私の初めてわかるライン~そっそんなに近づかないでください…~
いつもありがとうございます!
いま新幹線で書いてます笑
サクサク進めますよー!
ジグルドの屋敷前、夕方。
「いつまでそこで立ってるの?」
私は声のする方へ顔を上げました。
そこには、ジグルド様が立っていました。
ーーさっきまで、誰もいなかったはず……
腕を胸の前で交差し、身を固くしました。
そして、一歩後ろに退いたのです。
ーーいけない! ジグルド様なのに……怖い……
一つ身震いしました。
元来た道を戻りそうになる足を止めました。
ーー用事を済ませたら、早く帰ります。
夕日が辺りを橙に染めていました。
私は、長い息を吐いた後に、口を開いたのです。
「昨日のお礼を言っていなかったので……改めてお礼にと……」
「そんなの、気にしなくていいのに。」
「いえいえ! 助けていただいたのに……ありがとうございました。」
私は頭を下げました。
地面に映る自分の影を見つめました。
「どういたしまして。頭を上げて?」
頭を上げました。
一歩退きました。
「あと、本もありがとうございます。」
顔を見ることができずに、視線は下げたままでした。
「……」
しばらく、二人は動きませんでした。
「カミラ、そんなんじゃ、乳母になれないよ? 赤ちゃんってどうやってできるか、知ってる?」
「っ……」
身体が震えました。
ーーなんで、そんなこと……でも、逃げられない……
私は一歩も動けませんでした。
「カミラ、練習しよう。」
「練習……?」
顔を上げたその時、抱きしめられたのです。
突然のことに反応できませんでした。
私は、目を強く瞑り、身を固くしました。
触れたところから体温が伝わってきました。
ーー……あったかい。
微かに香る男性のムスクが鼻をくすぐり、体の力が抜けていきました。
「そうそう、上手じゃん。」
頭上から弾む声が聞こえました。
しかし、今度は心臓が暴れだしたのです。
顔が熱くなりました。
ーーだめ、これは練習! 赤くなっちゃダメ!! ジグルド様が困っちゃう!
私は大きく息を吐きました。
「離してください。」
冷たい言い方になってしまいました。
自分の声に、身体が硬直してしまいました。
「はははは! カミラは抱きしめられただけで、そうなるのか。そうかそうか。」
ジグルド様はしばらくして、私を離してくださいました。
私は、2歩後ろに下がりました。
ジグルド様の口元は弧を描いていました。
私は一気に頭に血が上ったのです。
「人が必死ですのに!! 失礼な!」
「怒らないでよ。これから慣れたらいいんじゃない?」
「む、無理です……慣れたくありません…。」
「慣れないと! その先のこと、できないよ?」
「……」
「カミラは知ってるんだよね? コウノトリが運んでくるんじゃないんだよ?」
「……知っています。」
「そうだよね。あの本読んでたもんね。」
「……」
ーー現実は厳しいです……子作りか……
ふいにジグルド様が一歩近づいてきたのです。
それに合わせて私も下がったのです。
再びジグルド様が近づいてきました。
私も同じように下がったのです。
「……」
「……」
「なにもしないよ?」
「いえ……」
私の視界が滲んできて、首を勢いよく振ります。
言葉も出せませんでした。
「ふふっ、いじめすぎたね。ごめんごめん。中入ってく?」
ジグルド様が親指でお屋敷を指さしながら、聞いてきました。
ーー本当に?
ジグルド様の肩が揺れていました。
思わず顔を歪めてしまいました。
「なにもしないよ。」
「……」
「信用ないな! あ、そうだ! また本貸してあげるよ? 今度はカミラが選ぶ?」
ーー自分で選ぶならいいか。
「では、ちょっとだけ。」
「暗くなっても、俺が送ってくからじっくり選んで。」
「いいえ。一人で帰りますので、結構です。」
「そんなこと言わずに……」
ジグルド様の言葉は続いていましたが、聞きませんでした。
私は扉の前まで進むと、勢いよく開け放ちました。
一瞬、息をするのを忘れてしまいました。
目の前に広がるのは、本、本、本の山。
仰け反ってしまいました。
ーーあれ? 私、お屋敷を間違えた?
「……」
「あー、ちょっとだけ、整理整頓苦手なんだよね。」
「……」
私は、顔を見ました。逸らされました。
鼻にシワが寄りました。
「もしかして、奥までこの状態ですか?」
「あー、奥はもっと……かな?」
「……」
言葉が出ませんでした。
ーーわからない、こんな立派なお屋敷ですのに……
頭痛がしました。
こめかみを指先で押さえました。
「……生活できてます?」
「辛うじて?」
「……」
ーーできて、ませんね。絶対。
「片付けを手伝わせていただきます…。」
気が付けば、口が勝手に動いていました。
ハッとなって、口を押さえました。
ジグルド様は、手を大きく広げておりました。
「ありがとう! カミラなら、そう言ってくれると思った!!」
そのままジグルド様は私に寄ってきたのです。
私はとっさに横に避けたのです。
ジグルド様は透かしを食らい、口がへの字になりました。
「……」
「……」
「……なんで?」
「さぁ?」
顔を背けました。
「カミラ、さっきも言ったけど、このくらいは慣れよう。」
目を伏せました。
「おいおい……」
「そう言ってたらお婆ちゃんになっちゃうよ! ほらっ!」
突然腕を掴まれ、引き寄せられました。
私は踏ん張りましたが、ジグルド様に抱き寄せられました。
肩が鼻に当たって痛みが走りました。
「いやー!!!」
「ははは! 嫌じゃない、嫌じゃない。」
しばらくジグルド様に抱きつかれました。
「本当に本当に止めてください!」
「いいじゃないか! ちょっとくらい。減るもんじゃないし。」
「減るので!」
「減らないでしょ?」
「精神がすり減ります!」
「……うまいな。」
腕が緩んだところで、離れました。
私は我が身を抱きました。
「そんなに嫌?」
「……」
「まーいいや、今度いつ来てくれる?」
「え?」
「片付け!」
「……休みを確認します。」
「頼んだよ!」
外は日が落ちてしまいました。
結局ジグルド様に送ってもらうことになってしまったのです。
最後までありがとうございました。
ベーグルもぐもぐしながら書きました!笑
めっちゃ好きな話になってテンション上がりました笑
ベーグル最高!
最後までありがとうございました。
また次回も楽しいお話をお届けできるよう、頑張ります!笑




