↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界冒険譚  作者: 夜月
PR
14/21

13.迷走

 リヒトにあの言葉を言われてから三日がたった今日この頃、あの日リヒトに、はっきり嫌いと言われたレスティアは、それを嫌悪と拒絶だと受け止めて、それ以降、自らリヒトに関わることはしなくなり、一言も言葉を交わしていなかった。

 そして、リヒトも同様に、リリーナや瑠雨とは会話するものの、レスティアに関わろうとはしなくて。

 そんな二人を見ていた瑠雨とリリーナは、さらにその空気を心配するような振る舞いをするようになっていた。

 その上、リヒトにあの言葉を言われた後からレスティアが感じている胸のモヤモヤはなくならないどころか、日々増していっていて、なのに、どれだけ考えても解決方法は見つからなくて……考えれば考えるほど足元がグラグラとぐらつくようで、これ以上考えるのは怖くて……

(どうしよう……寝れない……)

 周りが静まり返った深夜の森で、寝袋に潜り込んでいたレスティアは、かれこれ二時間程寝付けずゴロゴロとしていた。

 寝たほうが良いだろうが、このままだといつまでも寝れそうになくて……

(はあ……ちょっと散歩にいこうかな……そしたら、眠くなるかもしれないし……)

 レスティアの寝袋に潜り込んで丸まって、気持ちよさそうに眠っている瑠雨と、川の字に並んだ寝袋でぐっすり眠ってしまっているらしいリリーナとリヒトを起こさないよう極力気を使って、寝袋を出る。

 尚、散歩とは言っても、モンスターがめったに現れない森とはいえ、夜の森を練り歩くのは怖いので、野営場所が見える範囲までだ。

 夜の帳が降りた森は、しーんと静まり返っていて、まるで、世界に一人になってしまったようだった。

 そんなことを考えながら、足の赴くままに歩いていくも、そのモヤモヤが晴れることはなくて……

(だめだ……落ち着くどころか、どんどん正体不明のモヤモヤと足元がぐらつく怖さが大きくなってる……)

 だからだろうか、その時のレスティアは、自分が寝袋から抜け出したことに気付いた人がいたことも、考えごとに夢中になって、いつの間にやら野営場所が見えない森の奥深くまで来てしまっていたことにも気づけなかった。

(あれ?なんか視線……)

 ふと、どこからか視線を感じて顔を上げたレスティアは周りが真っ暗闇の森の中に立っていることに気付く。 左右どこを見ても似たような木々が風に揺れてるだけで、自分がどこから歩いてきたのかも分からなくて……

「え……あれ……」

(もしかして私知らないうちに野営場所から遠い場所に来ちゃった……!?)

 レスティアが焦って周りを見渡していると、さっきと同じような視線を後ろから感じる。

 とっさに振り向いたレスティアの視界に入ってきたのは、夜闇の茂みから飛び出してきたパンサーラビットは、ざっと見て二十匹ほどいた。

(え……!めったに出ないって。まあ、でもちっちゃいし……)

 振り切るという選択肢もあるが、二十匹ほどいるモンスターを全て振り切るのは至難の技だし、その間に野営場所からさらに離れてしまいそうで……

(やるしかないか……)

 そう思いながら、練習していた魔法を使おうとすると、パンサーラビット達の視線が一気にこちらを向いた。

 すると次の瞬間、夜闇でもしっかり見えるようにするためか、パンサーラビット達の瞳が、一斉に赤く光り出して……パンサーラビット達の赤い目が視界に入って来た途端、あの時の小動物を襲っていた狼の記憶が鮮明にフラッシュバックする。

「あれ……なんで……?魔法攻撃が使えない……」

(どっ……どうしよう……怖い……)

 狼のようなモンスターに比べたらこんなのかわいいものだ。

(なのに、どうして……)

 足がもつれて立っていられなくなって……

(どうしよう……足が震えて……立てない……)

 目の前のパンサーラビット達は、足が震えて座り込んでしまったレスティアに獲物を見るような鋭い視線を向けていて……それはさながら、ごちそうを前にした肉食獣だ。

(逃げなきゃ……)

 けれど、レスティアの頭はパニック状態で正常に動かず、座り込んで立てなくなっているレスティアを数十の赤い目達が捕らえる。

(こっ……怖い……立たなきゃいけないのに……)

 次の瞬間二十匹のパンサーラビットが波を作りレスティアをめがけて飛び上がる。

「ひっ……!」

「危ない!」

 どこか聞き覚えのある焦った声が聞こえると同時に風魔法の攻撃が見えて……

 だけど、レスティアの意識はそこでプツンと途切れてしまった。

▶△▶△▶△▶△▶△▶△▶△▶△▶△▶△▶△▶△▶

「……は!あれ、私……」

 気がつくと同時に起き上がったレスティアの横には心配そうな顔をしているリリーナがいて……

「良かった、起きたのね」

 どうやらレスティアは気絶してしまっていて、気がつくまで寝袋に寝かされていたようだった。

(私……どうしたんだっけ……)

 そう思ったレスティアの脳裏に思い浮かんだのは、自分を取り囲む数十の赤い目と風魔法で……

(……!。そうだ、私、モンスターに……)

 モンスターの前に立つまで気付けなかったが、レスティアが思っていたより迷いの森でのモンスターがトラウマになっていたらしい。

 モンスターを前にしてトラウマがフラッシュバックして、気絶してしまったのだろう。

 そして、今のメンバーで風魔法を使えるのは、風属性と光属性を持っているリリーナか、風属性を持っているリヒトだけで、土属性しか持っていない瑠雨にそんな芸当はできない。

 それらを顧みた上で、こうして心配そうな顔をしているリリーナがそばにいるということから、おそらく、レスティアが気絶する直前、風魔法と共に聞こえてきたどこか聞き覚えのある声はリリーナだったのだろうと当たりをつける。

「リリーナさんが助けてくれたんですね。ありがとうございます。こんな夜中にお騒がせしてしまいすいませんでした」

 申し訳なさそうにそう言ったレスティアの言葉を聞いたリリーナは、一瞬、寝袋でぐっすり眠っているらしいリヒトの方になんとも言えない視線を向けて、その後でレスティアの方に顔を向けると、いつも通りの笑顔で口を開く。

「……ええ。無事みたいで良かったわ」

(……?。なんで、一瞬リヒトさんの方に顔を向けたんだろう?)

 起こしてないかの心配だろうか。確かにリヒトは、自分以外が原因で、寝てる途中に、その上、こんな夜中に起こされたら超絶不機嫌になりそうなものの……なにせ、この三人と一匹の中で誰よりも早寝早起きだし、全体的にきっちりしているのだ。

「ともあれ、大丈夫そうかしら?」

「はい。迷惑をおかけしてしまったみたいで本当にすいませんでした」

「ええ、おやすみ。後、レスティアちゃんはよく謝るけど、すいませんよりありがとうの方が嬉しいわ。」

「……!。おやすみなさい。本当にありがとうございました」

 レスティアがリリーナの言った通りに言葉を返すと、リリーナはうれしそうな顔をしてくれた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。