「超常能力」
自然科学は人類に数多の恩恵を齎した至高の学問だ。
自然科学は人間に希望を与え、救いを与えた。
しかし、あまりに発達し過ぎた技術は破滅を齎す事になるだろう。例えば核兵器は戦争と大量虐殺を生み出し、今日も問題視されている。そういった兵器や機械などは人間の憧れが具現化した姿だった、人間は動物と違って武力に頼らず知力に頼る。利用できるものがあれば何でも利用する、多少のリスクを背負ってでも。
昔から世界には「不思議な力を使う人」というのが存在する。それは神の子、聖人、魔女、魔術師、半神等様々な呼び名で呼ばれていたが、いずれも至高の学問たる自然科学をもってしても解明出来なかったのだ。
そこが自然科学唯一の敗北と言えるだろう。
一方、超常の力を使う人間を生み出した要因は紛れもなく宗教であると言える。何故なら彼らの力の根源は何らかの伝承や神話に由来しているからである。
もしも、その方面で文明が発達していれば世界の情勢は全く違っただろうが、最も勢力があるのは自然科学だ。”最近までは”
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4月30日 東京都、江戸川区。
四月とは言っても殆ど夏だった。特に最近は気温が高く、30度を超える日も珍しく無い。
だが、夜になると話は別だ。現在時刻は午後6時30分気温は20度を下回り、冷たい風が江戸川の鉄橋を吹き抜けている。
そこに、カツ、コツ、という静かな足音が聞こえた。
「はぁ、つかれた。何であんな雑用をやらなきゃいけないんだよぉ...」
そう間の抜けた声で話した男は学校指定のブレザーに整った顔立ち、ブラウンの目にナチュラルな髪型の茶髪からは2本のアホ毛が飛び出ている、という少し外国人らしい容姿をしていた。
彼の名は「天宮焔」(あまみや ほむら)。江戸川区内の私立高校に通う”極めて異質な”高校一年生である。
天宮は学校から帰る途中だったが、”一仕事”する為にわざとゆっくり歩いていた。
「あいつの話だとこの辺が取引場所って事らしいけど...」
天宮は歩くのを止め、辺りを見回す。そこは鉄橋の先端部分で人や車はもとより、何も無かった。
天宮は僅かに顔を歪め
「こりゃ、別の組織に先を越されたか」
と言った。
天宮はつらつらと考えを巡らせていたが、不意に思考が寸断された
いきなり天宮の足元の地面がドン、と爆発する様に消し飛んだからだ。
「!?」
辺りの地面が抉られ、濛々と煙が立ち込めている。
「ハッ、こりゃ死体の回収なんざできねーんじゃねえの?」
そう言った男はビルの屋上から吹き飛んだ地面を見おろしていた。
この男は現在、天宮焔を殺害するという目的を実行中であり、右手に持っている拳銃で天宮を撃ったばかりだった。
普通人間は場所を問わず銃で撃たれると出血多量で死ぬ、だから男はもはや目的は完了したと思っていたが...
「残念だねぇ、ぼくの体には傷一つ付いちゃいないよ?」
優しいようで不思議と怖い、天宮の声男の背後から聞こえた。
「な..」
男は振り向こうとするがその前に腹部から衝撃波が発生し、体がくの字に折れ曲がる。
「が、はッ!」
肺の空気が強制的に吐き出され、屋上から投げ出された。ビルの屋上から地面まで約18メートル、人間が生身で落下に耐えられる距離ではない。
「クソがッ!」
男はそう叫ぶと持っていた拳銃を真下に向けて3発程撃ち、地面に触れた弾丸が爆発した。
瞬間、男の体は爆発の衝撃波により吹き飛ばされ、地面を数回バウンドしてようやく止まった。
乱暴な方法だが、こうすることで落下速度を殺すことが出来る。
「あれあれぇ?さっきまでの威勢はどうしたのかな?このぼくに見せてよ、このクソ野郎」
天宮はいつの間にか男の背後におり、残虐な表情で唇を薄く引き裂きながら男の方に”意識を向けた”
「がッ、ごふッ、」
胸、腹、脇腹の三か所から衝撃波が発生し、低反発の枕の様に凹む。全方向から衝撃が加わった事でもはや吹き飛ばされる事も許されなかった。
それでも男は全身に力を込め、拳銃を構え直して
「クソが、クソがぁぁぁぁぁぁッ!」
タン、タン、ガン、と撃った。389㎧の弾丸が天宮の柔らかい皮膚に触れ、爆発した。
「はぁ、はぁ、これで... 死んだ、か?」
男は息を整えながらゆっくりと近づこうとしたが、
突然、ゴッ、と爆発による煙が竜巻の様に吹き荒れ、四方へ散った。
そこには天宮の姿があり
「駄目だなぁ、勉強が足りてないな、ぼくに正攻法で傷を付けるなんて無理に決まってるじゃないか」
天宮はゆっくりと不敵な笑みを浮かべながら言った。”全くの無傷で”
男は傷一つ無い事に驚愕し、顔を引きつらせて
「何故死んでない!?三発も撃ったんだぞ!」
対して、天宮は表情を変えずに不適な笑みを浮かべたまま
「確かに普通なら死んでるけど、ぼくの能力はそれを許さない。ぼくの”壁”は観測したあらゆる事象を”拒絶”する、だから例え核爆発でも空から隕石が降って来ても傷一つ付かないんだよ」
「ばか..な」
男は絶句した。何をしても傷が付かない人間なんかいるのか、そんな人間がいたらそいつは紛れもなく化物だ。男はこいつには何をしても勝てない、と悟った。だから、だからこそ、全てを終わらせたいという意味で、微かな希望を持つという意味で、躊躇いなく拳銃の引き金を引いた。
タァン、という発砲音が響く
「が....はッ、弾..がん.が跳ね返され...た?」
男の口から赤い液体が垂れる、男の腹部には穴が開いていた。男の意識が急速に遠のいて行き、ドサッ、と背中から後ろへ倒れる。
「ハッ、ぼくの力は事象の掌握、ベクトルの反転など容易い」
そして天宮はまだ辛うじて意識があるであろう、男に近づき
「ぼくは優しいんだ。聖母のようにね、だから選ばせてあげる。どうやって死にたい?」
その時の天宮の目はまさしく聖母そのものの様に優しかった。
「ああ、そう..だ..な、一瞬で..死にたい...」
その男の目は希望に満ちていた。
最後にただ一言、
「悔い改めよ」
一瞬にして周りが血の海に変わる、
男はもはや人間ではなくただの肉塊だった。




