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乳母になりたいので子宝ベーグル片手に婚活した件について。  作者: あゆま3


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私の初めて触れる優しさ~なんでそんなに優しいのです?~

いつもありがとうございます!

今回もよろしくお願いします!


レオンの屋敷、夜


私は一度も振り向きませんでした。

背後から聞こえる靴音はジグルド様のもの。

気にせずに、せっせと歩みを進めました。


ーー許せない……あの話をしたのに!


裏口のドアノブに手を引っ掛けようとしました。

すると、ドアが開いたのです。

視線をあげると、そこにはライラがいました。


「カミラさんどうしたんですか?!」

「ラ、ライラ……」

「こんな時間に……! それに、その恰好! 汚れてるじゃないですか!」


ーー見られてしまいました……


自分の服を見ると、皴が寄っていて、ところどころ汚れていました。

口元が歪みました。


「知人の家に借りたものを返しに行っていて、ちょっと…。」

「ちょっとじゃないでしょ?!早く中へ!!」


ライラの顔は真っ青でした。

強く腕を掴まれ、ぐいぐい引っ張られ中に入りました。


ーーなぜこんなに優しくしてくださるのでしょうか?


少し腕を引いてみました。

しかし、さらに引く手が強くなりました。


「ライラ、私に構わないで、早く帰らないと……家族が心配しますよ……!」


ライラは立ち止まり、振り返りました。


「なんでそんな平気なんですか! 怖かったでしょう……」

「……」


ライラの目から涙が零れたのです。

私は息が止まりました。


「こんな時は無理しないでください!!」


少し肩の力が抜けました。

その肩にはズシリとした重みを感じました。


「私は……無理など……そんなことはっ」

「もういいです! 何も言わないでください! さっ、あったかい飲み物用意しますから、早くお部屋に行きましょう!」


ライラは私の背中に回り、掌で押してきました。

私は振り返りながら、口を開きました。

そして、両腕を掴みました。


「ライラ、ダメ、帰らないと……」

「カミラさんが大事な時に帰れますか!! 心配しないでください!!」


涙にぬれた頬が光り、また一粒頬に流れました。

私は首を振りました。


「いいえ、帰ってください! 私は大丈夫だから!」

「こんな状態のカミラさんを放っておけるはずないじゃないですか!? 私を人でなしにするつもりですか?」

「そんなつもりでは……」

「そうじゃないですか!」

「……」


ーー今まで一人で頑張って来たのです。今回も、大丈夫……


私は何も反応できませんでした。

私の腕を振りほどくと、掴みました。

そして部屋まで引っ張っていったのです。


使用人の部屋。


部屋に着くと、ライラは私をベッドに座らせました。


「カミラさん、私お茶用意してきます。ちょっと待っていてください。」

「……」


私の返事を聞く前にライラは出ていきました。

顎を上げて、天井を眺めました。

その天井は、あの日の木目ではなく、幾何学文様でした。


「私は一人で大丈夫。」


静寂に包まれた部屋で一人ポツリと呟きました。

ベッドに着いた手が、シーツを握りしめました。

私はただ、何もできずにそのままでした。

視線を下すと、荷物の中から本がチラリと見えました。

私は立ち上がり、一冊を手に取りました。

かなり読み込まれているようで、ボロボロでした。

開くと懐かしいタイトルが。

それは王子さまと女剣士の恋物語でした。


ある王子様は理想の王子を演じることに疲れ、市井に癒しを求めて飛び出します。

そこで出会った女は誰にも頼らない孤高の剣士。

王子は女と冒険に出ることにしたのです。

冒険では危機を度々迎えました。

女は一人で戦える限界を知り、二人は協力しはじめます。

だんだん近くなる距離。

合わさる呼吸。

気づけば、二人は恋をしていたのです。

冒険の最後、ドラゴンを倒した後、王宮に呼ばれた二人。

そこで王子は、自分が王子であることを告白し結婚を申し込みます。

女剣士は静かに頷き、二人は幸せに暮らしましたとさ。

女剣士の孤独の裏には、人に騙された過去がありました。

その過去を冒険を通じて王子様が癒していくのです。


私は本をゆっくり閉じたのです。


ーーこの本は何でしょうか……? でも、落ち着いた?


「カミラさん!」


扉が乱暴に開きました。

息を切らして、カートを押すライラがいました。


「……ライラ、そのような振る舞いはなりませんよ。」

「だって、カミラさんが心配で……! さっ、飲んでください。お風呂は沸かしてあるので、後で入りましょう!」


ライラは私の言葉を聞き流しました。

私は、お茶が満たされていくカップを眺めました。

差し出されたカップは湯気が立っていました。

一口、口をつけると、涙が頬を伝いました。


ーーおいしい、あったかい。でも、なんで?


ライラは私の隣に座り、背中を擦ってくれました。

その手は、温かかったのです。


「カミラさん、大丈夫、大丈夫……」


ーーライラ……ありがとう……


私はそのまま動けませんでした。


翌日の夕方、ジグルド様の屋敷前


辺りは夕日が赤く照らしていました。

私は、本が入ったカバンを片手に門の前で立っていました。

一歩、足が踏み出せずに、そこで門のカギを見つめていました。


ーー早くしないとまた暗くなってしまう。


視線を外すことはできませんでした。


「いつまでそこで立ってるの?」


私は声のする方へ顔をあげました。

二ヤリと笑う口元が目に飛び込んできました。

最後までありがとうございました。

ライラは、ほっとけない性格をしています。

ちょっとおせっかいなところがいいところです。


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ライラ、優しい〜
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