斬る
愛し合う二人、そんな中でアンデッドの反応に飛雲は気付くが、それとは別の似た反応も……
その先には何があるのだろう?
飛雲『んーーっ…』
ベッドの上でフェイが伸びをしている。
伸びを終えると再びベッドの上で寝そべり、私のことを見詰める。
世莉奈『どうかした?』
飛雲『いや?何もないが。』
世莉奈『そう?じゃあ、どうしてそんなに嬉しそうに見詰めてるの?』
そう聞くとフェイは鼻で笑った。
飛雲『私の愛するの女はいつ見ても愛おしいと思っただけのこと。』
世莉奈『な、何よ…』
俄然、恥ずかしくなってしまった。
そんな私を尻目にフェイは私の後ろへ回り、バックハグをしだす。
世莉奈『もう、フェイったら。いつになく甘えん坊じゃない。』
飛雲『フッ、良いじゃないか。私と君の仲だ。嫌?』
世莉奈『嫌じゃない……寧ろ…嬉しい。』
恥ずかしいけど、私はフェイが側にこうしていてくれるだけで十分嬉しいし幸せ。
普段はクールでカッコよくて何処かぶっきらぼうだけれど、こうして甘えてくる時は凄く可愛らしくて、フェイを好きになれて良かったと心から思ってる。
飛雲『ん?』
フェイの触角が反応する。
飛雲『北西に反応……けど待て……』
何やら難色を示している。
世莉奈『どうしたの?』
飛雲『アンデッドと……アンデッドのようだが何処か妙な反応がある。』
世莉奈『言ってみるしかないよね。』
私達は準備を整え、反応があった方向に向かう。
−−−−−−−−−−−−
反応があった先は廃工場の中。
世莉奈『何だか薄気味悪いなぁ……』
飛雲『待て、アンデッドの他に誰かいる…』
目の前にスーツ姿の人物が立っている。
黒いスーツ、紺色と銀色の左右で異なる色の頭髪で瞬時にその人物が誰なのかわかってしまった。
飛雲『先を越されたか……』
目の前の人物の回りには光る蝶のようなものが飛び交っており、アンデッドに向けて腕を振るう。
アンデッドは一瞬で首を跳ね飛ばされ、赤い血を噴き出して倒れる。
遠目からフェイはアンデッドの死体を分析する。
飛雲『バッタの生物反応を感じる…バッタのアンデッドだろう。』
???『流石の分析力だね。』
目の前人物が顔をこちらに向けて反応する。
そしてこちらへと近付いてくる。
皇『見た?』
世莉奈『な、何を?』
皇『一部始終を……』
世莉奈『全部は見てない。』
皇『そう…』
やはりというか皇だった。
飛雲『お前が直接手を下しに来るとはな…』
皇『そういう日があってもいいんじゃないかな?』
飛雲『フンッ、そんなおもちゃみたいな物でアンデッドを封印していたのか…』
皇『そうね。私はカッターナイフだけで十分。貴方みたいに大きな武器は使ったりしないよ。流石に完全に殺すことは出来ないけどね。』
飛雲『相変わらず人を不快にさせる物言いだな。』
皇に対して苛立ちを見せるフェイ。
確かに常に半笑いのような表情で淡々と話している態度はやや不快でもある。
皇『じゃあ、私達はこの辺りで引こうか。もう出てきてもいいよ。』
何か号令のようなものをかけると物陰から部下と思しきスーツ姿の人物がぞろぞろと現れる。
そして部下の内の2,3人程が床に落ちている心臓と思しき物を鉄の籠に収納しだす。
その周りには灰が散乱、人が歩くとその灰も風圧で飛び散っていく。
皇『じゃあね。飛雲ちゃんそして世莉奈ちゃん。』
皇は私達に別れを告げると廃工場を後にした。
世莉奈『行っちゃった…』
飛雲『……』
世莉奈『フェイ、あの人は…』
飛雲『皆まで言わなくてもいい。私達は一部始終を見ていないのは紛れもない事実…』
世莉奈『見てはいけない何かがあるの?』
飛雲『特に、君のような普通の人間はな。奴の戦闘を一部始終を見てしまうと魂を抜き取られる。物陰に隠れていた者達は防止の為に身を隠しているに過ぎない。』
今後は皇と遭遇してしまった際は注意をしなければならないようだ。
彼女の戦闘を見ると魂を抜き取られる……一体彼女は何者なのだろうか……?
タッタッタッ…
走ってくるような足音が聞こえてくる。その足音は間違いなくこちらへ向かってくる。
エルフリーデ『一足遅れってところか……』
走ってくる者はエルフリーデだった。
飛雲『悪いが、私ではない…私も先を越された立場だ。』
エルフリーデ『ん?』
飛雲『皇に先を越された。』
エルフリーデ『そうか…自ら殺りに来るとはな…』
エルフリーデも皇に先を越されたとわかった瞬間、不快感を顕にした。
エルフリーデ『えっと……君は…呉の……確か、まだ名前は聞いてなかったかな?』
世莉奈『世莉奈……です。以前あった時に言ったと思いますけど……』
エルフリーデ『あぁ、世莉奈ちゃんか。すまない。君は奴の戦闘を一から見てはないな?』
世莉奈『…はい。来た時にはもう既にアンデッドがやられる直前だったので…』
エルフリーデ『なら、問題はないだろう。現にこうして生きてるのも何よりの証拠だ。』
飛雲『セリ、私とコイツはアンデッドの血が通っているから良いが、君は純粋な人間だ。今後皇と遭遇した際は身を潜めてくれ。私からの心からのお願いだ。』
フェイは真剣な表情で私にそう言う。
世莉奈『わかった。フェイのお願いなら私はその通りにする。』
私が了承すると安心したような表情を見せた。
エルフリーデ『しかし、公安の奴等はアンデッドの心臓を何の為に持ち帰るのか……』
飛雲『少なくともよろしくないものに利用する為だろう…』
グリムリーパーはフェイのようにアンデッドを完全に殺す技術は無く、心臓を持ち帰り、格納することはフェイから聞いている情報。
でも、何の為にそんなことしているのかまでは聞いていないしフェイも知らないようだ。
一体何を企んでいるのだろう?
皇がアンデッドを封印(殺すことができないので)する様が初めて披露される回です。
武器は一般的なカッターナイフという何とも意外なのを武器とします。
玩具も同然な物で敵を翻弄する方が絶対強者感が伝わるだろうと思って浮かんだ発想です。




