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異世界冒険譚  作者: 夜月
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8.旧時代の遺物

 瑠雨は、まだ本調子ではないらしくレスティアが抱っこして行くことにした。

 山道を吹き抜ける風は少し肌寒いものの、レスティアが着ている服の惨状を見たリリーナが服を貸してくれたので、防寒もばっちりだ。

 歩いている間、ふと魔法陣のことに思い当たったレスティアは、聞いてみることにする。

「あの、変な魔法陣で迷いの森まで飛ばされて。あの魔法陣が何か知りませんか?」

「魔法陣?」

 レスティアが何故、魔法陣で飛ばされることになったのか、きっかけの研修先決めなども含め話しながら、詳細に魔法陣のことを教えると、リリーナは、少し困った顔をする。

 どうやら、少し困る質問をしてしまったらしい。

「うーん、それは旧時代(きゅうじだい)の遺物(いぶつ)かもしれないわね」

(旧時代の遺物?どこかで聞いたことあるような……)

 そう思ったレスティアが記憶を遡っていると、昔、屋敷でメイド達や使用人達が何回かそれについての噂話をしていたのを思い出す。

 とは言っても、屋敷内を歩いている途中で小耳に挟んだだけだし、さして興味もなかったので詳しく聞くようなこともしていない。

 レスティアは基本的に、自分の好きなもの以外に興味がないのだ。

 そのため、リリーナに詳細について聞いてみる。

リリーナによると、今から約千年前、確かに文明が存在した痕跡はあるのにそれ以前の資料が一切存在しておらず、その空白の時代を旧時代というらしく、今の技術進歩では説明できない技術を持った物は旧時代の物と言われており、その総称を旧時代の遺物というらしい。

 旧時代について分かってることといえば、今の技術を遥かに隆雅した文明が、大昔、発達していたことぐらいだ。

 一瞬で、歩いて四ヶ月かかる場所に飛ばす魔法など、現在の技術進歩ではありえないらしく、旧時代の遺物の可能性が高い。

 そして、旧時代の遺物の最も厄介は点は、いつどこに現れるのか、分からないことらしく、ほとんどは使いものにならなくなっており、害を被ることはめったにないが、ごく稀に、レスティアのように、使える旧時代の遺物に巻き込まれることもあるらしい。

 その話を聞いていたレスティアが、ほへ~と驚いた顔をしていると、リリーナが話しかけてくる。

「迷いの森の出口についたわ」

 どうやら、抜け方さえ知っていればすぐに出られる小さな森で、ここから、最も近い村までは一週間ほどかかるらしい。

 尚、迷いの森は森中に無効化の魔法である闇属性が充満しているらしく、そのため魔法が使えなかったのだと教えてくれた。

 まあ、こういった闇属性が充満しているような場所は世界規模でも見ても、かなり珍しいらしく、王国にはここぐらいしかないらしい。

「それにしてもレスティアちゃんって、武器とか持ってないのかしら?」

 確かに家に戻るまでにモンスターに遭遇したらまずい。魔法は練習しているが、それではだめなのだろうか。

「武器……。使ったことなくて……」

「それなら、弓とかどうかしら?これから向かう人里で買ったらいいし、それに弓なら私が教えられるわ」

 レスティアのその言葉にリリーナはそんな提案をしてくれる。

(弓……確かに習得した方が安全かもしれないけど……でも、習得してもこれから先、使う機会がない。だって私は、針子見習いか布染め師になるんだから。きっとそれが正解なはずで……)

 リリーナのその提案に乗ってしまったら、自分の中のなにかが揺らいでしまう気がして……

「ありがたい提案なんですけど、この辺、モンスターは滅多に出ないって言ってましたし、魔法でなんとかします。家に戻るまでですし……」

「そう?まあ、レスティアちゃんがそう言うなら……」

 そんな風に会話していると、リリーナが道から崖に片足を踏み外しそうになっている様子に気付く。

「危ない!」

 レスティアが、手を伸ばすよりも早く、そう言ったリヒトがリリーナの腕を掴んだので、落ちずにすんだようだった。

(良かった……)

「だから、いつも言ってんじゃん。崖側は僕が歩くって」

「ちょっと、踏み外しただけだから大丈夫よ」

「はぁ……」

 今度は、リヒトが呆れたようにため息をついていた。(なんか、この2人似てるなぁ)

 二人と出逢って二日目の夜、今日の野宿の場所で、瑠雨と一緒に焚き火の方でまったりしていると、リリーナとリヒトの声が聞こえてくる。

「ちょっと、リリーナ!料理関係は僕がするって」 「ええ……でも、木の実切るぐらいなら私でも……」

 リリーナはリヒトに、諌めるような視線を向けられ、素直に手を引いたようだった。

(また、リヒトさんの過保護が炸裂してる……)

「むう……分かったわよ」

 そう思っていると、リリーナがこっちへ向かってきて、レスティアの隣に座る。

 いきなり、剣を向けてきたりしたこととか、崖側を歩くという発言や、普段の二人のお互いへの接し方を見て、レスティアには思ったことがあった。

「仲良いんですね」

 正直言って、いるはずの所に家族がいないからと偶然そこに居合わせ人に鞘付きとはいえ、剣を向けるのはやり過ぎだとは思うが、そこまで家族に大切に思われているというのは、レスティアからすると、少し羨ましい。

「レスティアちゃんの所は、そうじゃないの?」

「……そう、ですね。仲悪いかと聞かれるとそう言うわけでもないのですが、仲良いわけでもなくて……」

(無関心に近い……)

 その後の言葉は口から出なかった。

「うーん、そうなのね。でも、レスティアちゃん、変な魔法陣のこと、話してくれた時に言ってたわよね。ついこないだ、誕生日を迎えたばかりで、研修先決めで頭を悩ませて気晴らしに庭に出たって」

「はい」

 リリーナの言葉を不思議に思いながらも返事する。

「もし、本当に娘に興味がないなら、誕生日なんて覚えてないんじゃないかしら」

(えっ……)

 そのリリーナの言葉には妙に説得力があって、納得せざるをえない力があった。

(確かに、お父様は分からないけど、お兄様とは、昔はよく一緒に遊んでた。ちょうど五年ぐらい前から、お兄様が忙しくなっていて、それに比例するように、段々言葉も交わさなくなったから、あの時は仕方なく遊んでくれてたんだって、そう思ってたんだけど、もしかしたら……)

『—彩乃』

(……!)

でも……

「変に気を使わせてしまってすいません。別に今さらなので、全然気にしてないし、大丈夫です」

 だって、変に期待してしまったら、そうならなかった時に傷ついて、相手は悪くないのに、勝手にショックを受けたような裏切られたよう気分になってしまう。

 何よりもそんな自分が嫌で……それなら、最初から希望的観測の期待なんてしない方が良い。

 そう思ったレスティアの脳裏に浮かんでいのは、もはや両親とも思いたくない彩乃時代の生みの親だった。

 レスティアがそう言うと、リリーナは、そうなのね、とだけ呟いてそれ以上のことを追求してくることはなかった。

登場人物と固有名詞が増えてきたので、活動報告の方にまとめました。これからもキャラや固有名詞が増えるたびに活動報告に追加していく予定です。

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