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乳母になりたいので子宝ベーグル片手に婚活した件について。  作者: あゆま3


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16/28

私のはじめての紹介~え?本当に紹介してくださるのですか?!~

食堂、お昼。


私は、ライラと遅い昼食を取っていました。

目の前にはつやつやのブランパン。


ーー観光地になる前は【小麦だけの街】と言われていただけに、パンが本当に美味しい!


手で二つに割ると湯気が立っていました。

一口齧ると、外はカリっと中はふわふわ。

口の中に小麦の素朴な香りが広がりました。

思わず、目尻が下がりました。


「カミラさんって、本当にパン好きですよね~!」


隣に座るライラもパンを口に運んでいました。


「す、すみません! はしたなかったですね……」

「いいじゃないですか! 私はそっちのほうが素敵だと思います!」


笑いながら咀嚼していました。

私は、パンを皿に置いて、息を吐きました。


ーーほんと新鮮。いつも後輩には、顔色ばかり見られていたから……


「あの~、カミラさん……ずっと聞きたかったんですけど……」

「な、なに? ライラ。どうしたのです?」


トマトをフォークで何度も突いていました。


「あの……まだ、乳母を諦めてないですよね?」


反応が遅れてしまいました。

顔から表情が抜け落ちていく感覚がしました。


「はい。乳母になりたいです。」


冷たく言い放ちました。


「よかった!」


ライラは顔を綻ばせました。


「え?」

「あのっ……実は……いとこのお兄さんに会ってみて欲しくて……」

「はぁ……」

「お兄さんは、今年33なんです。親を亡くして兄弟を1人で育ててたら結婚のタイミングを逃しちゃって。いい人なんですけど……カミラさんにどうかなって……」


ライラは上目遣いでこちらを伺いました。

私は、瞬きをゆっくりしました。


ーー怖い。でも、ジグルド様も慣れないといけないって言ってましたし……


手元のパンが潰れました。


「……少しだけなら……いけると思います。」

「本当ですか!? でも、無理してないですか?」

「ありがとう。大丈夫。」


私は口角を上げました。

ライラも続きました。


「ありがとうございます!! 私、似合いだと思うんです!! 兄さん優しいし、ぴったりだなって思ってて!」

「ふふふ。ありがとう。次の休みとかどうかしら…?」

「了解しました! お兄さんに予定、確認しときますね!!」


それから、ライラはいとこのお兄さんの話を身振り手振りで話してくれました。

私は、時折質問を挟みながら聞いたのです。


ーー話を聞くかぎり、とても優しそうな人。


胸が高鳴りました。


ーーあのことは……きっと大丈夫です。そう、きっと。


サラお嬢様の部屋


座学が終わり、お嬢様と先生にお茶の用意をしました。

お茶はお嬢様が東の果ての国より輸入した緑茶でした。

今日の先生は騎士団の軍医であるウィル様でした。

ウィル様は中性的な顔立ちの男性でした。

話し方は女性のようで個性的でした。


「うわ~、今日は緑茶なのね~!」

「先生知っているんですか?」

「知ってるよ! 薬学で知ったくらいだけど。」

「へぇ~! なんでも知ってるんですね! 私、このお茶大好きなんです!」


お嬢様は終始にこやかでした。

私はお菓子のお団子をウィル様に差し出しました。

次にお嬢様に差し出そうとした時、お嬢様の目がウィル様に向きました。


「あ、先生! カミラにいい人いないですか? 騎士団の人以外で。」

「うぅ~ん……騎士団以外かぁ……騎士団ならたくさんいるんだけどね? 急にどうしたの?」

「残念! カミラが結婚したいみたいで、相手を探してるんですけど……でも、筋肉バカ嫌いみたいなんで、いないですね。」

「お、お嬢様!! お口が過ぎますよ!!」


私は大きな声で注意してしまいました。


「あーまぁ、誰でも好みはあるものよ~。」

「いえ、そういうわけでは……」

「一生を添い遂げる人よ?好みは大事!そうね……ちょっと待ってくれる?」

「先生! 乳母になってもらわないと困るから、最速でお願いします!」

「まあ! そうだったのね。」

「なっ!! お嬢様! そんなこと言わなくてもよろしいのです!! 今度ライラに紹介してもらうので!」


失言に気づいて手で口を押えました。

お嬢様は、ニヤニヤした顔を私に向けました。


「へ~、私聞いてないんだけど? で、どんな人なの?」

「僕も聞きたい! 恋バナ楽しいよね~!!」


身を乗り出す二人。

後ずさりしますが、それ以上後ずさりしそうな足を踏ん張りました。


「33歳のレンガ職人さんみたいです。両親を亡くされて、兄弟を働いて育て上げて、今は1人みたいです。」

「きゃー! いいじゃない!!」

「確かに! でも肝心なのは、顔よね?」

「あー……カミラいつ会うの?」

「次のお休みに会えるか、聞いてもらっています。」

「初デートね! カミラは私が可愛くするから!!」

「あ、いえ、そんな!」

「遠慮しないで! 目一杯かわいくするから!」

「お嬢様……!」


お嬢様が拳を握って宣言されました。

私は、気が付いたら緩んだ顔になっておりました。


ーーこれだけ応援されてるんですから、頑張らないと!!


その後、お嬢様とウィル様がデートに着る服を決めてくださいました。

着せ替え人形のように何度も何度も着替えて、やっと決まったのです。


夕方、ジグルドの屋敷


私は仕事が終わると、すぐにジグルド様の屋敷に出かけました。

足取りは軽く、風が背中を押してくれているようでした。

魔法の門も、スキップするように通りました。

そのままお屋敷の前まで進みました。

ドアノブに手を掛けようとしたその時、ドアが勝手に開いたのです。

私は、動けませんでした。

ドアが開くと、そこにはジグルド様が立っていました。


「いらっしゃい。今日は来る日じゃないよね?」


口元は弧を描いていました。


「ジグルド様! 私、男性を紹介してもらうことになりました!」


締まりのない顔で答えました。


ーーきっと褒めてくださるはず!


しかし、ジグルド様は何も言いませんでした。

いつもニヤついている口元が、すっと一文字に引き結ばれました。


ーーえ? なんで?


しばらく二人の間で沈黙が流れました。


「あの、お相手は、同僚の親族でして……とてもいい人みたいです。そ、それで……今度の休みに会えるかもしれないんです!」

「で?」

「え? えっと……本の片付け手伝えないかもしれません。」

「……」


息がしづらくなりました。

私は、手を擦り合わせました。


「その男の子を産むの?」


ジグルド様の声は氷のように冷たかったのです。


ーーえ? なんで? 褒めてくれると思ってましたのに……


「ま……まだ会ってもいないので、わかりません……」

「そんな気持ちで会うの?」

「で、でも」

「カミラわかってる?」

「え?」

「乳母になるんでしょ? だったら、すぐに結婚して、その男と寝なきゃいけないんだよ?」

「……」


なにも、言えませんでした。


ーーすぐ結婚して、寝るなんて……できないかもしれない。


私は奥歯を噛みしめました。

ジグルド様は私の腕を掴み、突然引き寄せました。

私は引き寄せられるがまま、ジグルド様に近づき……

唇が重なったのです。


「んんっ!」


一瞬のことで避けられませんでした。


「いやっ!」


触れた後、片手を胸に突き出したのです。

唇が離れました。

1歩退いた後、腕を振り払って逃げたのです。

屋敷に戻る道中、唇を袖で拭いました。

口紅が付いてしまうことも構わず、何度も何度も……

そのうち、唇がヒリヒリと痛み始めました。

頬には涙が伝って止まりませんでした。


ーーこんなことになるなら……言わなきゃ良かった……


胸が締め付けられました。

しかし、私にはなぜそうなるのか、分からなかったのです。

最後までありがとうございます!

次回、デート行きますよ!

お楽しみに。


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