14.地下遺跡1
それから数日後、やっぱり胸のモヤモヤは晴れなくて、レスティアは相変わらず思考に耽っていた。
(だめだ……全然気持ちが晴れない。足元がぐらつくような怖さもなくならなくて……)
レスティアがそんなことを考えていると、手のひらにポツリと冷たい何かが落ちてくる。
何かとそちらを見ると、手のひらには見事な結晶が乗っていた。
すぐに溶けてしまったものの、それを見届けてから、上をみると、ちらちらと白い花びらのようなものが空から舞い落ちてきていて、どうやら雪が降ってきたらしく、リリーナ達も気付いたのか野営場所から撤収準備をしていた。
撤収準備をしている間にも雪は激しくなり、急いで山道を走って洞窟に駆け込んだ。
奥まで続いている少し大きい洞窟だ。
「これ、当分止なまさそう」
洞窟の入口で外に視線をやりながら、独り言のようにそう呟いたリヒトの言う通り、雪は洞窟に駆け込んだ時より激しくなっている。
「今日はここで野営かしら」
リリーナの言った通り、日が暮れても激しい勢いの雪は止みそうになく、今夜はこの洞窟で過ごすのが決定した。
(この調子だと、朝には振り積もりそう)
洞窟の中から、月をみながらそう考えていると、あっという間に寝てしまう。
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「レスティアちゃん起きて!」
次の日、少し焦ったリリーナの声で目を覚ましたレスティアがリリーナの視線の先を追うとあり得ない光景が広がっていた。
昨日はあったはずの洞窟の入り口が塞がっており、まるで最初からそこに存在しなかったかのように綺麗さっぱり消えていたのだ。
レスティアが驚いた顔をしていると、リリーナが説明してくれた。
一番早起きだったのはリヒトだったらしいのだが、リヒトが起きたときには既に洞窟の入口が消えていたらしい。
体当たりしてみたり、ギミックを探したりと色々試したが昨日の状態に戻ることはなかったそうだ。
「……洞窟の入口と反対側の方は昨日と変わらず奥に続いてるみたいだから、見てくる」
リリーナにそう言ったリヒトと瑠雨が奥の方へ見に行くも……
五分程で戻って来る、どうやら奥には続いていたらしく、今は奥に進むしかないらしい。
洞窟の奥は暗くて、足元に気おつけないと踏み外してしまいそうで、かろうじて足元が見えるのは、洞窟の天井に吊り下がっている光る花のようなもののおかげだ。
ひたすら洞窟を歩くが、いつまでたっても、一番奥までつかないし、どこを見ても暗いので、段々方向感覚と時間感覚が分からなくなる。
その後も歩くが、段々、洞窟に入って、どれぐらい歩いたか分からなくなってどれくらいたったのか分からなくなってきたなとレスティアが思っていると、フッと一瞬、体が軽くなった気がして……
「へっ……?」
奇妙な感覚を覚えながら、足元を見るとそこにはもう地面がなく、ぽっかりと暗がりが広がっているだけだった……!
「落ち……」
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「はっ!」
(あれ……どうなったんだっけ?そうだ、確かいきなり洞窟に穴が空いて……みんなは!)
それに気がついたレスティアが、他の二人と一匹を探すため周りを見渡すとみんなも同じように落ちて来たようで、気絶しているだけのようだ。
「よかった……」
安否確認をした後、周りをみると見たことのない青い花が咲き誇っている花畑で、花畑がクッションになったおかげで怪我をせずにすんだらしい。
目の前の青い花畑は微かに青い光を放っており、上から入ってくる光も浴びてどこか神秘的な雰囲気を醸し出していた。
上の方の光はレスティア達が落ちて来た穴で、かなり深くに落ちてしまったらしく仮にロープなどがあっても、上まで登るのは無理そうだ。
周りの状況確認をしていると二人と一匹が目を覚ましたので、レスティアは、上まで戻るのは無理そうという結論をリリーナに話す。
リリーナとそれをリリーナから聞いたリヒトは、しばらく周りを探索した後、レスティアと同じ結論に至ったようだ。
「にしても、この花見たことないわね」
リリーナもこの花は見たことがないらしい。
「奥を見て来たけど、道は続いてた」
リリーナにそう言ったのは、他に行ける道を探していたらしいリヒトだ。
「地上に戻るのは無理そうだし、この地下を進んで地上への道を探すしかないみたいね」
奥に進むと、両側に高い石レンガの壁がそびえ立ち、二人で歩くのがやっとな細い通路が見えてくる。まるで、遺跡の内部のようだ。
(なんで、こんな地下に遺跡が……?)
レスティアがそう思っていると……
「迷路みたいだな」
瑠雨がその言葉通り、地下遺跡というよりは地下迷宮に近く、ひたすら遺跡の内部のような入り組んだ細い通路が続いている。
「でも、こんな入り組んだ道、どうやって進めばいいのか……」
遺跡の内部のような細い通路を進みながら、レスティアがそう言っていると、ふいに、どこからか流れてきた風が頬をかすめる。
「風……?」
レスティアが気付いたことにリリーナ達も気づいたようで……
「ここは地下だから風なんて流れてこないはず……」
「ってことは、風が流れてくる方向に行けば……」
「地上に出られるかもしれないわね」
顔を見合わせながらキャッチボールをするように会話していたリリーナとリヒトはその結論に至ったらしく、風が吹いている方向を探すことに。
「こっち、風が吹いてるぞ!」
瑠雨の声が聞こえたので、そっちに向かうと、上に向かう階段が見えてくる。
「もしかして上に続く階段?」
少し期待しながら階段を登るも少し上がるとまた、さっきと同じような通路が続いているだけでがくりと落ち込む。
その後も、同じような階段を上ったり下ったりとゴールの出口まで本当に近づけているのか分からない道が続く。
「今回の階段は、ちょっと長いわね」
リリーナの言う通り、今までの階段に比べると長いものの……
「登りきったけど……」
階段を登りきった後に見えてきた景色は同じような通路ではあるものの、今までと比べると壁の装飾が増えたり、壁の色が白よりの灰色から濃い灰色になったりと、例えるならばRPGゲームのボス戦間近の遺跡通路みたいな、そんな感じだ。
「なんか、雰囲気変わったわね」
(これ、やばいモンスターとか出てこないよね……)
リリーナのその言葉に、レスティアが少し不安になりながら足を進めていると、足元で、カチンと何かが起動した音がして……
その瞬間、頭の上をすごい勢いで何かがかすめる。
「うわ!何!」
かすめたものが飛んでいった壁を見ると、そこに刺さっていたのは、五本の矢で……
「レスティアちゃん大丈夫!?」
「はい、大丈夫です!」
前方からリリーナの声が聞こえたので、それにそう返事する。
警告のつもりなのか、かなり高い位置に矢が飛ぶ仕組みになっていて、事なきことを得た。
その後も、いくつか罠があったがどれも警告のようなもので、なんとか突破して歩き続ける。
「かなり歩いたつもりだけど、オレ達出口に近づいてるのか?」
「それに、どれくらい時間がたったのかしら」
瑠雨とリリーナの言った通り、陽の光も入らないので時間の感覚も分からなくなってくる。
「……これ以上進んでも、すぐに出口は見つからなさそうだし、今日はもう休憩した方がいいかも」
そう言ったリヒトの提案で休むことにする。確かに洞窟の入口が塞がれてから、ずっと歩き通しで足が痛いし、お腹も空いている。
焚き火をするわけにはいかないので、持っていた干し肉で空腹をしのいでいると、ふいに隣で同じように干し肉を食べていたリリーナが何かを考えこむように、遺跡の壁に触れてることに気付く。
気になったレスティアが何を考えていたのか、聞いてみるとこの遺跡について考えていたらしく、警告のような罠と迷うような迷路状の通路から、リーイウェル大陸のあちこちにあって、挑む冒険者達が後を絶たないカラクリ遺跡というものに構造が似ているらしい。
ただ、不思議なのはカラクリ遺跡は十二個しかなく、十二カ所全ての場所を発見されており、本来なら、ここにはないはずなのだそうだ。
リリーナによると五百年程前に最初のカラクリ遺跡が発見され、そこにあった石板に全てで十二箇所あると刻まれていたものの、誰が何のためにどうやって作ったのかは刻まれていなかったらしい。
「そんな感じで、カラクリ遺跡自体、謎が多いから、あってもおかしくないだけど」
尚、リリーナが知ってるのは、そう言った考古学に詳しいリヒトに話を聞いただけらしく、二人は挑んだことがないらしい。
そんな会話をしながらご飯を食べ終えたレスティア達は明日に向けて寝る準備をしていく。
尚、見張りは二時間ごとに交代ですることになり、順番を話し合うことになる。
「僕は、ここからここを当番したいんだけどいい?」
リリーナにそう言ったリヒトが仮眠の六時間のうちの、二時間〜四時間目の間を指さす。
反対意見は無かったので、リリーナ、リヒト、レスティア&瑠雨の順番で見張りをすることとなった。
寝袋を広げられるほど広くないので、ブランケットを羽織って寝ることにする。




