私の初めてわかるライン~そっそんなに近づかないでください…~
いつもありがとうございます!
いま新幹線で書いてます笑
サクサク進めますよー!
~ジグルドの屋敷前、夕方。
「いつまでそこで立ってるの?」
声のする方へ顔を上げますと、先ほどまではいなかったはずですのに、ジグルド様が立っていました。
顔はこわばり、思わず一歩下がってしまったのです。
やはり、心の奥底では男性を恐れているのでしょう。
相変わらず顔の半分が隠れておりますので、なお怖く感じるのかもしれません。
今日はライラが気を遣って、なるべく男性と会わないよう配慮してくださっていたので、気が付かなかったのです。
これでは、使命を果たすどころか日常生活に支障をきたすでしょう。
しかしながらせっかくここまで来たのです。
せめて目的は果たさないと帰れないのです。
ゆっくり歩いてきてしまったため、夕日のだいぶ沈んでまいりました。
もう時間がございません。
私は覚悟を決めて、静かに口を開いたのです。
「昨日のお礼を…申し上げたくて…。あと、本もありがとうございます…。」
ジグルド様の顔を見ることができずに地面に目をやりました。
「カミラ。それじゃ、乳母になれないよ?赤ちゃんってどうやってできるか、知ってる?」
「っ…。」
一番痛いところをえぐられたのでございます。
頭では分かっております。
分かっておりますけれど、体が震え始めました。
私はジグルド様にいじめられに来たのでしょうか。
ただ、お礼を言って本を返すだけ。
それだけですのに、なぜそんなことを言われなくてはいけないのでしょう。
走って逃げるべきですのに、足が重たくて一歩も動かせないのです。
「カミラ、練習しよう。」
「練習…?」
ジグルド様の言葉に首をかしげながら顔を上げたその時、抱きしめられたのです。
突然のことで避けられなかったのです。
男性に抱きしめられるなど、幼少期の父親以来なのでございます。
昨夜はライラに抱きしめられて、落ち着きを取り戻しましたが、ジグルド様は男性。
目を強く瞑り、身を固くいたしました。
しかし、触れたところが温かくて…。
大きなジグルド様に包まれているようで…。
だんだんと心がほどけていくようでした。
微かに香る男性のムスクが鼻をくすぐり、体の力が抜けていきます。
「そうそう、上手じゃん。」
ジグルド様が頭上で私を褒めてくださいました。
しかし、今度は心臓が暴れだしたのです。
一気に体温が上がる感覚がしました。
ジグルド様は練習に付き合って、抱きしめてくださっているのです。
私がこのようになってはいけないのです。
ジグルド様はおそらく私よりだいぶ年下なのです。
顔は見えなくても、雰囲気や口調からそう思いました。
私はもう31歳。
地味で可愛くもないうえに年増の女にときめかれても、ジグルド様は困るでしょう。
落ち着かなければ、ジグルド様に申し訳ないのです。
私は大きく息を吐きました。
「離してください。」
冷静にお伝えしたかっただけですのに、思いの外冷たい言い方になってしまったのです。
訂正したかったのですが、訂正したところでどう訂正していいのか分からず、固まってしまったのです。
「はははは!カミラは抱きしめられただけで、そうなるのか。そうかそうか。」
ジグルド様はようやく私を離してくださいました。
そして、私は距離を取るために2歩後ろに下がりました。
私が必死に考えておりますのに、ジグルド様はなんだか面白そうなのです。
一気に頭に血が上ったのです。
「人が必死ですのに…失礼な!」
「怒らないでよ。これから慣れたらいいんじゃない?」
「慣れたくありません…。」
「慣れないと赤ちゃんできるようなこと、できないよ?」
「…。」
現実は厳しいのです。
抱きしめられるだけで固まってしまう。
それなのに、早く乳母になるために子供を作らないといけない。
ジグルド様が練習に付き合ってくださっても、この有り様。
限りなく難しいのです。
ふいにジグルド様が一歩近づいてきたのです。
それに合わせて私は一歩下がったのです。
再びジグルド様が近づいてきました。
私も同じように下がったのです。
「なにもしないよ?」
私は涙目になって、首を勢いよく振ります。
言葉も出せないなんて子供のようなのです。
しかし、これ以上近づかれたくないのです。
「ふふっ、いじめすぎたね。ごめんごめん。中入ってく?」
ジグルド様が親指でお屋敷を指さしながら、聞いてまいりました。
本当になにもしないのか心配なのです。
私はそれが顔に出ていたのでしょう。
ジグルド様は笑いを堪えていたのです。
思わず顔を歪めてしまいました。
善意で私に協力してくださっているのにです。
「なにもしないよ。また本貸してあげるよ?今度はカミラが選ぶ?」
ジグルド様の本のチョイスは私の求めているものとは限らないのです。
過去にお薦めされました本も、濃厚な男女関係がメインの話でしたし、前回も絵本と雑誌で乳母になることとなんの関係があるのか理解に苦しみます。
「では、ちょっとだけ。」
「暗くなっても、俺が送ってくから充分に選んで。」
「いいえ、一人で帰りますので結構です。」
「そんなこと言わずに…。」
ジグルド様がなにやら言っていましたが、私はさっさと玄関の扉を開けました。
先日整理したばかりですので、玄関は散らかっていないはず。
私は扉を勢いよく開けました。
バン!
一瞬、息をするのを忘れてしまいました。
先日整理整頓したジグルド様のお屋敷ですよね?
他のお屋敷に私は迷ってしまったのでしょうか。
目の前に広がるのは、本、本、本の山。
「…。」
「整理整頓が苦手でね…。」
ジグルド様に目を逸らされました。
これは、苦手というレベルではございません。
もう、これは本を読みながら、その辺の床にポイポイ置いたであろうことが想像できます。
なんの仕事をしているのかはわかりませんが、さすがにこれはお屋敷も本も泣いてしまいます。
「これ、もしかして奥までですか?」
「あー、奥はもっと…かな?」
「…。生活できてます?」
「辛うじて?」
なぜ疑問に疑問を返してくるのでしょう。
私は頭痛がしたのです。
私が本を選ぶにしても、この雑然とした中から参考になる本を選ぶのは至難の技です。
「片付けを手伝わせていただきます…。」
ジグルド様のことなんて、放っといて図書館で選べばいいですのに、気がつけばそう口から出ていたのです。
はっとなって、口を押さえますが、ジグルド様は手を大きく広げ口を大きく開けておりました。
「ありがとう!カミラならそう言ってくれると思った!!」
そのまま抱きつかれそうな勢いでしたので、私はとっさに避けたのです。
そのおかげでジグルド様は抱きついてきましたが、寸のところで回避できました。
ジグルド様は透かしをくらい、口がへの字になっておりました。
「カミラ、さっきも言ったけど、このくらいは慣れよう。」
「おいおい…。」
「そう言ってたらお婆ちゃんになっちゃうよ!ほらっ!」
私が目をそらした隙に腕を捕まれ、引き寄せられました。
私はどうにか回避しようと咄嗟に踏ん張りましたが、強い力に適わず、ジグルド様に抱き寄せられました。
「いやー!!!」
「ははは!嫌じゃない、嫌じゃない。」
この後、ジグルド様に気が済むまで抱きつかれました。
私の反応が楽しいらしく、なかなか離していただけなくて骨が折れました。
しかも、次のお休みに片付けを手伝う約束までしてしまったのです。
結局外は日が落ちてしまい、大丈夫と言っているのにジグルド様に送ってもらうことになってしまったのです。
最後までありがとうございました。
ベーグルもぐもぐしながら書きました!笑
めっちゃ好きな話になってテンション上がりました笑
ベーグル最高!
最後までありがとうございました。
また次回も楽しいお話をお届けできるよう、頑張ります!笑




