状態の人間がするとは考えられない。

普通、助けてくれとか開けてくれって言うものだ。


「開けない方がいい。嫌な予感がする」

「でも、誰かが逃げてきたのかもしれないじゃん」

「無言でこんなに強くドアを揺らすなんて、普通じゃない。とにかく息を殺して、何か武器になりそうなものを探そう」


逃げてきた生徒だった場合、ドアを開けて助けてあげたいと近衛は思っているのだろう。

金髪ギャルで見た目があれだが、近衛はきっと心が優しいんだ。

俺を保健室まで連れて行ってくれた理由は不明だが、悪い奴ではないと思う。

人は見かけによらないとはまさにこの事だ。

俺たちは静かに保健室を歩き回る。

武器になりそうなもの…といってもここは保健室だ。

治療のための道具ならあるが、人を傷つけるようなものが置いてあるとは思えない。


「ねえ、これなんかどう?」


そう言って近衛が持ってきたのは掃除道具の箒だった。


「ナイス!それはかなりいい武器だ。硬いしリーチも長い、とりあえず先端に付いてるのは取りはずそう」


掃除道具としての役目を終え、俺の手によってただの棒に戻った。

未だにガタガタと揺れるドア。

わざわざドアからではなく、窓から逃げればいいと思うだろうがそう簡単にはいかない。

この学校の保健室は二階にあるからだ。

しばらく待ってもドアはずっと揺れ続けた、すると我慢の限界からか、近衛がベッドから立ち上がると棒を持ってドアに近づいた。


「お、おい!」

「もう無理。うちがドア開けるから、佐々木はもしもの時、お願い」

「待てよ!危険だ!」

「待ってたって何も始まらないでしょ?それに、雪乃たちが心配だし、うちは早く体育館に行きたい」


近衛はどうやら、カラオケに向かったギャル仲間を心配しているようだった。

まだ学校から出ていなくて体育館に向かった可能性もある。

町もここと同じ状況になってる気がする。

カラオケに向かっているとすればかなり危険だ。

外から聞こえる音は悲鳴や叫び声というよりは、パトカーや救急車、消防車のサイレンの音がかなり多く聞こえている。


「開けるからね」

「…しょうがない、分かった。開けたらすぐ離れろよ」

「うん…いくよ!せーのっ!」


ガラッとドアが開く。

そこにいたのは、なんと生徒だった。

どこからから血を流しているのか、服には大量の血が付着していた。

顔は俯いてるのでよく見えないが、どこかフラフラしているように見える。

なんだ?様子がおかしい?


「大丈夫!?」

「近寄るな近衛!」


血を見て咄嗟に近づいてしまう近衛。

すると、先ほどまで俯いていた生徒が頭をギュンッと上にあげた。

その顔は、まさにゾンビを彷彿とさせた。

目は虚ろでどこを見ているか分からず、顔の肉が引き裂かれていてとてもグロかった。


「きゃぁぁぁぁ!!!」


近寄った近衛に襲い掛かる生徒。

腕を振り上げ、近衛に触れる瞬間に俺は持っていた棒で思いっきり生徒の顔面を叩いた。

グチャっとした嫌な感触が手に伝わり思わず顔を歪める。

生徒は血を振りまきながら倒れると、ピクリとも動かなくなった。

顔が完全に潰れていた、これは死んだって事だろう。


「はぁ…はぁ…ぐっ!」

「さ、佐々木?」


『レベルアップ。佐々木一瀬のレベルが1上がった。ステータス閲覧権とスキルを付与します。加えて使い方を脳にインプットします』


突如頭に響く機械的な声。

全てを聞き終えるとずきりと一瞬頭が痛み、謎の情報が流れ込んできた。

これは…まさか…。


「…ステータスオープン」


ブンっと俺の目の前に浮かび上がる文字。

それはこの世界が、もう以前の世界とは違うものだと改めて認識させるものだった。



佐々木一瀬Lv1 0→1UP!

rank・F

job・格闘家

skill・身体強化(小)new!

extraskill・???new!

最後まで読んでいただきありがとうございます。

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