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緑夢童話~三人の木偶娘~  作者: 阿礼 泣素
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羞花閉月、顕現する三人目の人造人間‐②

突如、と表現して良いのだろうか。気が付いたらという表現が正しいのだろうか。


――唐突に、


――突然に、


彼女はそこに現れた。

「あらあら、そんなに急いでどうしたの二人とも……」


恐れていた事態が現実となる。馬酔木は晒菜と二目木の前に立ちふさがる。二目木は手負いの状態、このまま戦闘になれば勝敗は明らかだろう。


「さあて、どうしましょうか。残念ながら、生き残っている人間は抹殺って言われてるのよね……どうせ二人とも雄山火口の作った作りものでしょ。あんまりうろちょろされたら困るのよね……まあ、だから、結局のところ、とどのつまり……

――死んで」


冷たい視線、突き刺さるような眼差し。やはりこうなってしまうのか……


なにか……この状況を打開できる方法は……


「升麻! これしか……ない……」


そういって、林檎は俺の太ももをべたべたと触ってきた。そして、地面をけり上げて緑の謎の物質を土煙りのようにまき散らした。


「おい、おまえ、こんな時に何やってんだよ!!」


林檎が手にしていた物、それは……


「おい、お前、そんなものここで使ったら……」


それを見た馬酔木が慌てだす。それもそのはず、二目木が手にしていたのは人類だけが使える武器、


――火だった。


「このライターのスイッチを入れれば……」


「待て! おい! 待てっ!!」


「もう遅い!」


カチッと音がして、一瞬のうちに周りは炎に包まれた。


――粉塵爆発、気体中にある一定の濃度の可燃性の物質が浮遊した状態で、火花などにより引火して爆発を起こす現象である。


「げほっ……げほっ……」


「升麻! こっち!」


さっきまでと立場が逆転していた。晒菜は二目木に引っ張られ炎の渦に巻き込まれながらも迷うことなくどんどん進んで行く。


「まったく、俺たちも爆発に巻き込まれてたらどうするつもりだったんだよ……」


「その時はその時です。そんなこと考えたってしょうがないじゃないですか」


蛮勇を奮い過ぎだろうと思う。この向う見ずな姿勢は真似しようとして出来るものではないな、と晒菜は改めて悟った。


「やっぱりあの人も人じゃないと思います……」


「……人じゃない?」


「そう、私と同じ感じがしました」


まああの埒外というにふさわしい身体能力はそういうことなのだろう。向こう側も林檎のように人間を作れるということなのか……


そうとなれば俺たちに勝ち目はあるのだろうか……


「しょうヷッ――」


二目木が晒菜の名を呼ぶ、


――いや正確には呼ぼうとした。


二目木の体が晒菜の背中に激突する。


「まさ、か……」


「よくもこの私を出し抜いてくれたわね……」


馬酔木が出し抜けに殴りかかってきた。完全に二人は油断していた、機先を制し、虚をつくことで完全に勝利したと思い込んでいた。


「甘い、甘いのよ……その程度で私をやれると思っちゃってるその考えがッ!!」


馬酔木は晒菜の頬にも思い切りストレートを決めた。晒菜はもちろん戦闘経験など皆無なわけで、晒菜の体は放物線を描くようにして見事に吹っ飛んだ。


ノックアウトされる晒菜。この後は選手交代で二目木の番だ。先ほどぶっ飛ばされただけで彼女はまだ戦える。


「ふふふ、キャットファイトってやつですね……」


「余裕をかましてられるのも今のうちよ!」


二目木と馬酔木の取っ組み合いが開始される。力では馬酔木のほうが勝っていた。


「今ならあの子と一緒に仲良くあの世に連れてってあげるって言うのに……」


「やれるものならやってみてください……升麻は絶対に殺させない……」


「あらあら、お熱い関係なのかしらね。そんなあなたに私からのプレゼントよ」


思いっきりパンチ。馬酔木の拳が二目木の顔にめり込むようにヒットした。


「顔は女の命だって言うのに……」


「いいじゃない、その方がかわいいわよ」


「……くっ、許さない……」


右手を前に突き出す二目木。


「くらえっ!」


馬酔木の顔面に二目木の右腕というか右手の拳が勢いよく激突する。


「ぐッ!!」


馬酔木はまさか腕が発射されるとは思っていなかったため、一瞬驚いて固まったもののたいしたダメージはなかったので直ぐに我に返った。


「まさかそんな隠し玉があったなんてね。でも残念だったわね、そんなおもちゃみたいな攻撃、まったくきかないわよ……」


「それでも……あなたが一瞬隙を作ってくれるだけで、良かったんです……」


そうして、二目木は馬酔木のもとに飛び込んだ。二人は思いっきりもつれて地面に倒れこんだ。


「いったいじゃないの!!」


「升麻、今まで林檎は楽しかったですよ。短い間でしたけど、一緒に過ごせて本当に楽しかった……欲を言えば、というかほんとはまだまだ一緒にいたかった、だけどどうやら私はもうここまでみたいです……

まったくなにが、おっぱいミサイルは親密になった殿方の前でしか見せないなんですかね……本当はただの自爆装置なのに……


最後に、どうか、私の分まで生きてくださいね……それでは……」


「――さよなら」


二目木はシステムを起動する。二目木は馬酔木をがっちりつかんで離さない。


「はなしなさいよッ!!」


「いやですよ、あなたは私と一緒に焼却処分されるんですから」


二目木の目には大粒の涙があった。


「ああ、まだ死にたくなかったなあ……」


爆発音とともに、二目木は塵となった。


その場にはただ晒菜一人が残されていた……




次回は8月17日(木)7時更新です☆

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