10.伝令鳥
「んっ……朝……?」
朝の眩しい光で、目を開けて髪飾りを取ろうと頭の上の方を探ってみるとほっぺのような柔らかい感触が手に触れる。
「へっ……?」
目をしっかり開いて見てみると十歳ぐらいだろうか。赤髪にリスのような耳がぴょこんと生えた見覚えのない子どもの顔がどアップで視界に入る。
「うわあぁぁ!!」
びっくりして勢いよく寝袋から飛び起きて、そのまんま勢いで周りの木の幹に頭が当たる。
「痛っ!」
(あれ?まだ、夢みてる……?夢なんだ……そうきっと夢……)現実逃避してみるもの、いつまでも目が覚めない。
「レスティアちゃん!?」
ドタドタという慌ただしい音と共に、レスティアの大声に心配になって様子を見に来たらしいリリーナが現れる。
「ううん……」
それと同時に見覚えのない子どもが目を覚まして……
「ひょぇっ……」
「えっ。誰?」
どうやら、リリーナも分からないようで、こっちの方を見る。
「私もわからないですっ!」
パニック状態である。
「いや……別にレスティアちゃんが連れてきたとは思ってないのだけど……」
そんなやりとりをしてると子どもの視線がレスティアを見る。
「ご主人さま!おはようございます!」と元気な声で 満面の笑みをうかべる。
「へっ……?」
またもや、リリーナがこちらを見る。
(本当になにも身に覚えないんだけど!?)
混乱しながら、今までの一連の事を思い浮かべるがなにも思いつかない。あれ?そういえば瑠雨は……?元気になってレスティアのもとを離れたのなら別にいいのだが。
(そういえば、目の前にいる男の子が来てる服、昨日リリーナさんが作ってた服に似てる……?)
「瑠雨……?」
「はい!ご主人さま!」
「へっ……?」
またもや、レスティアの間抜けな声が森中に響き渡るのだった。
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しばらくたち、落ち着いたので一旦、リリーナに席を外してもらって瑠雨に事情を聞いてみると、どうやらレスティアは無意識に一番簡易なモンスターとの契約をしてしまったらしい。
出会った時に瑠雨が怪我をしていたので、薬草で応急処置をしたあと、治りますようにと思いながら撫でていたのだが、レスティアには水と土以外に回復魔法である光魔法が使えるらしく、撫でていた時に無意識に回復魔法を使っていたらしい。
だが、あの森は魔法が使えなかったはずだ。何故、光魔法は使えたのか聞くと、モンスターの言葉は拙かったものの、あの森には闇属性の力が満ちていて、相対する、光魔法以外の魔法は無効化されてしまうという事だけは分かった。だからこそ光魔法は使えたのだ。
そして、この一番簡易な契約というのは契約したいモンスター相手に自分の魔力を少量与え、契約の紋がモンスターのどこかしらに現れた後、名前をつければ完成するらしく、レスティアは、それを無意識にやってしまったそうだ。
尚、簡易的なものなので、何もしなくても、半年後には、解除されるらしい。
(迷いの森にいた時に一瞬、モンスターの額が光った気がしてたんだけど、きのせいじゃなかったのか)
「無意識に契約しちゃったみたいでごめんね。今からでも契約、解除しようか?あなたには好きに生きて欲しいし……」
レスティアがそう言うと、モンスターはさっきの元気はどこへいったのか、うつむいて何も言わない。
(あれ?なんか様子が……)
「一度結んだら、半年しないと解除出来ないし、別に嫌じゃないから、このままがいい」
モンスターはふるふると頭を振ってそう言う。
(まあ、本人がそう言うなら……半年後に、解除方法、教えてもらえばいいし……)
「わかった。じゃあ、これからも瑠雨って呼んでいい?」
そう聞くと、瑠雨はコクンと頷いた。そして、いきなり瑠雨がいきなり人型になったのは、今までは弱っていたのでモンスターの形を保つ事が精一杯だったが少し良くなってたおかげで人型にもなれるそうだ。
ちなみに人型になれるモンスターは瑠雨の種族の他にも何種類かいるらしい。
それから、レスティアのことは今度からご主人様ではなくレスティアと名前で呼んで欲しいと伝えた。瑠雨は細かい事は分からなかったようだが、レスティアが困るならそうすると言ってくれた。
リリーナに、契約諸々と瑠雨が人型になれるモンスターだという事を話すと、納得はしてくれた。
尚、リリーナは契約魔法に詳しくないらしく、解除方法については、半年後に瑠雨に教えてもらうしかなさそうという事が分かった。
瑠雨はまだ、全快ではないようで人通り話し終えたら疲れたのか、眠ってしまった。
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その日の夜、野営場所でいつもと同じように寝るまでの時間を過ごしていると、視界のすみに白い体に青い瞳の見覚えのある伝令鳥がこちらに飛び込んできて……
(……?。これお父様の……なんで、ここに?)
レスティアが一週間近くも行方をくらませていたので、心配になって飛ばしてきたのだろか。
(あのお父様が……?)
もしかしたら、父親からの手紙が入っているかもしれない。
レスティアは不安に近い少しの期待をしながら、鳥が足にくくりつけている筒を開けて、中から取り出した筒状に丸まった筒と同じ大きさの紙を広げるも……隅に書かれていた文字はモニカというとても見慣れた字面だった。
(お父様からじゃないんだ……別にわかってたしいいけど……)
それに、レスティアとしてはモニカからの手紙の方が何十倍も嬉しい。
〈モニカです。レスティア様が行方をくらませてすぐに旦那様に相談したのですが、詮索魔法でも六日近くレスティア様の居場所を補足できず、今日やっと居場所が分かったので飛ばす事ができました。遅くなってしまい申し訳ありません。旦那様は伝令鳥でも補足できない不思議な空間にいたのだろうと言っていたのですが、ご無事ですか?もし、無事ならこの筒に入っているもうひとつの紙に返事を書いて送ってくれると嬉しいです。私はいつでもレスティア様の味方です。ご無事の期間を祈っています〉
「……っ!モニカ……」
その手紙はモニカの直筆のようで、文字の端々から心配という気持ちが伝わってくる。
その文字を目で追っていると、途端に心細くなって……遭難しかけて助けてもらったとはいえ、いきなり知らない場所に飛ばされて、知らないうちに気を張っていたのか、見慣れた筆圧に心がきゅっとなったのだ。
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「んっ……あれ……朝……?」
どうやらそのまま眠ってしまったらしく、そばに転がっている筒をそばに置こうとしたその時だった。
(あれ?まだ、何か入ってる?)
そう思い筒を反対にすると、中から出てきたのは筒状に丸まった小さな紙だった。
そこ書かれていたのはたった一文で……
〈早く帰ってこい〉
(これ、お父様の……)
その文字を見たレスティアはいつかのリリーナの言葉を思いだすも、やっぱりあのリリーナの言葉を信じきる事はできなかった。
(モニカに返事を書いて伝令鳥に送ってもらおう)
頭をフルフルと振って、その思考を追い出したレスティアは、そんな事を思う。
〈心配してくれてありがとう。庭にあった変な魔法陣で、いきなり知らない場所に飛ばされて、色々大変だったけど親切な人達に助けてもらったので、大丈夫。今はクリス地方にいるので、四ヶ月後ぐらいには屋敷に戻れると思う〉
「よろしくね」
そう手紙に書いたレスティアは、そんな言葉と共に、口笛を吹いて送り主がいる屋敷へ伝令鳥に送るのだった。




