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緑夢童話~三人の木偶娘~  作者: 阿礼 泣素
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青き血汐と緑の沙漠‐②

樅木がここの葉っぱ全てを操ることに固執してしまう結果となったのを誰も咎めることは出来ない。誰だって使えるもの、なおかつ使いやすいものは使うに決まっている。普通ならばそれで良かった。


だが晒菜にはそれが効かなかった。普通ではないイレギュラー的存在の晒菜には、効かなかった。


そのことに気がついたのは、樅木が晒菜に強烈な一撃をお見舞いされた時である。


「うぐッ!」


まずいこのままでは……そう思った樅木は咄嗟に自分のハサミを取り出した。


「さあ、第二ラウンドよッ!?」


だが、その工程に切り替えるのが遅かった、ハサミを使った攻撃に切り替えるタイミングが完全に手遅れだった。樅木は身体能力が向上した晒菜のパンチに対応することが出来なかった。もちろん葉っぱを操って何とかするということも出来るはずもなく樅木は死期の到来を待つことしかできなかった。樅木別葉は晒菜にいともたやすく攻略されてしまった。


「……早く殺しなさいよ! 化け物!」


精いっぱい強がってみせた樅木ではあったが、彼女の目には涙がたまっていた。


「『緑威』の本部はどこだ? そして何故また、この緑の雨が降っている?」


三改木は形勢が逆転したのをみて樅木に質問する。


――だが、樅木はその質問に答えることが出来なかった。


「ぐッ!」


樅木の体から血が噴き出した。晒菜とは違うまっ赤な血潮、その紅葉のような紅い血はたちまち晒菜達に降りかかった。


「……え」


晒菜と三改木は樅木が最期の力を振り絞って自殺を図ったのだと思ったが、実際はそうではなかった。


樅木別葉は殺された。それも、彼女の仲間GSS計画推進グループ、通称「緑威」のメンバーの手によって。


「あーあ、樅木ねーさんなにやってるんだか」


その手に血塗られたカッターナイフを握る少女、晒菜が外の世界で最初に出会った華奢で可憐な少女、GSS計画推進グループ、通称「緑威」所属の比与森実森という少女。


「えへへ。またあったね、しょーまおにーちゃん」


屈託のない笑顔でそう語りかけてきたのは紛れもない比与森実森。一寸木木呂子を死に追いやった少女であった。


「まずい、升麻君いったんここは退くぞ!」


「させない、させない、させない」


 比与森が三改木に三発キックをする。三改木はその場にうずくまってしまった。


「しょーまおにーちゃんはここで死ぬ。ついでに三改木森羅も。なぜなら私が殺すから、私が確実に殺すから」


「させるものかッ!」


三改木が必死に比与森に食らいつく姿勢を見せているが、如何せんダメージを負っている彼女は比与森の足もとに及ばなかった。三改木を比与森が一蹴した。また反撃することも出来ずにその場にうずくまる三改木。


「そんなに死にたいんですか?みぞろぎお姉さん。心配しなくても私が極楽につれってったげます」


「だから……」


比与森がその手の刃で三改木の首筋を切り裂こうとした。迅速に俊敏に、犀利で尖鋭な刃で切り裂こうとした。


その時だった。


「今度は間に会ったぜ。今度は守って見せる! 必ずだ!」


晒菜は勇敢にも比与森に立ち向かっていた。


「しょーまおにーちゃんに何ができるってんですか? どうせまたやられるだけなのに、どうせ私に殺されるだけなのに」


「俺が昨日までの俺だと思ったら大間違いだぜ。今の俺は地球を救うスーパーヒーローなんだ!」


「碧血解放!」


晒菜はその手のボタンを何回も押した。自分の血を全開放しているのではないかと思えるほどに晒菜は血液を放出していた。


「さあ! 準備は出来たぜ!」


おそらく今までで最も強い晒菜であった。当然病院に籠っていたころよりも、そして言葉通り昨日の晒菜よりも数段強い晒菜であった。


「えへへ。いーんじゃないですか、ラストバトルっぽくて。そーゆーのって悪くないですよね」


「余裕なのも今だけだッ!」


晒菜と比与森が衝突を繰り返す。常軌を逸した、めまぐるしいスピードで二人は抗衡する。


「ぐッ!」


晒菜は体の節々が痛みだしていることに気がついた。攻撃は当たっていないはずだったのに、一体どうして……


「リーチの差ってやつですよ。そろそろ終わりですね。しょーまおにーちゃん」


比与森の持っているカッターナイフのせいで晒菜だけが攻撃を受けてしまっていた。晒菜から青い血が滴り落ちる。


「血液を使い過ぎた……」


目の前がかすむ、意識が遠くなっていく。ここで倒れたらだめだと分かっていても、もう体が限界だ。血液が致死量に到達し始めている。もってあと数分だろう。


「まさに、青息吐息ってとこですか、青い血だけに。やっぱりしょーまおにーちゃんのその血は気持ち悪いなあ」


比与森はやはりまだ余裕の笑みをみせながら続けた。


「もってあと数分ってとこなんでしょうけど、まあ、あと数分の間にうちがやられるなんてことはないから。ミラクルが起こってどうにかなったり、勝利の女神がほほ笑んで、神がかった力が付与されるなんてこともない。そんな生ぬるいもんじゃないんだよ。そんなお決まりの展開あるはずがない。うちは嫌い。そうやって予定調和の勧善懲悪ENDになってめでたしめでたしみたいなのは。そんな理想の展開はマンガやアニメの世界だけでしょ? うち知ってるもん。まあ、ここでなにかわけのわからない力が覚醒して、わけのわからない勝ち方をするってのがきっと定石で鉄板で陳腐で月並みなパターンだったんだろうけれど、残念でした。やっぱりしょーまおにーちゃんはうちには勝てないのでした。えへへ」


比与森は言い終わるとすぐに余韻を楽しむ事もなく、動けなくなっている晒菜のもとへと瞬時に近づいて、一寸木を殺した時のように手早く迅速にその手のカッターナイフを晒菜に向けて突き立てた。


――ザクリ。


斬撃とともに辺りに血液がまき散らされる。



次回は8月30日(水)7時更新です☆

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