7.リリーナの提案
お互いの自己紹介が終わったという所で、朝ごはんのスープと干し肉を食べることになる。
リヒトが作ったというその料理は、塩味のスープに野山で採取した木の実が入った具だくさんスープだった。
ムルミの実以外を食べるのひさしぶりなのでスープの塩味が身にしみる。
干し肉の方のお味はというというと……
(干し肉……)
前世で触れていたファンタジー作品などでは度々出ていたし、揃いもそろってあまり美味しくないと書かれていたが実際はどうなのだろうか?
少しわくわくしながら、一口かじってみる。
味は干した肉に甘辛い塩味をつけた感じでどちらかというと微妙だ。お酒を飲んだ事はないがつまみとかにはいいかもしれない。
どうやら、ファンタジー作品などに書かれていたことは事実だったらしい。
そんなことを思いながら、干し肉をかじる片手間に塩味のスープと具材として入っている木の実の旨味を味わっていると、リリーナが話しかけてくる。
リヒトと呼ばれていた少年は、剣を向けてしまった以上、気まずいのか端っこで、黙々とスープを食べて、話しかけてこない。
「そういえば、なんて呼べばいいかしら?」
そうリリーナが聞いてくる。
おそらく、名前の呼び方の事だろう。
「好きに呼んでください」
「わかったわ。じゃあ、レスティアちゃんって呼ばせてもらうわね」
あちらから話しかけてきたなら、御の字とずっと聞きたかった事を聞いて見ることにする。
「あのちょっと聞きたいことがあるんですけど今日って十月二十九日から何日たってますか?森で迷ってた時、だんだん時間感覚が狂ってきて何日迷っていたのか分からなくなって……」
「今日は十一月五日よ。」
レスティアのその言葉にリリーナはそう返答する。
どうやらレスティアは、森で一週間も迷っていたらしい。
そんな雑談をしていると……
(あれ……?昨日の夜は気づかなかったけど……二人の耳なんかとんがってる……?)
あれは、前世で読んでたファンタジー小説に出てきたエルフというものではなかろうかとレスティアは思う。
「もしかして、二人共エルフですか?」
そうレスティアが聞くと二人は、顔を見合わせた後、驚いたように目をパチクリさせてこっちを見た。
「エルフを知ってるなんて珍しい……」
よほど驚いたのか、一向に話しかけてこようとしなかったリヒトがそう呟いていた。
(あっ……やばい……やらかしたかも……)
「レスティアちゃんはどこでエルフのことを知ったの?人間族でも社会に出て働いてる大人なら聞いたことぐらいはあるかもしれないけど、レスティアちゃんみたいな未成年がエルフのことを認知してるのは珍しいというか……」
リリーナの言ってることはもっともだ。
レスティアもこの世界に生まれてから、エルフだとか獣人だとかを周りの人達が話しているのを見たことがないし、聞いたこともない。
なんなら、人間以外の種族の姿を街中で見かけたこともないし、それどころか、異国の衣装を来た人間さえも見たことがない。
レスティアがエルフを知ってるのは単純に前世で読んでたファンタジー小説によく出てきていたからだ。
でも、そんなことはさすがに言えないと判断したレスティアは、ごまかすことにした。
「私の家って、ちょっと大きい書斎があって、そこにあった古い本に書いてあったんです」
そうレスティアが言うと少し困惑しながらも二人は一応、納得した顔をしてくれた。
「私も少し聞きたいことがあったんだけどいいかしら?」
(聞きたいこと……?)
「レスティアちゃんが倒れてた場所は迷いの森って言うんだけど、地元の人でも確実に森から出られる玄人みたいな人しか近寄らない場所なのよ。迷いの森自体、未だに謎も多くて、だから、なんでそこにいたのかな〜っと思って。服装もこの辺で見かけない感じだし」
(迷いの森……いかにも迷いそう……。だから、いくら歩いても出られなかったんだ。そんな場所にワープさせるなんてあの魔法陣さん少し鬼畜では……?)
こう言ってるのを見る感じ、リリーナ達は、今いる場所が分かるということだろう。
ようやく現在地がわかる人に出会えた。
「現在地わからなくて、ルナリアっていう所から来たんですけど」
レスティアは住んでる街の名前を言うと、そう質問する。
「ルナリア?ここから、歩いて三ヶ月と三週間ぐらいかかる場所よ……」
(えっ!?三ヶ月と三週間!?)
どうやら、大分遠い場所に飛ばされてしまったらしい。レスティアがうーんとむずかしい顔をしていたからか、リリーナが地図を持って来て教えてくれた。
「私達が今いる所は、王国の最東端でクリスっていう地方、レスティアちゃんが言ったルナリアっていうのは王国の真ん中にある王都である首都の隣町なのよ」
どうやら、王国内ではあったようだ。
「この辺モンスターが多いし、私達、ルナリアに行く予定だから、ついでに送っていこうと思ってるのだけど...」
「え……ちょっ……僕、その話、聞いてないんだけど……」
そのリリーナの言葉に焦ったようにそう言ったのは、さっきまで、すみっこで一人ぽつんと座って、一向にこちらに混ざろうとしてこなかったリヒトだった。
どうやらリリーナはリヒトに了承を取らずにその発言したようで……
「確かにそうだけど……こんな、いかにも初心者ですみたいな子を迷いの森に置いていくわけにもいかないし……出口までは一緒にいったとしても、ここから約三ヶ月とに三週間かかるじゃない?それに、もとから私達もルナリアに行く予定だったし」
「それは……まあ……」
そのリリーナの言葉に、渋々頷いたリヒトは「うーん……でもなぁ……リリーナがそうしたいなら……」などと呟きながら、百面相をして、たっぷり悩んだ末「……好きにしたら」と、素っ気なく賛成の意を示した。
そうして改ためてリリーナ達は、三日ほど歩くとつく迷いの森の最寄りの村に泊まりはしないけど寄ることと、ルナリアまで一緒に行かないかと誘われる。
(うーん、剣向けてきたりしたし、ちょっと怖いけど……)
今のリヒトの様子を見るに、リリーナを害することがなければ大丈夫そうなものの……
(ついでとはいえ、初対面のどこの誰かも分からない人に一緒に行かないかと誘ってくれたぐらいだから、きっと親切な人なんだと思う。だけど、私はあんまり人と関わりたくない)
「私達の旅は元々目的が無いに等しいものだし、私達の目的地もルナリアだから、レスティアちゃんを家まで送るのは寄り道するぐらいの感覚なの」
考えこんでいるレスティアに何を思ったのかそう言ったリリーナは優しく笑った。
まあ確かにレスティア自身、一人でルナリアまで行けるのかは不安だし、その自信もない。なにせ、数日、森で遭難しただけでこの様なのだ。
そう思ったレスティアは、リリーナの言葉に半ば押されてご厚意に甘えることにした。
「……お願いしてもいいですか?」
「ええ、もちろん」
なるべく早く森を抜けた方がいいらしく、ご飯を食べ終わると慌ただしく出発の準備をした。
まだ迷いの森の中らしく、あの、魔法陣については別の時に聞くことにする。
尚、リリーナに、なるべく節約したいのでここから、二つ先の村と三ヶ月ほどでつくコール領土という大きな街以外は人里に寄ることはあるかもしれないけど、泊まるつもりはなく、大丈夫か聞かれたため大丈夫ですと答えた。




