4.謎の魔法陣と危険だらけの森
「う~ん」
(背中が冷たい……)
「はっ!?」
背中に冷たさを感じたレスティアは、ガバっ!と体を起こす。
「あれ?ここどこ……?」
(たしか、変な魔法陣みたいなのに吸い込まれて……。その後の記憶がない。ってことは、魔法陣に吸い込まれた先ってこと?)
レスティアは、そう思って周りを見渡してみるも、見覚えのない景色だった。
(街近くの森の奥深くとか?ううん。お父様についていって何度か奥深くまで入っていたことがあるけど、こんな景色はなかった。周りの木も街近くの森の木にたくさんある、ヤフの木じゃないし。かなり、遠くまで飛ばされた……?それはあんまり考えたくないなぁ……)
そんなことを考えていると、お腹がひどく空いていることに気づく。
「お腹すいたなぁ……」
お菓子とかないかなと思ったレスティアがポシェットの中を見てみるも……
中に入っていたのは、お気に入りの一巻完結の小説と魔力をインクとして使う魔法ペンつきのお気にいりのノート、植物の図鑑と水筒。
レスティアがちっちゃい頃に屋敷を訪れた冒険者がくれた王国の地図。
それから、お菓子が少しとお小遣いが入ってるだけだった。
「植物の本があるのは幸いだな……食べれる植物とかのってたはずだし」
(ここに食べれる植物があるかはわからないけれど……)
そんなことを思いながら周りを見渡すも、そこには風に揺れる木々が揺れてるだけで、あたりは夜の静寂に包まれていた。
「今、何時ぐらいなんだろう……」
今日はもう眠いし、夜行動するのは怖い。
そう思ったレスティアは身を隠せそうな場所を必死に探して……そうして見つけた死角になっている木の幹のそばに体を落ち着けて眠ろうと目を瞑る。
(今日、寝たら夢でしたってなってないかな……?)
「寒いなぁ……」
冬の足跡を感じる秋半ばの風は少し肌寒く不安をさらにつのらせた。
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(まぶしい……)
「……朝か」
朝の光で目を覚ましたレスティアがあたりを見ても、昨日と変わらず知らない景色が広がっているだけで、その景色たちがこれは現実だと教えていた。
「まあ、そんな都合よく行くわけないよね……」
けれど、ネガティブになった所で何も解決はしなくて……
とりあえず、ここがどこかだけでも知りたいと思ったレスティアは王国の地図を広げた。
しばらく、地図とにらめっこしていたものの、現在地は、わからなかった。
(まあ、ここが王国外だったらこの地図があっても意味ないんだけど……)
そんなことを思ってしまって、そんな考え振り払うようにレスティアは、頭を降る。
(こういう展開、物語とかではよく見るけど、実際、自分がなってみると、心細いし怖い……)
「はぁ……。とりあえず食べれる木の実探そう」
お腹を満たすためお菓子を食べながら、植物の図鑑を手にその辺を歩いていく。
「うーん。木の特徴も一致してるし、これがムルミかな?食べれるのだ」
木ノ実の茎をつかんでプチッと切って、口に運んだ。「すっぱ」
レモンよりもさらに酸っぱい酸味が来たあと、少し甘い後味がした。
「この先も見つかるかわからないし、ストックしとこうかな……」
この、ポシェットこう見えてかなり入るし、多少重くなっても、リュック式に背負うこともできる。
図鑑を見たところ、このあたりの食べれる植物はこれだけのようで……
「とりあえず、この森抜けないと人里にもいけなさそう……」
それに分かったことがある。この森では、魔法は使えない。
使おうとすると何故かは分からないが弾かれてしまうのだ。
つまり、危険が迫っても逃げるしかない。
(はぁ……とんでもない所に来ちゃったな……)
その後は、ひたすら歩いてムルミを見かけたら採取して、お腹が空いたら食べてを繰り返して、あっという間に夜になった。
(流石に光がないと怖い……)
あいも変わらず、風に揺れる木々と真っ暗闇にレスティアはそんなことを思う。
だが、レスティアは火を起こしたことがない。
彩乃時代、触れていたアニメやマンガ、小説の影響で火の起こし方は知ってるものの、いきなり知らない場所に飛ばされて慣れないことばかりの今のレスティアに、知識だけを持っていて、成功するかも分からないことをやるだけの余裕はなかった。
「こんな時、炎の魔法が使えたらいいのに……」
だが、第一、この場所では魔法は使えないし、ないものねだりをしても仕方ないことも分かっていて……明日も早く出発したいのでさっさと寝ることにする。
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ー同時刻・オーバンス邸ー
レスティアが行方不明になって二日である。
「レスティア様どこへ行ってしまったのでしょう……仮に誘拐とかだった場合、助けにいかなければ……!」
レスティア付きのメイドのモニカはそう言って、今にも屋敷から飛び出して捜しに行ってしまいそうだと報告をもらっている。
いなくなってすぐ街の領主様に捜査願いをしたが、ここから二日ほどで歩いていける距離にはいなかったのだ。
レスティアの父、ガンヒルト・オーバンスは探索魔法とにらめっこしながら、頭を悩ませていた。
「なんでいきなり……こうなると誘拐とか失踪も視野に入れた方がよさそうだ」
(無事だといいんだが……)
モニカや一部のレスティアを慕っていた部下達が今にも飛び出してしまいそうらしく、早めに見つけたいところなのだ。
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「朝……」
鳥のさえずりに目を覚ましたレスティアは、しっかり寝ることはできなかったものの、体を起こし身支度をした。
頭上の鳥たちは、レスティアの鬱々とした心情とは打って変わって、気持ちよさそうに空を飛びながら爽やかなさえずりを響かせていて、それが一層気持ちを落ち込ませた。
そうして、今日もひたすら歩く。
「はぁ……。足痛い……」
前世は、ほとんど動けなかったし、レスティアになってからも家に引きこもって本を読んでばかりで、お貴族様程ではなくとも箱入りお嬢様で毎日ふかふかのベッドで寝ていたレスティアには、どこまでも続く獣道と硬い地面での睡眠はいささかきつかった。
その後も同じように夜になったら寝て、朝になったら起きてひたすら歩き続けてお腹が空いたらムルミを食べてまた、歩いて。を繰り返した。
そうして、この変な森で遭難して四日目。
「はぁ……はぁ……。足が……」
寝ても疲れは取れないし、このままだといずれ限界がきてしまう。
(もうちょっとペースあげて森抜けようかな)
そんなことを考えていると……
ガサッ!
「ひゃっ!?」
いきなり背後で音がして……おそる、おそる音がしたほうを見てみるとニ、三歩歩けばつく場所に鋭い牙に逞しい体躯を持ったモンスターがいたのだ……!
(ひっ……)
そのモンスターの姿を視界に捉えたレスティアの心臓がバクバクと早鐘を打つ。
あの牙に噛み付かれたらひとたまりもないだろう。それにあの体躯……レスティアの力では反抗することもできない。アレに見つかったらおしまいだ。
「怖い……」
さらに恐怖をつのらせたのは、そのモンスターが別の弱いモンスターを襲って食事中だったことだ。
原型もない肉、それでも何か生き物だったことはわかる……(私も、見つかったらああなるの……?怖い怖い怖い怖い怖いこわいこわいコワイコワイコワィコワィ……嫌だ……)
初めて身近に恐怖を感じ、息をひそめて必死に隠れる。そうして、必死に耐えていると、モンスターは新しい獲物を見つけたのか去っていった。
「いなくなった……良かった……」
(早くこの森を抜けないと……)
なにせ、次も見つからないとは限らないのだ。
その夜は、あのモンスターの姿が脳裏に焼き付いて中々眠れなかった。
「朝になっちゃった……」
(今日もよく眠れなかったけど、とりあえず歩こう。一刻も早く森を抜けないと……)
心細さから俯いたレスティアの視界に入ってきたのは、ボロボロの服だった。
服の裾は破れてしまっているし、靴底が剥がれて靴のヒールも折れたりとレスティアの状態は中々に悲惨だった。
「お気に入りだったのになぁ……」
その後もひたすら歩いて……
「はぁ……はぁ……ちょっと休憩……」
そうして、近くの木にもたれかかって座り込んだ。
ちょっと休憩するだけのつもりだったのに、寝てしまっていたらしく、目が覚めると夕方になりかけていた。「……!。今日寝る場所探さなきゃ」
そう言ってたち上がった時だった。
「厶ウ……」
割と近い距離から聞こえてきたのはそんな声で……
(鳴き声……?モンスター!?)




