私の初めての出会い②~私、そんな本求めておりません!~
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お待たせしました!遂に出てきます。
よろしくお願いします!
~図書館2階
私は、図書館カウンターで司書さんに案内された通り、中央にある大きな螺旋階段を登って2階にまいりました。
登り切ったところで目の前の廊下の先に扉が見えたのです。
周りには、ちらほら利用者がいて、備え付けのソファーで新聞を読んでいる人や、立ち読みしている人、はたまた沢山本を抱えて本を探している人などがいらっしゃいました。
私は、走りたくなる気持ちを抑えて早歩きで廊下を進み、ドアに手をかけたのです。
キィ…
古びたドアを押せば、そこは天井まで壁面びっしりの本がございました。
部屋の中央にも本棚が2列あって、奥に座り心地の良さそうなソファーが並んでおりました。
私は、まず手前から出会いの部分のみを読んでいくことにし、一番近くの壁面本棚で一冊を選び、その場で1ページ目を捲りました。
その本は、10歳前後の姫がまず登場して、隣国の王子と交流しながら最終的に結婚する話だったのです。
そこで気づいたのです。
私、出会いのみを読み進めていくと決めてまいりましたのに、結局最後まで読んでしまったことに。
これではいけないと思い、先ほどの本の隣を選んでページを捲りました。
今度は、学園で出会った男女が行事を通して交流を深め婚約するというお話でした。
そして、再び最後まで読んでしまったことに、ハッといたしました。
私は最後までやり遂げないと我慢ならない性格をしておりまして、途中で止めることなどできないのです。
それに、なぜ目が合っただけでお互いが恋に落ちるのかも理解できず、全く参考になりません。
これでは、再び出会えなくてお嬢様に叱られてしまいます。
焦って次の本を捲りますが、再び幼馴染の展開がはじまり、参考にならず途中で止めればいいものの最後まで読んでしまいました。
時計を確認すると既に4時間も経っており、この計算でいくとすぐに休みは終わってしまいます。
これでは全く時間が足りません。
指先が冷たくなり、現実に本を持つ手に力が入りました。
かといって次の戦略を立てようにも他に参考となる情報を収集できる術は思いつかなくて、その場に座り込みました。
やはり、私はダメな侍女なのでしょうか。
お嬢様の安寧な日々をお支えすることが私の仕事なのに、わざわざお休みまでいただいて使命を果たせないなんて、もうお嬢様は私をクビにするのでしょうか。
どんどん浮かび上がってくる悪い想像はとめどなく溢れてきて、動き出さないと時間がないのに行動に移せません。
このまま図書館で情報収集をするべきか、ほかの手を考えるべきか、誰に相談するべきか。
様々な疑問がポンポン上がってくるけれども、答えを出せなくて…。
天井を見上げました。
「お姉さん、その本よりこっちの方がいいんじゃない?」
ふいに後ろから男性が私に声をかけてくださいました。
ここが公共の図書館であることを急に思い出し、胸に手を当てて勢いよく立ち上がりました。
私としたことが、はしたないことをしてしまいました。
普段ならこんなミスをいたしませんのに、私は大きく息を吐きました。
そして、スカートの塵を払って男性の方へ振り返りました。
そこには、黒い髪でボサボサな上に前髪で顔の半分が見えない背の高い男性が立っていました。
年齢不詳で無精ひげが生えていて、洋服は高級そうではありますがシワシワで靴も汚れていました。
その男性が一冊の本を私に差し出していたのです。
私は思わず、後退りしてひきつる顔をどうにか笑顔にし口を開きました。
「あ、あのお気持ちだけで十分です…。」
差し出された本を見ることなく断るのは申し訳ないですが、好意だったとしても明らかに不審者の見た目をしている男性から薦められた本なんて読みたくないのです。
私は丁寧にお辞儀をして、そそくさと別の本棚に移動して再び本を選び始めました。
「え?面白いと思ったんだけどな…。」
背後で心底残念そうな口調に良心が痛みますが、そもそもここは恋愛小説が収納されている部屋。
男性がいること自体どうかと思いますが、他にいい案は思い浮かびませんし、私は参考になる小説を必ず探し出して次の行動に移さなければなりませんので、本選びに集中することにいたしました。
今度の棚は、先ほどの本の棚より少しだけ本の装丁が落ち着いているように感じました。
手触りも先ほどより滑らかで、これは期待できます。
私は早速、目の前にある本を一冊取ってページを捲りました。
主人公は公爵婦人で、公爵様から冷遇されているシーンから始まりました。
冒頭のシーンだけどもこの本は参考にならない、とすぐに分かりましたが、私の最後まで読まないと気が済まない性格が邪魔をして閉じることができなくて、仕方なく読み進めてしまいました。
その本は主人公が若い護衛騎士と火遊びを楽しみ、肉欲の日々を過ごすという話で、あまりに直接的な性表現に顔が赤くなり心臓は跳ね上がって、目にじわじわ涙が溜まってまいりました。
自分が知りたくない、経験したことない世界に、読み進める手を止めたいのに止めることもできなくて、結局最後まで読んでしまいました。
本を閉じて本棚に戻した時、胸の鼓動が早くて、一度自分を落ち着かせようと胸の前に拳を握って本棚によりかかったのです。
「ね、やっぱりお姉さんそういうの求めてたんでしょ?」
本に集中していて、全く気が付かなかったのですが背後から声をかけられました。
振り返ると先ほどの男性がおりました。
目元は見えませんが、口元は笑っていて今度は3冊ほど本を差し出されました。
この時、私はありえないくらい心臓が暴れまわっておりまして、いつもならお断りしていたでしょうが、なんと本を受け取ってしまったのです。
「そんなお姉さんはこの本!おすすめだから。俺は毎日ここにいるけど感想は来週でいいから。じゃっ!」
早口で一気に喋ると、私におすすめの本を渡したことに満足したのか、さっさと部屋を出ていく男性。
勘違いさせて申し訳ないのですが、求めている本は先ほど読んでいた本ではなく、純粋に殿方と出会えるような本だったのです。
しかし、ここでも折角薦めていただけましたし…と真面目な性格が邪魔をして読むことにいたしました。
朝からこの図書館で5時間近くぶっ通しで本を読み続けたことで目が疲れてまいりましたので、本日はもうお暇しようと薦められた本3冊を片手にカウンターに足を向けました。
部屋を出て、1階に降りると閉館時間が近くなっていることもあってりカウンター前には長蛇の列ができておりました。
借りずに帰ろうかと一瞬思いましたが、もしかしたらこの本に理想の出会いが載っているかもしれないと思うと返しに行こうにも行けなくて、最後尾に並びました。
私は題名も見ずに、薦められたから本を借りるという経験は今までしたことがございませんでした。
お嬢様も恋愛小説をよく読みますので、もしかしたら面白い内容かもしれないと自分に言い聞かせて待ちました。
私の並んだ後も次々と利用客が並んでいて、行列は解消されないまま自分の番になったのでございます。
カウンターには、最初来た時に本の場所を教えてくれた司書さんがいらっしゃいました。
私は借りたい本をカウンターに置いて、女性にお願いしました。
「初めて利用するんですが、この本3冊を借りたいのですが…。」
「初めてですね?では本の後ろにある貸出カードに日付と名前を記入してください。」
司書さんは慣れた手つきで本の最後のページに挟んであるカードを取り出すと、私の目の前に3冊分差し出しました。
そこで、私は本のタイトルを知ったのです。
・淫らな奥様は騎士と朝日を見る♡
・絶倫旦那様は夜まで待てない♡
・侍女は旦那様に一晩中指導される♡
私は固まってしまいました。
しかし、後ろには何人も待っている方がいらっしゃって、早くしないと迷惑がかかってしまいます。
ここで「借りるのを止めます。」とも言えなくて、赤くなる顔を左手で押さえつつ震える手でどうにかカードに日付と名前を記入いたしました。
そんな私に司書さんは「うちの蔵書、恋愛小説が多くて人気なんです!」と、テンション高めに対応してくださいましたが、私は1秒でも早く図書館から出たかったのです。
私、そんな本求めておりません!
最後までありがとうございます。
次回も楽しみにしていただけたら嬉しいです。
よろしくお願いします。




