6.双子との出会い
「で、君、誰?リリーナは?」(この状況は、いったい……?)
一体全体、レスティアは何故、見ず知らずの少年に剣を向けられているのだろうか。
(えっと……昨日は確か……)
▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲
話は昨日の夜に遡る。
「はっ!」
レスティアが目を開けると、目の前には見慣れない景色が広がっていて、勢いよく身体を起こす。
「あれ……?ここは……?」
あたりは薄暗く、天井から水のようなものが頬に落ちてくる。
(洞窟みたいな場所……?)
「あっ、起きたのね。大丈夫?」
レスティアが周りの状況を判断しようとしているど、どこからか声が聞こえてくる。
声がしたほうに視線を向けると、腰まであるゆるふわカールした栗色の髪に桃色の瞳の少女が心配そうに立っていた。前髪の右側を編み込みにしていたり、タレ目だったりと、目の前の少女からは、おっとりとした印象をうける。身長は155センチぐらいといった所で年はレスティアより少し上だろうか。
「良かった、熱は下がってきたみたいね」
目の前の少女は、レスティアの額に手を当てながら安心したようにそう言った。
「あれ……私……はっ!瑠雨は瑠雨は無事ですか!?モンスターなんですけど、私と一緒に落ちて……」
レスティアがそう言うと、少女は不思議そうな顔をした。
「……?。私が見つけた時はあなたしかいなかったけど……」
(……!。森の出口まではって思ってたのに……)
「……探さなきゃ」
そう思い、立ち上がって洞窟の出口に向かおうとするも、立ち上がると同時にふらついてしまって……
「っ……!」
バランスが崩れ、頭から転んでしまいそうになるも、少女が腕を持って支えてくれた。
「ちょっと、落ち着いて」
「……!。すいません、助けてもらったのにお礼も言わずに」
「その、瑠雨って子はそれぐらい大事な子なのね。でも、最初より下がったとはいえまだ熱もあるし、もうちょっと良くなってからの方が良いと思うわ」
瑠雨の事は心配なものの、諭すようにそう言われてしまい、こくんと頷く。
(もしかしたら、私がのびてる横で、綺麗に着地して、好きな場所に行っただけかもしれないし……)
まだ熱は下がってないし、もう休んだ方が良いと言われたので、休む事にする。
「あの、本当にありがとうございました。看病までしてくれて……」
貸してもらった布団に潜り込んだレスティアがそう言うと、少女はふわっと笑った。
「そんなにかしこまらなくて良いわよ。崖下に人が倒れていたから助けたまでだもの」
その後、少女はいつも朝早くに食料の調達をしているため、レスティアが起きたらいないかもしれないけど、すぐ戻ってくるから、心配せずにここで待っててほしいとのことを伝えられた。
▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲
「……朝?」
もう熱は完全に下がったようだし、一人じゃないという安心感からか、久しぶりにぐっすり眠ることができた。
(私が伸びてる横で綺麗に着地してどこか好きな場所にいった可能性もあるけど、念の為瑠雨を探しに行かなきゃな……)
まあ、どちらにしろ、心配させるわけには行かないから、あの少女が戻ってきてからだ。
(ちょっと寒いなぁ……今の季節的に当たり前だけど……)
そう思い、家から羽織ってきていたケープのフードを頭に被せる。
そうして、あの少女が戻ってきたらすぐ分かるようにと、洞窟の入り口付近でしばらく待っていると、洞窟の入り口に人の気配がした。
「……?。あの子が戻ってきたのかな?」
そう思い、そちらに目を向けると、若葉色の長い髪を後ろで一つにまとめた、見慣れない少年が現れる。身長は165センチぐらいといった所で、ツリ目の瞳からは意志の強そうな紫色が覗いていた。
(誰……!?)
ふと、相手の視線がレスティアの方へ向く。
「えーと……」
相手の方もレスティアに気づいたようで、こちらに向かってつかつかと歩いてくる。そんな少年にレスティアが声をかけようとした、次の瞬間だった……!チャキン!
「へっ……!?」
「で、君、誰?リリーナは?」
突如、鞘付きの剣を突きつけられたレスティアは、反射で手をあげて降参のポーズをしながら混乱していた。
(この状況は、いったい……?めちゃくちゃ睨んでくるし……!私、何もしてないんですけど……!えっ……もしかして死ぬ……?理由もわからないのに……!?)
レスティアが、一人混乱状態になっていると目の前の少年の後ろに見覚えのある姿が見える。
「ちょっと、リヒト!その子は私のお客さん!!ほら、謝って!」
少女にそう言われた少年は、突きつけた剣は取っ払ってくれたものの、ふいとレスティアから視線を逸らすと、そのまま黙り込んでしまう。
「リヒト!」
「いきなり剣を突きつけたのは悪かったと思ってるけど、顔も見えないぐらい深くフードを被って座り込んでたら、誰だって怪しむでしょ」
少女に諌められた少年は、謝罪なのかなんなのか分からないその言葉を言うと、それきり黙り込んでしまった。そんな少年の様子にテコでも動かないことを悟った少女はレスティアに向き合うと口を開く。
「はぁ……本当にごめんなさい。この子、私に過保護な所があって……次からは、ないように言い聞かせるわ」
そう言って申し訳なさそうに少女が謝ってくる。
(過保護……?鞘付きだったとはいえ、この人首元に、剣、突きつけて来たんですけど……!?)
少女によると、どうやら、いるはずの所に少女の姿がなく、知らない人がいたため警戒して、思わず体が動いてしまい、剣を向けてきたんじゃないかという事だ。
(まあ、斬り掛かかって来るようなことはなかったし、良いけど……。普通にヒビった)
「というかリヒト、合流するのは明日じゃなかったかしら」
「早めに終わったから、様子見に来た」
「はぁ……」
少女は呆れたようにため息をつく。ずっと申し訳なさそうにされるのも、居心地が悪いと思ったレスティアは、びっくりしたけど、別に大丈夫だと伝える。
「自己紹介が遅れてごめんなさい。私はリリーナ・エンタント、この子は双子の弟であるリヒト、どっちも冒険者で十五歳」
どうやら、目の前の少女と少年は双子で冒険者のようだ。
(冒険者……)
レスティアはその言葉に思う所があり、頭の中で反芻したものの、自分が自己紹介してない事に気付き、慌てて口を開く。
「私は、レスティア・オーバンスっていいます。十三歳です」
それぞれ自己紹介をしていると……
「ムウ……」
ふいに聞き慣れた鳴き声が聞こえてくる。
(この声って……)
そう思ったレスティアがそちらに目を向けると、そこには、葉っぱのようなものを加えた瑠雨がちょこんと座っていた。
「……瑠雨?」
「……!。これ、薬草よ」
そんな瑠雨を見てそう言ったリリーナによると、瑠雨が咥えている葉っぱは、熱に効く薬草らしく、どうやら瑠雨はそれを見つけるために森中を駆け周っていたようだった。
(……そっか、私のために……)
「ありがとう……!」
そう言うと、瑠雨は嬉しそうに鳴いてくれた。
(……!。あれ……なんか視線……)
そんな会話をしていると森の奥の方から視線のようなものを感じて……レスティアがそちらに目を向けると、人影のようなものが走り去っていくのが見えた。
(人影……?この森に私達以外の人間が……?)
その人影は、一瞬見えた姿形からしてどう見ても人間のような感じだったものの、レスティアはこの森で迷っている間、リリーナ達に出会うまで、人に遭遇した事などない。
そのため、もしかした人間っぽいモンスターなのかもと結論づけるのだった。




