私の始めての婚カツ~ご紹介ください!~
第2話よろしくお願いします。
ギシッ、ギシッ
「~、~、~!!!」
「~~~!!!」
微かに聞こえるお嬢様たちの愛の営みが聞こえる控えの間で、私は燃えておりました。
【お嬢様のため、乳母になる!】
その使命を達成するには、私が先に懐妊して出産しなければなりません。
まず、私の現状を確認いたします。
・31歳 独身。
この国の女性の適齢期は15~22歳とされていて、ギリギリ25歳まではご結婚される方がおられます。
この時期を過ぎると、結婚すること事態が珍しく大方生涯独身を貫きます。
私の31歳という年齢は完全に後者にあたります。
・彼氏 なし
次に彼氏の存在でございます。
私、現在お付き合いしております殿方はおりません。
お嬢様に一生懸命仕えておりましたら、お休みも心配になりついつい出勤しておりましたら、恋をする時間などないのでございます。
若い頃はなぜかしきりに休みを聞いてくる殿方はおりましたけれども、お嬢様に忙しいのでそんな時間は皆無と全てお断りさせていただきました。
今は業務連絡しか殿方とはお話しません。
・お付き合いした人数 0人
そして最後に過去にお付き合いした殿方の人数でございます。
18歳の頃一度だけ同僚の紹介で騎士様とデートしことがございます。
しかし、すぐにホテルにいこうと言われ、断ると強引に連れ込まれそうになったことがございます。
その時はお嬢様をお守りするために習った体術で投げ飛ばし、逃げ帰って参りました。
ここだけの話でございますが、それからは声の大きい体の大きな男性がどうも苦手でございます。
つまりまずはじめに、私と結婚していただける殿方を探すところから始めないとなりません。
以上、現状から考察した結果、使命達成のハードルが限りなく高く、そして不可能に近いことが分かりました…。
しかしながら、可愛い可愛いお嬢様のため何としてでも乳母にならなければなりません。
逆にどのような殿方が適任かを考えてまいりましょう。
条件に合う殿方は…。
・仕事に理解があること。
結婚したとたん家に入ってほしいという男性は論外でございます。
なお、侍女という仕事は時間の拘束が長いですのでそこもご理解いただかないといけません。
結婚してもサラお嬢様のお側で仕えすることが私の使命でございますので、ここは重要でございます。
・健康体であること。
やはり、子供を授からなくてはなりませんのでお体が健康である必要がございます。
3食しっかり食べ、適度に運動される様な方がいいと思われます。
・生活能力があること。
私はお嬢様が優先ですので、家事全般を私一人が担った上でお嬢様にお仕えすることは限りなく不可能に近いと考えられます。
ある程度の生活能力のある方でしたら、協力し合いながら仕事に出れますので、ここも譲れない条件でございます。
これさえ条件に合えば、容姿や収入は問いません。
苦手な男性もお嬢様のためならば受けて立ちます。
ですので、案外見つかるかもしれません。
そうと決まれば、まず隣で椅子に座り込み、頭を抱えて独り言を唱えている執事のロイ様にどなたかご紹介いただけないか聞いてみることにいたしました。
「あぁ、領主様になんとご説明差し上げれば…。
今すぐ早馬を走らせましょうか?
いや、そんなことをすれば領主様になんと言われることか…!」
「ロン様」
「それに、ベック商会になんとお詫び申し上げれば…侍女殿にお願いして…。
いやそれではいけない。」
「ロン様?」
「主の不始末をそんな方法では…。
手紙?いや、直接…?あぁ…どうすれば…」
「ロン様!!!!」
失礼いたしました。
ロン様が思い詰めてしまい、私の声が届かないご様子でしたので私としたことが大きい声を出してしまいました。
うっかり、お嬢様のお邪魔になるところでした。
ロン様は私の大きい声にやっとこちらに顔を向けてくだりました。
「侍女殿、いかがなされましたか?
お嬢様に主がとんだご無礼を…」
「ご挨拶遅れました。
私、カミラと申します。ロン様。
その話は後で結構でございます。
ところで、私、この家の乳母になりたいと考えております。
どなたか結婚していただける殿方はいらっしゃらないですか?」
ロン様の髪は乱れ、思い詰めた表情で椅子から立ち上がり、私に謝罪をはじめましたが、再び長くなりそうでしたので、お話の途中で失礼ですが私は用件を一気に申し上げました。
「………え?
結婚相手ですか…?
女性にこんなことを聞くことは失礼と存じますがご年齢をお聞きしても?」
一瞬時が止まり目が点になられたロン様。
状況が飲み込めないのでしょう、声も裏返り恐る恐る私に年齢を聞いてまいりました。
「31歳でございます。」
「31?!」
ロイ様は驚きのあまり目を白黒させながら、椅子から勢い良く立ち上がり、頭を抱え考え込まれてしまいました。
再びブツブツ独り言をしばらく呟いておりました。
そしてやっと、意を決したように私に向き合いました。
「申し訳ございません。
私の力不足でご紹介できるような方はおりません。」
申し訳なさそうに腰を折って私に謝罪するロン様。
やはり31歳という年齢がひっかかってしまうのでしょう。
しかしながらそれは想定内でございます。
私が多くを望まないと申しましたらきっと2人や3人は紹介していただけるでしょう!
「いいえ、条件に合う殿方がいらっしゃれば紹介して欲しいのです。」
「ほぅ、それはどんな条件かお聞かせ願えますか?」
きっと脳裏に数名の殿方が浮かび上がったのでしょう!
ロン様は目を細め、固唾を飲んでおりました。
「もちろんでございます。
条件は3つございます。
1つ目、仕事に理解があること。
2つ目、健康体であること。
そして最後に、生活能力があること。
以上、3つでございます。
それさえ条件が合えば、容姿や年齢、収入など問いません。
どなたかいらっしゃらないですか?」
「…。」
ロン様は目を見開いた後、頭を抱えうんうん唸り始めてしまわれました。
無理なお願いとは承知の上、しかしながら乳母になるという使命を果たすには、どうしても殿方が必要なのです。
「…。いるには、いますが…。
女房に逃げられた60代の下男か、究極に酒癖の悪い庭師、女ぐせの悪い騎士…この辺りしか…。
いやいや!そんな者をベック商会の侍女殿に紹介できるはずがありません。
レオン様の顔に泥を塗ろうとするなんて、私としたことが…!
やはり、私の力不足。
申し訳ございません!!」
ロン様は遂に許容範囲を越えてしまわれたのでしょう。
目に涙を浮かべ、手を大きく振り力強くお断りされました。
私としては、先ほど候補に上がった殿方とお会いするだけでも良かったのです。
しかし、その後も何度も何度もお願い申し上げましたが、頑なに首を縦に振っていただけませんでした。
困りました。
おそらくお嬢様とレオン様は、"子宝ベーグル"を召し上がられたはず。
あの噂が本当ならば、確実にお嬢様は本日懐妊されてしまわれます。
そんな状況の中では、私は今からでも懐妊しないと乳母にはなれないのです。
もはや、一刻の猶予もございません。
私はいたてたってもいられなくて、飛び出したい衝動を押さえつつ、ぐっと拳を握ったのでございます。
そんな時、私は閃いたのでございます。
ロン様がご紹介いただけないのならば、他の方にご紹介いただいたらよろしいのでございます!
館の主であるレオン様が人払いをしましたので、控えの間におりますのは、私、ロン様、そしてもう一人、女性のメイドが控えておりました。
私はメイドの方に勢い良く振り返りました。
失礼ながら頭のてっぺんから足の先までじぃーっと拝見させていただいきました。
年は私より少し若いくらいで、髪は肩の上あたりで切りそろえ、背は低く、少しだけぽっちゃりておられました。顔はそばかすがあり、かわいらしい印象のメイドでした。
私の視線にメイドはビクビクと体を震わせ驚いておりました。
おかしいですわね。私、拝見しただけですのに。
「私、サラお嬢様の侍女でカミラと申します。
あなた、お名前は?」
更に私が声をかけたことに、メイドは涙ぐみなから勢い良く90度に上体を倒されました。
「ら、ライラと申します。
ライラとお呼びください、カミラ様。
よろしくお願いいたします。」
声を震わせながら、なぜか緊張したご様子。
私、お名前を聞いただけですのに、なぜでしょうか?
「こちらこそよろしくお願いしますね、ライラ。
ところで…、急なお願いで申し訳ないのですが、私に誰か今すぐご紹介して頂けないかしら。」
「!!!」
ライラはロン様同様に目を白黒させながら慌てはじめました。
そのうち、過呼吸になるんじゃないかと思うくらい息を吸うようになり、私は咄嗟に背中に手をやりました。
「ライラ、落ち着いて。息をはきなさい。」
私はライラの背中を優しく擦りますが、どんどん顔色が悪くなってまいりました。
「カミラ様!私が交代いたします!」
「お願い致します。」
緊急事態ですし、執事のロン様が交代を申し出ましたのでお願いすることにいたしました。
「ライラ、大丈夫だ。ゆっくりゆっくり…」
「ふぅ、ふぅ…あれ?もう大丈夫です!」
なんということでしょう。ロン様に変わったとたんすぐに落ち着いた様子のライラ。
さすが領主一族の執事ロン様でいらっしゃいます。
「カミラ様、紹介もよろしいですがこのトリティクムで出会うかもしれませんよ…?」
ロン様の言葉にはっといたしました。
人からの紹介が一番早く使命を果たせると思い込んでおりましたが、出会う可能性もございましたね。
よくお嬢様がお読みになる恋愛小説では運命の出会いなどというタイトルの本がたくさんございますし。
しかし、どんな時に出会うかなんて検討もつきません。
そして、また私は閃いたのです。
参考に目の前のライラに聞いていてみたらいいのではないかと!
同じ女性でございますし。
「ライラ、失礼ですけれども、あなたはご結婚されているの?」
「はい。既婚者です…。」
少し失礼な質問だったかもしれませんが、ライラの顔色が再び青ざめてまいりました。
「カミラ様、ライラになにを…」
「ロン様は黙っていてください。大事なお話ですので。」
「はっはいぃ!!」
重要なお話ですので少し強く言い過ぎたのかもしれません。
ロン様は固まってしまい、ライラは涙ぐんでしまわれました。
もしや、ライラは夫を取られると思っていらっしゃるのでしょうか。
すぐに訂正しないといけないのです。
「私は、あなた夫婦の出会いを知りたいのです。教えていただけますか?」
「…コンカツパーティーです。」
「コンカツパーティー?」
再びビクッとライラは驚いた後に、聞いたこともない答えが返ってまいりました。
そのコンカツパーティーにいけば結婚できるのならば、すぐにでも参加したのでございます。
私でも参加できるパーティーなのでしょうか?
「それはどんなパーティーですの?私、存じ上げなくて…。」
「!!結婚したい男女が集まって、お話ししたりゲームをしたりしてお相手を探すパーティーのことです…。」
「まぁ!」
確かに、結婚したい男女が集まるのならば成婚できる確率は上がるのでございます。
私もそれに参加できれば、お相手ができて乳母になれるかもしれないのです。
使命が達成できそうな道筋が立ち、興奮のあまり私はライラに掴みかかってしまいました。
「ライラ、それはいつ開催されますの?どうやって参加できますの?」
「あぁ、えっと…」
ライラはしどろもどろに教えていただけたので、要約いたしますと、役場の掲示板にパーティーの案内チラシがあるそうで、条件を確認してよければ役場に参加の申込をするそうなのです。
週末に開催されることが多く、領主の発案で最近始まったイベントらしいのです。
私は、呼び出しのベルが鳴るまでライラに根ほり葉ほり馴れ初めを聞き、婚活パーティーでの戦略を立てつつまだ見ぬ結婚相手を想像したのです。
最後までありがとうございました。
ガッツのある女性大好きです笑




