5.森の中のモンスター
「ムウ……」
(また、モンスター……。もう走れないのに……。私、ここで食べられちゃうのかな……?)
そう思いながら、目を瞑っていると、ふと、鳴き声の違和感に気付く。
(あれ?でも、この鳴き声どこか辛そうっていうか、弱ってる……?)
耳を澄ませてみるとすぐそこだったため、草むらの影から鳴き声のした方をのぞいてみた。
そこには、角があったり、片方とはいえコウモリのような羽を持っていたり、かと思えばリスのような耳にウサギのような尻尾だったりと、様々な動物のいいとこ取りをしたようなキメラのようなモンスターがいた。
橙色の宝石を紐で首から下げたそのモンスターは、ひどい怪我をしており、息絶え絶えよこたわっていた。
周りに親らしきモンスターはいなくて……
(別に無視してもいいけど、見つけちゃった以上見ないふりするのは……)
そう思い、近づいてみる。本当に今にも死んでしまいそうだった。
(ひどい怪我だな。何かあった時のために採取した薬草を使ったら少し良くなるかな?)
その夜は、そのモンスターの看病をした。彩乃時代、本で何度か読んだことがあるため、簡単な手当てだったらできるのだ。
(良くなりますように……)
そう思ったレスティアはその日、そのモンスターをなでながら眠った。
「朝……。おはよう」
レスティアはまだ眠い体を起こして、あのモンスターに声をかけた。そうすると、そのモンスターは立ち上がって少し嬉しそうに尻尾を振った。
「良かった。昨日より元気になったみたい。」
(臨時的でも、名前つけないと呼びにくいな……。名前……名前……)
そう思いながら、目の前のモンスターのことを観察してみる。目の前のキメラのようなモンスターは、全体的に中華っぽい見た目で、瑠璃色の体に雫のような柄があることに気づく。
(……瑠雨とかどうかな?よし!これに決めた)
「今日から、あなたのこと、瑠雨ってよんでもいい?」
そう聞くとモンスターは「ムウ!」と嬉しそうに返事をする。その途端、瑠雨の額が微かに光った気がした。「へ?何!?」
驚いたレスティアが、しばらくの間、注意深く目の前のモンスターを見ていたものの、何も起きなかったから気のせいだったのだろう。
(そういえば、瑠雨ってなに食べるんだろう。ムルミで良いのかな?)
森を歩きながらレスティアにお利口さんについてくる瑠雨のほうを見ながらそんな風に思っていると、あることに思い当たる。
(状況に流されるまま保護しちゃったけど……薬草を塗って朝起きた時点で歩ける位になってたし、あのまま森に解放した方が良かったかも……私に巻き込んでしまった。満足に自分の面倒もみれないのに)
だが、拾ってしまった以上、最後まで面倒を見るのが道理だ。
(ひとまず、森の出口までは……うんきっとそれが正解なはず……)
そう思い、森の出口まで言った後、どうするかは瑠雨に委ねることにした。
その後も数日間歩き続けて、モンスターにも何回も追われて心が折れそうになりながらも、せっかく、彩乃時代あれだけ欲しかった健康な体に生まれたんだから、ここで死ぬわけには行かないと思ったら頑張れた。
けど、そんな効果も長くは続かなかった。
「はぁ……はぁ……」
(荷物、最初の頃は全然軽いと思ってたのに、今は鉛みたいに重い……)
「あ……」
べしゃっ。
「……っ……いった……」
そう、泥に足を取られて転んでしまったのだ。
「……う……く……モニカに会いたい……」
思わず、弱音を吐きそうになっていると、瑠雨がペロペロと頬を舐めてくれる。
「……!」
(そうだよね。私はここで死ぬわけには行かないんだ)
ガサッ……
そう思っていると、後方から嫌なら音がして……
「ひゃっ!なっ。何!?」
嫌な予感がしながら音のしたほうを見るとモンスターがあらわれ、その瞳はレスティアと瑠雨を獲物とさだめていた。
「ひっ……!」
(動かなきゃ……なのに、体が動かない……!)
そんなことをしてる間にモンスターの顔がレスティア達の目の前に来てガバっと大きな口を開けた。
(まずい……動けっ...私の体……!)
危機一髪で体をそらしてなんとかモンスターの口から逃れたレスティアは、その後、すぐに瑠雨を抱えて、体制を整えて全力疾走で必死に逃げた。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
(動け……。走れ……。私の足……。思ったよりモンスターの足が早い。このまま追いかけっこしてもらちがあかない……)
「……っ!あそこなら!」
モンスターから死角になる位置で曲がると、モンスターの視線が逸れる。
そうして、そこに隠れて息を潜めると、レスティアの予想通り通り過ぎて行ってくれた。
「はぁ……。はぁ……。よっ……よかったぁ……」
モンスターから必死に逃げたため、温存していた体力も使ってしまった。
くらっ……
(あれ……?今、一瞬目の前がくらんだような……?)
けれど、その後は特になんともなかったので、気のせいだったのだろうと結論づける。
「瑠雨、休憩しよう」
そうして、瑠雨と一緒にご飯にムルミの実を食べて、出発する。
(それにしても、ここにいきなり飛ばされてきてから、かなり歩いてると思うんだけど、まだ森の出口につかないんだ……)
前へ進む力を失わせてしまいそうなネガティブ感情を追い払うため、ふるふると頭を振ってそんな考えを吹き飛ばすも、やっぱり心細さや怖さはなくならなくて……
「はぁ……はぁ……足が……」
その後もひたすら歩き続けて、足元がおぼつかなくなってきていた。
頼りなさげにお腹の虫が鳴ったことで、お腹も空いていることに気づく。
「さすがにムルミだけでは厳しくなってきたか……」
毎食違うメニューで、あったかいご飯がでてきて、夜はふかふかなおふとんで眠れて、それがどれだけありがたいことなのかここ数日間でひしひしと身にしみていた。「はぁ……家に帰りたいなぁ……」
(それに、この森にいると時間感覚がおかしくなる……)
この森特有なのか、どこまで歩いても同じ景色しかないから、脳がそう錯覚してしまうのか。どちらにせよ、あまりいい気はしない。そのせいでこの森で遭難して何日目か分からなくなってしまった。
(モニカ達にあいたい……)
そんな風にぼんやり考えながら歩いていた時だった。
ガラッ
足元で嫌な音がして……見たくないなぁ〜と思いながらも、レスティアが足の方に目を向けると足元の崖が崩れていた。
体勢を整えて崩れたがけから離れようとするも、足がもつれて、間に合わず。
「あっ。やばっ!?」
そのまま、真っ逆さまに落ちていってしまって……
バシャンという水面に落ちるような感覚と共に、意識も遠くなり目の前が真っ暗になった。
△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△
「……!。あれって……」
影上を歩いていたその人物は遠目に見えたものが気になり、崖下に目を向ける。するとそこには人が倒れていたのだ……!
「あれって、人!?まだ、生きてるかも。助けにいかなきゃ」
ここまでお付き合いいただきありがとうございました。
次の更新は一週間後の17時の予定です。




