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乳母になりたいので子宝ベーグル片手に婚活した件について。  作者: あゆま3


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13/28

私の初めての告白~私は汚れております~

いつもありがとうございます。

カミラの過去暴きます。

暴力シーンがありますので、苦手な方はご遠慮ください。

よろしくお願いします。

「私は…、私は…汚れております…。」


この話を今ジグルド様にする必要があるのでしょうか?

数日前に出会った怪しい男性に。

お嬢様にも秘密にしている私の過去。

震える体を抱きながら、お嬢様のワンピースがシワになることもいとわず強く生地を握ったのです。



~12年前、カミラ19歳


私にも若いころがありまして、同僚から、私に興味を持っている男性がいると紹介されたのです。

初めてそのようなことを言われて、飛び上がるほど高揚したのを覚えています。

同僚を通じてデートの日を2週間先に決め、その日を心待ちにしておりました。

初めてのデートに何を着ていけばいいのか分からず、相談しながらあーでもないこーでもないと準備いたしました。

その時間さえも楽しく、なにもかもが輝いて見えたのです。


そう。その日はとても暑い夏の日でした。

服は今の私からは想像できない、ピンクのオフショルダーのワンピースを選びました。

髪はハーフアップにして大ぶりの花のバレッタで留めて、少し背伸びした格好をしました。

少し早めに待ち合わせ場所に着きますと、すでに男性が座って待っておりました。


「ごめんなさい。お待たせしました!」


「いや、今来たとこだ。」


私はお待たせしてしまったことが申し訳なくて、男性のいる場所まで駆けていったのです。

男性は立ち上がり、確か爽やかな顔で私に答えたと思います。

顔は…思い出せないのです。

同僚からは騎士様だとは聞いておりましたが、とても背が高く私の頭2つ分は大きかったのです。

短い髪に薄い白いシャツからは筋肉が盛り上がっていて、よく鍛えていることがわかりました。

私のなにが気に入ったのかはわかりませんが、好意を寄せられているのであれば悪い気はしませんでした。


「じゃっ、行こうか?」


差し出された大きな手には剣だこがたくさんあって、その手にちょこんと手を重ねました。

暑い日でしたので、自分の手が湿ることがどうしても気になりました。

そんな私の心配を他所に、男性はグイっと私の手を握り込んだのです。

男性にそのようなことをされたことがない私は、胸が高鳴りました。

優しく引かれる手をそっと握り返したのです。


そして、二人で食事をしました。

終始男性は穏やかで私を楽しませてくれたと思います。


「おいしい?」


しきりにそう聞かれたこと。

男性のスプーンの持ち方が独特で気になったことは覚えています。

拳で握りしめるような握り方で、もしこのまま付き合うようになったら直してほしいなと思いました。

ただ、どこの店で何を食べたのかは、はっきりと思い出せません。

当然、味も全く覚えておりません。


この日のデートは食事だけする予定でした。

帰り際に店先で向かい合った時です。


「もっと話がしたい。」


男性がそう私に言ったのです。

私もこの時、同じ気持ちでしたので笑顔で頷きました。


「じゃあ、ホテルでゆっくり話をしよう。」


一瞬迷いましたが、初めてのデートですし男性は騎士様なのです。

嫌がることはなにもしないだろうと、安易に考えてしまったのです。

私は、舞い上がっていたのでしょう。

普通なら若い男女がホテルですることなど決まりきっております。

しかし、私は…小さく頷いたのです。


そうして、男性とホテルに行きました。

部屋に入った瞬間、ドアのカギが背後で閉まる音がしました。

男性が閉めたのです。

振り返って見た男性の顔は今までの爽やかな顔から豹変し、凶暴な顔でニヤリと笑いました。

その顔を見て、背筋が凍ったことは覚えています。


その後の記憶は曖昧で、ただ天井の木目をじっと見つめていたように思います。

思い出そうとすると、頭痛がして吐き気がするのです。

この日の最後の記憶は、お風呂で皮膚が擦り切れるくらい体を洗っていたことです。


同僚にも子細を聞かれましたが、誤魔化して断りました。

その後も何度も何度も同僚を通じて男性はコンタクトを取ろうとしてきましたが、休みを全て仕事に変えて断りました。

何度も断りましたので、そのうち声もかからなくなって、表面上は何事もなかったように日々を過ごしました。

ただ月のものがくるまでは食事も喉を通らず、夜になると涙が止まらなかったのです。


それからばらくは、大柄な騎士様を見ると震えが止まらなくて困りましたが、制服を着るとなぜだか震えないことに気がついたのです。

そこからは、ただがむしゃらにお嬢様のためだけに集中して働いてまいりました。

全てをなかったことにするために。



~ジグルド様の屋敷、玄関前


「ですから、私は…汚れているのです。」


自分で発した言葉のナイフは私の心に突き刺さりました。

私の視線は定まらず、ただぼうっとジグルド様を見つめました。

私は感情が抜け落ちて、ただただ情報を口にするように努めました。

そうでもしないと、今にも暴れだしそうだったのです。

強制的に忘れて閉ざした記憶は、乳母になるという使命を果たすにはあまりにも残酷だったのです。

31歳という年齢だけの問題ではなかったのです。

19の夏から止まった時間は、使命を果たすために動き出したのです。


「それ…だれかに言った?」


「いいえ…。私の落ち度ですので…。」


「じゃぁ、乳母になることやめる?」


「…。」


がむしゃらに、ただひたすらお嬢様に仕えていたのは、自分自身を守るためでした。

あのことを忘れるために、制服という鎧を着て心を守っていたのです。

私服のワンピースは、ただ制服に似ているからではなく、鎧を脱げない事情があったからなのです。

普通に考えれば無理でしょう。

唇を開きかけた時、ふと脳裏にお嬢様の顔が思い浮かびました。

今朝、乳母になってほしいと嬉しそうに微笑んだお嬢様。

かわいくて、守りたい私のお嬢様。


「やめられないのです…。」


心の奥底からこみ上がってきた声は、地を這うようでした。


「どうしても、やめたくないのです。」


言葉に出すとストンと腑に落ちました。

顔をゆっくりあげて、ジグルド様の隠れて見えない目の辺りをじっと見つめます。

夜風はそよそよと吹いて、真っ暗な2人の間を抜けていきます。

ふと強い風が吹いて、ジグルド様の隠れていた目が一瞬だけチラリと見えました。

射貫くような視線に足がすくみそうになりますが、足を踏ん張り奥歯を噛み締めました。

爪が食い込むくらい拳を握りしめ、心に決めたのです。

私はこの過去を清算して、真の侍女になるために乗り越えなければならないのです。

いいえ、乗り越えるのです。

お嬢様のため?いいえ、私のためにです。




私がしっかりと意思を決めたところで、ジグルド様はふっと笑いました。


「カミラ、学習能力ないの?ここ、男の屋敷だよ?」


「は!」


今更ながら、ジグルド様は男性で一人で暮らしてらっしゃると言っておりました。

しかも、夜で私はいつになくおしゃれをして一人で訪問しようとしておりました。

一気に血の気が引いていくことがわかり、指先が冷えていきました。

後ずさりをしますが、振り返って目に入った門は魔法で閉まっています。

完全に足が止まり途方にくれて、門を睨み付けますがどうにもなりません。


「ははは!そんなに怖がらなくってもいいじゃないか!」


再びジグルド様の方に振り返りますと、手を叩いて笑っておりました。

笑うほどのことでしょうか?!

私の過去を聞いた後にですよ?!

私、自意識過剰だったのでしょうか!

冷えた指先は一気にカッカして、頭に血が上ります。


「カミラ、俺は君が乳母になれるように協力しよう。代わりに、手伝ってほしいことがある。」


「…。」


何が協力しようですか?!

ここにきて協力者が喉から手が出るくらい欲しいとは思いますが、信用がなりません!!

睨んでいる目をさらに厳しくして、顔をしかめました。

ジグルド様はこらえきれない様子で笑い始めました。


「ははは!大丈夫だ。俺はなにもしない。とりあえず、屋敷はいる?」


両手を挙げて降参のポーズをとるジグルド様ですが、怒りは一向に収まらないのです。


「いいえ!結構です!!ここで!お願いします!!」



「おいおい困ったな!本の片付けを手伝ってほしかったんだけど…。カミラがその様子じゃ無理だな。」


昨日玄関の本を分類したはずなのですが、まさかあの状態が奥まで…?

想像しただけでゾッとします。

せっかくの立派なお屋敷が泣きます。


「無理しなくていいよ。気が向いたら手伝って。

そうだ!シャツ!」


「!」


私は本来の目的であるシャツをバッグから取り出しますが、しわくちゃになっておりました。

シャツを持つ手が止まり、引っ込めようとしました。

しかしジグルド様は構わず、私からシャツを受け取りました。


「ちょっと待って!」


ジグルド様は、さっさと屋敷に入っていって、私は借りた本を手に渡せなかったのです。


しばらく待つとジグルド様は本を片手に戻ってまいりました。

チラリと見えた家の中が、また元通りになっていたように見えましたが、気のせいなのです。


「これ。また気が向いたら手伝って。じゃぁ、送るよ。」


「結構です!」


「女の子が一人で危ないよ?」


「…。」


私はジグルド様から奪うように本を受け取り、借りていた本を押し付けて、さっさと開いた門を潜ったのです。

ジグルド様は私が帰ってお屋敷に入るまで、黙って後ろを着いてきてくれました。


最後までありがとうございます。

ジグルドのお屋敷は本の山です。(羨ましいな。)

また次回も楽しみにしていただけたら嬉しいです!

では!お休みなさい…。

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