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【3分短編オムニバス】相談を聞かないモチオ相談所 〜身勝手な人間のカルテと不適切なネコの処方箋〜  作者: モチモチオ
最終章 天使の施しと悪魔の裁き 第一部 愛の代償

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144/144

第144話 最終章  1 終わりの始まり 

モチオさん……お願い……。


モチオは、そんな遠い呼び声と悪夢の淵から目を覚ます。


そっと近づいてくる影があった。ネコロボだ。


ネコロボ:「モチオさん……いえ、ドクターM。そろそろ『更新』の時期かと……」


モチオ:「……ああ。わかった」


二人は倉庫の奥へと向かう。


埃を被った山積みの書類を退けると、そこには隠された地下通路が口を開けていた。通路を渡りきった先には、周囲のボロ屋からは想像もつかない大掛かりな精密装置が鎮座している。


ネコロボ:「がり勉猫さんとコツ勉猫さんは、ご両親のお墓参りへ。モチタ、モチクロは学校です……ドクターM」


モチオ:「そうか……。じゃあ、始めてくれ」


モチオは冷たい金属の椅子に深く腰掛け、全身に電極と装置を装着していく。


ネコロボ:「では……ドクターM。開始します」


モチオ:「その前に、一つ聞きたい」


ネコロボ:「なんでしょうか……」


モチオ:「みんなは幸せか? そして、俺は……幸せか?」


ネコロボ:「はい。とても幸せです」


モチオ:「……よかった」


装置の出力が唸りを上げて上昇していく。モチオは静かに目を閉じ、深い、深い眠りの海へと沈んでいった。


「モチオさん!! モチオさん!!」


モチオ:「……ハルさん」


ハル:「モチオさん、また研究室で寝て! だめよ……。これ、朝食よ」


モチオ:「サンキュー、ハルさん……。相変わらず、ハルさんのスープは心に染みるわ……」


場面が陽炎のように揺らぎ、切り替わる。


ヨシロウ:「モチオ! まだ怒ってるのか! 俺たちが結婚することについて!」


モチオ:「当たり前だ!! 俺は認めんぞ!!」


ヨシロウ:「ははは! モチオはハルのことが好きだったもんなぁ」


モチオ:「本人の前で言うな! だから物理学者はデリカシーがねーんだよ!」


ハルは、そんな二人のやり取りをただ優しく、慈しむように見つめて笑っている。

また、場面が変わる。


モチオ:「お前のところの長男……タツキ君か。ギフテッド(天才児)か……大変だな」


ヨシロウ:「ああ、そうなんだよ……」


モチオ:「お前自身も苦労したもんな。同じ人生を歩ませたくないっていう気持ちはわかるよ」


ヨシロウ:「馬鹿でいいんだよな。馬鹿で、ただ楽しく生きてりゃそれでさ……」



場面が再び、セピア色に変わる。


ヨシロウが一枚の写真を見せた。


ヨシロウ:「これが、クルミちゃん……どう思う? モチオ」


モチオ:「そうだな……可哀想な境遇だ。……そうだ、タツキの言う通り、養子にしてやってはどうかな。ほら、タツキ君も妹がいれば……案外、馬鹿な兄貴としてやっていけるんじゃないか?」


ヨシロウ:「モチオ、お前もそう思うか……」


モチオ:「なんかあったらさ……その時は俺が引き受けるから。安心しろ」


ハル:「モチオさん……」


モチオ:「勘違いするなよ! 俺はまだお前らの結婚、怒ってるからな!」


ヨシロウ:「すまんすまん、ここの酒代は俺が奢る。今日はそれで機嫌を直してくれ」


三人の笑い声が響く。



だが、その幸せを切り裂くように、あの「事件」は起こった。



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