22 リベンジデート、のはずが……?
土曜日の朝。
俺は起き上がり、ベッドから出た。
Tシャツとパンイチなので、少し肌寒い。
まず、カーテンを開ける。
白い朝日が部屋に差し込む。
俺は大きく欠伸をして、インスタントコーヒーをマグカップに淹れた。
ローテーブルでコーヒーを飲む。
「はあ。休日も食事出てくればいいのに……」
俺は小さく愚痴をこぼした。
コーヒーを飲みながらコンビニで適当に調達したフレンチトーストを食べ、朝食を済ませる。
「日向さんとの待ち合わせは、14時だから……」
午前中は空いてるな。
用事はないけど、外に出るか。
俺はスッと立ち上がり、背伸びをした。
「着替え……」
クローゼットを開ける。
Tシャツしかない。
「あ?」
俺、何着て出かければいいの?
『御影大輔は、休日も制服を着て出かけていたぞ』
「わあ!!?」
突然のノクスの声の声に、俺は思わず叫んだ。
「御影は服と言えるものすら、一着も持ってなかったのか!?」
俺はノクスに尋ねる。
『そうみたいだな。少なくとも、俺が見てる時は、制服姿だった』
俺は頭を抱え、ガクリと項垂れた。
「……ノクス」
『なんだ』
俺は大きく息を吸う。
「服を、買いに行く。俺に似合うオシャレなやつ、教えて!」
『は?』
ノクスは間抜けな声を返した。
「『は?』って何だよ。ノクスの言うことに従えば――」
『やめてくれ。俺にセンスを求めるな』
俺は口を尖らせて、制服に袖を通した。
近所のショッピングモールの2F。
真っ白い照明の、オシャレなセレクトショップが並んでいる。
俺は歩きながら、目だけを滑らせて店舗を眺めていた。
前世で馴染みがあったような、ファストファッション店が見当たらない。
というか、そもそもショップの価格帯が分からない。
「なあノクス」
『何』
「ノクスはどこで服揃える? ……それとも、ノクスも裸族?」
『……突き当たりの店がいいと思う』
ノクスは雑に答えた。
緑色のロゴマークの、大きい店舗が目に入る。
店内の雰囲気が、馴染みのファストファッション店に近い。
俺はまっすぐその店に向かうと、目の前に見覚えのある姿が飛び込んだ。
銀色のストレートヘアに、細見の身体。
ジト目がこっちを見ている。
「……あ」
「御影くん」
俺は思わず立ち止まる。
目の前の白金さんも、立ち止まった。
白金さんは、ゆとりのある白いシャツと、濃紺のワイドパンツを履いていた。
教室にいる時よりも、少し気の抜けたような雰囲気に見える。
白金さんのジト目がきゅっと細まる。
「なんで休日なのに制服?」
「……俺、服、持ってなくて」
「え?」
白金さんは心底引いた表情をした。
「マジで、Tシャツしかなくて」
「正気?」
「俺も正気を疑っ……いや、だから揃えようと思ってて……」
俺の声はだんだんと小さくなっていく。
沈黙。
気まずい。
俺は少しだけ、白金さんから視線を逸らした。
「今日、その……人と会う予定があってさ」
俺は恐る恐る白金さんに視線を向け直す。
白金さんは、しばらく俺を睨むように見た後、ぼそりと答えた。
「……もしかして、日向さん?」
俺の鼓動が大きく鳴った。
「あ、あえ、なんで、知って、るの?」
白金さんの目が一瞬開き、その後、深くため息を吐いた。
「昨日の昼休み、なんか話してたように見えたから。……それに、最近、あの子と仲いいよね?」
俺は頷くことができず、固まった。
白金さんは「むぅ」と息を吐いて、俺を見て続ける。
「で、その恰好で彼女と会うわけにはいかないから……ってこと?」
「……そうです」
俺が情けない声で答える。
白金さんは、俺の頭の上から足先までをじっと見つめた。
そうだ。
「あのさ、白金さん」
俺は目の前で手を合わせた。
「いい感じの服、見繕ってくれない? ……日向さんを、がっかりさせたくなくて」
白金さんは、深いため息を吐いた。
「……いいけど、さ」
白金さんは、俺から目を逸らしながら答えた。
「買い物終わったら……アイス奢ってよ」
白金さんはぼそりと付け加え、ちらりと俺を見た。




