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乳母になりたいので子宝ベーグル片手に婚活した件について。  作者: あゆま3


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私の初めての出会い①~出会ってどこに転がっていますでしょうか?~

こんにちは。

いつもありがとうございます!

今回も楽しんでいただけたら嬉しいです。

早朝、使用人の部屋


私は鏡台の前に座っていました。

ーーまずい……非常にまずいのです。

お嬢様に一週間のお休みをいただいて、もう4日目。

この4日間、出会うどころか、ただ人の多いところをウロウロ散策していただけでした。

当然、男性から声をかけてもらえるはずもなく……

そう、成果が全く得られなかったのです。

このままではお嬢様の期待を裏切ってしまうことになります。


私は鏡台の前に座りました。

鏡に映る自分の顔から視線を逸らせませんでした。

眉間にシワを寄せ、唇を噛んだ顔。

息をするのも重く感じました。

そして私は、この数日間のことに思考を飛ばしました。


1日目 温泉街


温泉で有名な観光地であるトリティクム。

足を運ばないわけにはいかないと、足を延ばしました。

もちろん、片手には【子宝ベーグル】。

早朝より調達してきました。


ーーお嬢様も人の多いところとおっしゃっていましたし、準備も万端。これで、きっと出会えます!


温泉街の入口で足を止めました。

視線を巡らせると、人、人、人。

人で埋め尽くされていました。

家族連れやカップル、学生グループなど年齢や性別もまちまち。

足湯で顔を綻ばせている人やお饅頭を食べている人。

様々な様子が目に飛び込んできましたが、みんな一様に緩んだ顔をしていました。


私は、自分の身体に視線を下ろしました。

制服に似た分厚い生地の紺色ワンピース。

他の服も同じようなものばかりで、これしかありませんでした。

視線を前に戻すと、浴衣の人もいればふんわりしたワンピースを着ている人。

色も様々で……

それ以上一歩踏み出すのに時間がかかりました。

しかし、一歩踏み出すと沢山の方に声をかけられました。

地味なワンピースにメガネ。

髪はいつものお団子。

道を尋ねられたり、値段を聞かれたり……


--店員さんに間違われています……!!


数回声を掛けられて以降は、足を早めました。

それでも、肩を叩かれ呼ばれました。


--こ、これでは……出会いどころか、温泉にもいけないのでは……?


最後は、走っていました。

やっと目当ての建物が目に入ってきました。

入口の暖簾を通った時、気が付いたのです。


--温泉って男女別です。


そこで足が止まってしまいました。

お店の人に声を掛けられるまで、そのままでした。

もちろん、温泉でもなにもなく……

帰りも同じように店員に間違われてしまいました。

こうして、この日は出会えなかったのです。


2日目 カフェ


観光地になったことで、おしゃれなカフェが立ち並んでいました。

昨日ライラに相談したところ、おすすめされました。

カフェが立ち並ぶエリアには、若い人が詰めかけていました。

数人のグループや、カップル。

建物を覗くとカップルがケーキを食べさせあっていました。


ーー確かに、若い人が多いけれど……そんな雰囲気ではありません……


溜息が出てしまいました。

しかし、歩みを進めていると人だかりが目に飛び込んできました。

看板にはケーキの絵。

お店を覗くと、お嬢様が好きそうないちごのタルトケーキが。

軽い足取りで最後尾に並びました。

無事に購入し、鼻歌を歌って屋敷に帰りました。


客間、おやつ時


私の姿を捉えたお嬢様の視線は強く感じました。

足が怯みましたが、無視してケーキをお出ししました。

ケーキに視線を奪われたお嬢様。

空気が緩みました。


「カミラ、お休みなのに……何で?」

「人の多いカフェのエリアに行ってきたので、お嬢様お好きかなと。」

「美味しそうだけど、お休みでしょ? それとも、もう出会ったの?」

「えっと……いえ。も、申し訳ございません……」

「……カミラ、まさかその服で行ってないわよね?」


指さすお嬢様。


「これしか……ありませんので……」

「やっぱり……。」


お嬢様は椅子に身体を預けました。

わざとらしい息を吐いた後、顔だけ私に向けました。


「それで、昨日どこ行ったの?」

「昨日は……温泉街に……」

「……」

「お、お嬢様?」

「カミラ、それ本気で言ってる?」


頷きました。

空気を吐き切るような溜息をされました。


「カミラ、そんな服だめよ! もっとかわいい服着なきゃ。明日は服を買いに行きなさい。そこで服着替えて、商店街で一日過ごすの。わかった?」

「しょ、承知いたしました。」

「じゃ、行っていいから。休み、だからね?」

「はっ……はい……」


私は体を縮こまらせて部屋を出ました。


3日目 商店街


お嬢様の言う通り、商店街にやってきました。

吊り下げの洋服を販売しているお店を目指しました。

最初に目に入ったお店に足を踏み入れました。

色とりどりの洋服がある中で、吸い寄せられるように奥へ。

手にとったのは、紺色。

指先が止まりました。


--これでは、いけません。かわいい服、かわいい服……


真っ赤なワンピースを掴みました。

鏡の前で当ててみました……

首が傾きました。

この後も違う色を当てては選びを繰り返しました。

最終的になにがかわいいのか、わからなくなってしまいました……。

その時、鏡に映る店員さんと目が合いました。

口元が引きつりました。

最初に掴んだ紺色のワンピースを店員さんに差し出して、買ったのです。


--服選びさえできない私はやっぱりダメなのでしょうか……


肩を落として店の外へ出ると丁度お昼時でした。


視野を広げると、パン屋が並んでいました。

小麦の甘いパンの香りが届いてきました。

少し先にある、赤い建物のパン屋さんが目に飛び込んできました。

足を進めて、覗いてみるとお嬢様が好きそうな、くるみパン。


ーーこれはお嬢様が絶対に好きなパンです!嬉しい!


気が付くとパン屋さんのドアを開けていました。

パンの焼けるいい匂いを肺いっぱいに吸い込みました。

目の前には、拳二つ分くらいの大きさのくるみパン。

口の中で涎が溢れてきました。

私は、購入しました。

店を後にするころには、足取りは軽かったのです。

その後も商店街を回りましたが、気が付くとお嬢様が好きそうなものばかりを選んでは購入してしまいました。


4日目、使用人の部屋


私は鏡に映る自分を睨みつけました。


--私、なにもできてない……。


初日は普通にリラックスして、2日目、3日目は結局お嬢様のこと。

このままのペースでは1週間なんてすぐ終わって、またお嬢様に叱られます……

息が詰まりました。

指先を手の甲にめり込ませました。


ーー紹介もダメ。

婚活パーティーもダメ。

出会える場所すらわからない。


私は頭を抱えました。

なにも思い浮かびません。

そのうち、じんわりと涙が浮かんできました。


--お嬢様が期待してくださっているのに、これではいけません!


拳を握り、顔を上げました。

すると鏡台に映る本棚が目に入りました。


ーー恋愛の本が参考になるかもしれないのです!!


鼓動が早まりました。

しかし手元には、恋愛に関する本はありませんでした。


--そうだ!図書館。図書館に行けばいいのです!!


それからの動きは早かったのです。

勢いよく椅子から立ち上がると、カバンを掴み部屋を飛び出しました。


図書館の前


図書館はお屋敷の近くにありました。

視線を上げると、歴史を感じる建物が目の前に。


--こんなに古いと、恋愛の本、あるかしら……?

でも、行ってみないと……もう、時間がない。


手に持つ、鞄の持ち手を強く握りしめました。

一つ、大きな息を吐き、ゆっくりと足を進めたのです。


力を掛けてドアを押すと、軋んだ音がしました。

中に入ると、ひんやりとした空気が。

そして、紙とインクの香り。

壁面には、床から天井近くまで本が並んでいました。

私は何度も視線を巡らせました。


ーーここなら……ありそう。


カウンターに向かいました。

そこには、壮年の眼鏡をかけた女性が1人。

本の返却や貸出をカードに記入していました。

ちょうど利用客が途切れたようでした。


「すみません。あのっ、初めてなので……本の場所を教えていただきたいのですが。」

「初めてのご利用ですね。なんの本をお探しですか?」

「恋愛小説などがあれば…。」

「あぁ、それなら2階の奥の部屋にありますよ。当館には詳しいものがおりますので、たくさんご用意しております。きっと素敵な1冊に出会えますよ。」

「ありがとうございます!」


優しく微笑まれ、奥の方に手を差し出してくれました。

私は思わず大きな声でお礼を言ってしまいました。

手を口元にかざしました。

女性はまた微笑んで、頷いてくれました。


--たくさん本があるということは、それだけ出会いの参考になるものがあるはずなのです。


一礼して、身体を反転させました。

奥の部屋にまっすぐ進みはじめました。

完璧に使命を果たした誓いとともに。


ーーもう少しです、お嬢様。


私、乳母になれます!

最後までありがとうございます。

誰にも渡せなかったベーグルは屋敷でレオン様にあげています。

レオン様は大喜びですが、お嬢様は遠い目をしているはず笑

次回、やっとヒーローが登場ですよろしくお願いします。

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