20.贈り物
二日程、モンスターの背中で過ごし、目的地につく。
モンスターが降りやすくしてくれたので簡単に降りることができて……
レスティア達が降りたのを確認すると、モンスターは飛びさろうとする。
(そうだ……)
「もし、良かったら名前を教えてくれない?」
そうレスティアが聞くと、モンスターはもう一度向き合ってくれる。
「我はクエンだ。我の友人からもらった大切な名前だ。また会えるかは分からぬが覚えたいなら覚えればいい」
その話を聞いた後で、聞きたかったことを聞いてもいいかレスティアが悩んでいると……
「初対面の私達をここまで送ってくれたのはコウのことがあったからかと言いたげな顔だな」
「なんで分かったんですか!?」
レスティアの考えを見透かしたかのようなクエンの言葉にレスティアがそう言うも……
「お主、自分が思っているよりも顔に出やすいと思うぞ」
(うっ、それは確かに)
理由を話してもいいと言ってくれたので聞くことにする。
「お主の想像通りだ。我々にとって時間と言うものは、ただ横を通り過ぎていくものに過ぎないが人間にとっては違っていて、少し浪費しただけでも大切な瞬間を無くすかもしれないものだと、我の友人に気付かされたからな」
そう言ったクエンは遺跡の方向を見ている。
(これからもクエンは、主もいなければ帰ってくる人もいない遺跡を守り続けるのだろうか……)
どうやら、三人もレスティアの考えていることを考えていたようで、しんみりとした雰囲気になったのを察したのかクエンが「何を考えているかは、大体わかるが、お主らは考えなくてもいいことだ」と言う。
「そっか、ありがとう!またね!」
そうレスティアが言うとクエンが不思議そうな顔をする。
「なぜ、さよならではなく、またね!なのだ。お主らと我の寿命はあまりにも違う。お主らが旅人なら、なおさら、また会える確率など1%にも満たない」
確かにそれはクエンの言う通りだ。
だけど……
「だって、さよならよりまたねの方がわくわくすると思うの!」
「よく分からぬが、分かった」
そう言うとクエンは今度こそ、飛び立っていく。
それと同時にクエンが飛び立っていた方向から何かキラキラとしたものがひとつ落ちてくる。
「何あれ?」
レスティアが受け止めるとそれは、キラキラとした赤い宝石だった。
「それはお主らにだ。またな」
クエンはそう言うと次の瞬間、跡形もなく消える。
おそらく、人の目では捉えられない速さで、飛んで言ったのだろう。
「何を貰ったんだ?」
瑠雨が聞きながら、レスティアの手を覗きこんでくる。リリーナとリヒトも気になったようなので、三人にも見えるように手の中の宝石を見せる。
「これは、クエンの翼についてた宝石のひとつかしら?」
リリーナがそう言う。
なぜ、クエンが翼の宝石をくれたのかは分からないが、きっと何か意味があるのだろう。
これはクエンが四人にくれたものだし、無くしたら困るのでリリーナに預けようとするも、レスティアちゃんが持っていたらいいわと言われてしまったので、リュックの中の大切な物が入った箱にそっとしまう。
(また、会えるといいな)
そう思いながら、クエンが飛び立った方をみる。
そういえば、クエンが送ってくれたことでどれくらい短縮したのだろう?
「ルナリアまであと、三ヶ月と一週間ぐらいかな」
「ううん。三ヶ月よ」
そのレスティアの言葉にそう答えたのはリリーナだった。
「実は、言ってなかったことがあるのだけど……」
リリーナによると、あの地下遺跡は特殊な立地なのか、時の流れが狂っていたらしく洞窟の奥に進んだ時から、持ち運びカレンダーであるリヒトの日計が狂って止まっていて、クエンの背中に乗って地上に出た途端、一気に五日進んだらしく、五日ロスしたことになったが、クエンが送ってくれたので、普通だったら、七日かかる道を、クエンの背中に乗っていた二日で、辿り着くことができ、結果的にルナリアへ着く予定日は変わらないらしい。
ちなみに、この世界の日の数え方、それから一年の日数は前世と少し似ていて、太陽暦を参照していて、一週間は七日、一ヶ月は基本三十日なのだが、「日計」というのは持ち運びカレンダーのようなもので、腕につけられる腕時計のようなものに、内側には1〜12・外側には1〜31という目盛が刻まれていて、中に入っている特殊な石で太陽暦を観測して、月を意味する内側の針と日を意味する外側の針の二本で今が何月何日かパッと見で、わかるようになっているものだ。
野外を旅する時に役に立つので、冒険者などは持っていることが多いらしいと、こないだリリーナに教えてもらった。
ここから、一週間ほどで立ち寄ると言っていた村にたどり着き、そこで一日休む。
その後、その村から二カ月と一週間ほどで、寄り道すると言っていた大きな街につき、そこで二日ほど休む。
そこから、二週間歩けばレスティアの故郷につくらしい。
「赤い宝石を身にまとい、火を噴く伝説級の渡り鳥モンスターがいるって図鑑に載ってたことがあったけど、本当に実在するとは思わなかった。それに人語まで喋るなんてね」
独り言のように呟いたリヒトの言葉にレスティアが気になっていると、リリーナが答えてくれる。
どうやら、クエンのようなモンスターは個体数が少なく、伝説級と言われるほど、見かけることがめったにない珍しい種族のモンスターらしい。
(私達、結構、運が良かったんじゃ……)
どうやら、地上に出た時のリヒトのあれ?という声は、日計のことだったらしい。
(もしかして、クエン、それもあったから送ってくれたのかな?)
クエンには感謝である。
あれから数日たち、レスティア達は相変わらず獣道や崖を歩いていて、地下遺跡での一戦は、レスティアのモンスターへのトラウマを少しずつ良い方向に向かわせていたし、悩みの渦中のレスティアの心にもいい影響を与えていた。




