表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
記憶を忘れた大天使と愛を忘れた女神様  作者: わが身の全ては主の栄光の為
PR
2/3

王女(プリンセス)

「超常能力」。それは簡単に言えば量子力学の分野でシュレーディンガーの原理の応用である。

観測されたことの無い事象は存在するか存在しないか可能性でしか表現出来ない。

例えば、物理法則に則った自然現象は一般的に認知されているし日常生活でも使用されているので高確率で存在するが、物理法則に逆らった超自然現象は不明な点も多く一般に認知されていないので低確率となる。

しかし、もしも人間の精神を操作して超自然現象の方を選択させる事が出来れば本来の可能性を無視して超自然現象を発現させられる。

この理論を応用し、世界三大派閥の一つ「科学主義」の頂点に位置する「国際自然科学研究連盟」(Innternational Natural Science study Federation)通称INSFは「超常能力」の研究に乗り出した。

幾多の実験が繰り返され、最終的に「精神疾患を引き起こす薬品「NSブーストデジイス001」と想像力を上昇させる薬品「NSハルスネイション001」を投与し、能力に関する一定の学習を施せば約89%の確率で何らかの超常能力が発現する」と発表した。

以来、世界中で超常能力の研究や実験が盛んに行われる様になり、「科学主義」の勢力拡大に貢献した。

また超常能力(以後、能力と表記)には強度を表す「欠陥能力」(ノットファウンド)、「計画段階」(ランク1)、「研究段階」(ランク2)、「実験段階」(ランク3)、「実用段階」(ランク4)、「完全能力」(ランク5)、「突然変異種」(アグリータイプ)、「優等進化種」(エボリューションタイプ)の8段階の段階ランクがあり、「完全能力」(ランク5)に至っては世界で僅か100万人しかいない。




                     1


天宮焔は学校にいた。

天宮が通っている学校は「私立聖ウルスラ学園」、東京都の江戸川区にあるキリスト教系の学校だ。

現在は昼休みであり、天宮は図書室で本を読んでいた。本のタイトルは「シュレーディンガーと猫」である。

図書室はかなり広く、上からシャンデリアがぶら下がっていてそれは国会議事堂を思わせる。

と、いきなり背後から長身の女性が現れた。

「ほ~の~か~ちゃーん、何してるのぉ?」

そう話しかけてきたチョコレートのように甘い声の主は「帝神 情」(たいこう こころ)、高校一年生の完全能力者(ランク5)である。

その容姿は金髪の五本の縦ロールを腰の辺りまで伸ばしていて、金色の目に整った女性らしい顔立ちで恐らく身長180cm以上はある....というとても奇抜な姿だった。

天宮は厚かましそうな顔をして

「別に、本読んでただけだけど?」

対して帝神はニヤニヤと笑いながら

「まぁた、そんな小難しい本なんか読んじゃってぇ。大人になりたい気持ちは分かるけどぉ、あんまり意識しすぎるとしんどいぞ★」

帝神の言葉に天宮は若干イライラしながら

「は?読みたいから読んでるだけなんだけど。それよか君が用があるんじゃないの?」

「あらぁ、よく分かったわねぇ。そ、私からの愛のコ、ク、ハ、ク★」

天宮は帝神のふざけた言動にいい加減嫌気が差して来たのでさっさと教室に戻ろうと思っていたが、

ガラッ、という音で唐突に意識が寸断された。

王女プリンセス、何処におられるのですか!」

そういった叫び声と共に十数人の様々な女子達が入口から歩いて来た。

その面々の腕には「総主席親衛委員マナー・ドッグ」と書かれた腕章が付けられている。

「私はここよぉ、」

と帝神が言うとほっとした様に

王女プリンセス、こんな所におられたのですね... 」

そう言っている少女の名は「狗神 夙風」(いぬがみ つとかぜ)。さらさらとした銀髪を背中まで伸ばした茶眼の容姿をしている。

狗神は天宮と帝神を隔てる様にして間に入り、帝神の方を向いて手先を震わしながら大声で

王女プリンセスッ!こんな所で何をされていたのですか! どこか痛い所はありませんか!?誰かに何かされたりしませんでしたか!?」

その余りに過保護すぎる言動に帝神は顔を引き攣らせ

「だ、大丈夫よぉ。全く、夙風は心配性ねぇ。」

その言葉を聞き、犬神はその場に崩れ落ちる様に座り込み

「よ、良かったです。私... 王女プリンセスに何かあったんじゃないかと思うと、もう居ても立っても居られなくて... うぅ...」

遂に泣き出してしまった。

天宮は、泣くほどの事なの?と若干引いていたが帝神には日常茶飯事らしく子供をあやす様に

「あー、はいはい。そんな事でぇいちいち泣かないの。」

そう言われた狗神は、わ、分かりました、と言って涙を拭いながら今度は天宮の方を向きにっこりとした笑顔で

「申し訳ございません、情けない所をお見せして」

天宮も少し笑顔を作り、

「いや、別に謝らなくてもいいよ。それより名前なんて言うの?」

「あ、はい。初めまして「総主席親衛委員マナー・ドック」委員長の狗神夙風と申します」

その言葉に天宮は反応して

「「総主席親衛委員」(マナー・ドック)って事は総主席の側近かぁ」

「総主席」というのは毎年四月に「総主席選出総選挙」で全学年から一人だけ選出される全生徒の代表にして指導者である。

同時に校内では理事長に次ぐ絶大な権限を持ち、男子ならば「王子プリンス」女子なら「王女プリンセス」と呼ばれ、慕われる。

だがその絶大な力の故に疎む生徒もおり、そういった輩から総主席を護衛するのが「総主席親衛委員マナー・ドック」の役目である。

因みに現在の総主席は帝神 情であり、かなり人望が厚いようだが.....

「そうです。本来の役目は総主席の護衛なのですが、ほぼ側近みたいなものですね」

天宮の方を向いていた狗神は笑顔を絶やさずそう言った。

天宮はふぅん、と言いながら何かに気づいた様に

「そろそろ戻らないと、ぼくはもう行くけどこれからも情をよろしくね」

狗神はぺこりとお辞儀をして帝神に

「さ、王女プリンセス。私達も行きましょうか」

帝神は分かったわぁ、としぶしぶついて行こうとしたが、先に狗神の方が

王女プリンセス。申し訳ございません、私は少し行かなければならない所がありまして.....」

対して帝神は眉をひそめて

「? あなたがそんな事を言うなんて珍しいわねぇ、いつもは私にべったりのクセにぃ」

「すみません、どうしても外せないんです」

帝神がじゃあ、仕方ないわねぇ、と許可を出すと直ぐに図書室から走り去って行った。



天宮は中庭を歩いていた、丁度今の時間帯はポカポカとした陽気に包まれながらも適度に風が吹くので非常に快い場所になっている。

「うーん。なかなか良い気候だな、もうちょっと風があってもいいんだけどなぁ。能力を使えば風くらい起こせるけど... でもそうするとぼくの「ルール」に引っ掛か... !?」

天宮は言いかけた所で思考が途切れた、

ゴバッ、という爆音と共に全長10m程の鉄骨が飛んで来たからだ。

その衝撃は爆発に近かった。真っ直ぐに飛んできた鉄骨は地面に深くめり込みんで巨大なクレーターを形成し、周囲のものを吹き飛ばした。

鉄骨は真横に飛んで来た。一般的に考えると、鉄骨が横から飛んで来る事などあり得ない。

と、なればその現象は何者かが引き起こした事になるが.....

「あれ?何もしてこないのですか?」

天宮は全くの無傷だった。

「何のつもり?狗神」

その現象を引き起こした犯人は「狗神 夙風」。

彼女は淡い笑顔を浮かべながら

「これは警告です。王女プリンセスにこれ以上近づかないで下さい」

その表情は哀しみと怒りに支配されていた。

天宮はそれを全て理解した上で、言う

「断る」

「そうですか、ならば致し方ありません」

狗神はそう言うと地面に深く突き刺さった鉄骨を簡単に引き抜き、そのまま真横へ投げた。


鉄骨の重さは最低でも20キロ以上はあり、普通は投げるどころか持ち上げることすらも不可能なのだが...

ガァァン!という金属を叩いた時に出る特有と轟音が響き、鉄骨が天宮の1メートル先で弾かれる。

「やはり、「大主席アブソルーター」の名を冠するだけありますね」

狗神の顔から余裕が消える。

しかし、彼女は止まらない。

「私は、「総主席親衛委員」(マナー・ドック)の委員長です。王女プリンセスに害成す者は決してッ、」

そう吠えながら狗神は片手に鉄骨を持って、天宮に襲い掛かって来る。


と、その時。

「対象の思考を停止。特定期間の記憶の消去、並びに洗脳を実行」

瞬間、狗神が完全に停止し、瞳から光が消える。

「感謝するよ、」

と天宮が告げた声の主は

「あらぁ、その気になればほのかちゃんだって出来たでしょぉ?」

「帝神 情」だ。

「まあ、そうだけど。ぼくの「ルール」に反するからね」

帝神は僅かに微笑みながら

「お互い自由度が高すぎる能力を持つと大変ねぇ。狗神はちょっと人格に問題があるみたいだしぃ、やっぱり人格の改変をした方がいいかしらねぇ」

割とヤバい事を言いながら微笑む帝神に天宮は溜め息をつきながら

「結構酷いんだね、君は」

それに反応し、帝神はなお一層微笑みを強めて

「いいのよぉ、私は王女プリンセスだから。何をしようが私の勝手、私には決して逆らえないのよぉ」

と、狂おしい微笑みで微笑んだ。

それはかのアントワネット王妃のようにも見えた。








評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ