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緑夢童話~三人の木偶娘~  作者: 阿礼 泣素
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シュバルツバルト、森の中のそのまた奥の森‐②

力がみなぎって……

――こない!?

むしろ力が減退してしまった気がする……

「なにそんな顔してるの? 万策尽きて手も足も出ません、みたいなチョー絶望的な顔してるわよッ!」


先ほどまでの均衡が崩壊する。馬酔木は晒菜をサンドバックのように殴る。タコ殴りってやつだ。まったく我ながらなんて無様なんだろう……


「逆にいえば、升麻にはそれしかありません。私みたいにロケットパンチがあるってわけではないんです。ちょこっとだけ体が強くなるってだけのことです」


二目木の言った言葉を思い出す。そうだ、結局は俺にはこれしかないんだ…だから俺は、俺は……


「『碧血解放』!」


晒菜は再び起き上がる。そして三回プッシュした、その右手のボタンを……力強く。


「これで、これでおわりだああああああ!!」


強化された晒菜の拳でこの戦いに終止符がうたれた。馬酔木はそのまま倒れて動かなくなった。


「はあ……はあ……」


結構な量の血液を失ってしまった。意識が朦朧とする……


そうだ、三改木さんの方は……


「――って!」


バシンと後ろから背中を叩かれた。振り向くとそこには三改木がいた。そしてその手には邊牟木の生首……


「うえっ……」


晒菜はおもわず吐き気を催してしまった。


「仕方ない、こうでもしない限りやつらは蘇るみたいだからな……」


そう言いながら、持っていた刀で馬酔木の頭を突き刺した。


「こっちも油断できないな……」


冷酷なその眼を見ていると晒菜は凍りつきそうだった。敵だといっても晒菜にはここまですることが出来ない。


「とりあえず、良くやった晒菜君。第一試験合格ってとこだな。もしここで敗北してしまうようならば真っ先に私は君を切り刻んでいたところだ」


「――弱い仲間はお荷物でしかないからな」


さらっととんでもないことを言う三改木であったが、これで三改木に自分の力が認めてもらえたのだと思うと嬉しくなった。


「なんだかんだ言いながら、三改木さんの方も苦戦してませんでした?」


最初の方は邊牟木に押されていた気がする。途中からの展開を晒菜は確認していないが、いったいどうやって勝利したんだろう…


「最初に言っただろう、私一人で十分だと。先にやってしまうと晒菜君が安心してしまうだろうと思ってあえて手を抜いていたんだ」


なんて八百長だ、と思いつつも三改木という心強い仲間がいて良かったなと思った。晒菜が出会った少女の中でおそらく三改木がいちばん戦闘向きで、おそらく一番強いんじゃないかと思う。それ故に、晒菜が成長するにはなにかしらの工夫が必要だということだろう。


「これで残る『緑威』のメンバーは比与森実森(ひよもりみもり)樅木別葉(もみのきわくらば)、そして、リーダーの大鋸 婁火也(おがるかや)だろうな……」


三改木はもう次の敵について語っていた。三改木はもう既に気持ちを切り替え、来る次の戦いに備えようとしていた。


……もうすぐ、この戦いに決着が着く。これで長かった戦いが終わろうとしている……


――俺は負けるわけにはいかない……


晒菜がそう意気込んでいるところに、三改木が一言。


「休憩だ! さあ、今からは休憩だ!」


「……??」


――休憩?聞き間違いだろうか。作戦会議だとか特訓だとか、これから必要なのはそういうもののはずだろう。それがなぜ休憩?


「三改木さん。休憩とはあの…休むって意味の……?」


「それ以外に何があるというんだ、晒菜君。あと私のことは森羅と呼んでもらってかまわないぞ。」


「分かりました森羅さん……だけど、こんなときに休憩なんてしている余裕はないんじゃないですか?あと僕のことも升麻でいいですよ」


「こんな時だからこそだよ、升麻君。こんな時だからこそ休むのだ。疲弊しきった体で戦ったところで勝機を逸してしまうというものだ。それに敵の部隊も本拠地を空けてまでは攻め込んではこない。さあ、休むぞ!」


っていきなりそんなこと言われても一体どうすれば良いっていうんだ……


悩んでいる晒菜を全く気にすることなく、三改木はごそごそと奥でなにかしている。


「森羅さん、いったいなにやってるんですか?」


「升麻君に剣を研いでもらおうと思っていてだな……ここにあったはず……」


剣?いったい何のことだろう……


「お、あったあった」


三改木が晒菜の目の前にドシンと置いたもの……それは……




8月27日(日)7時更新です☆

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