私の初めてのキス。~唇って…~
いつもありがとうございます。
長くなってしまったので連投します。
ちょっとモブ姦未遂事件おきます。
苦手な方はご遠慮ください。
よろしくお願いいたします。
夜、シグルドの屋敷の道中。
新月で光があまりない夜。
私はランプを片手に急ぎ足で進んでいました。
ーーお嬢様、善は急げと張り切ってしまわれたから、遅くなってしまいました。
服装は、お嬢様のワンピースと靴。
慣れない靴に足をもたつかせていました。
ーージグルド様とお約束してしまいましたし……
シャツが少ない、と言われていましたから。
早く行かないと……
前傾姿勢になって、足を動かします。
靴に小指が当たって痛みが走りました。
どこからか、犬の遠吠えも聞こえてきました。
冷たい風が頬を撫でます。
その些細な刺激でさえ、身体が震えます。
お屋敷が実際より遠くに感じました。
「おい!ねぇちゃん!俺と遊ぼうぜ!」
「え?」
突然、背後から声が聞こえたのです。
声のする方へ振り向こうとしたその時、急に腕を掴まれたのです。
あまりの力に指が食い込みました。
ーー気づかなかった……! お嬢様の服汚したくないですし……護身術が使えない!
ぼんやりと人の輪郭が見えました。
男性は大柄で太っていました。
お酒の香りが強く鼻を刺しました。
「へへへっ。女だ! 俺はラッキーだ!」
「……」
身体を動かせませんでした。
なにより、恐怖で全身が小刻みに震えるのです。
掴まれた腕を取れそうなほど強い力で引っ張られました。
足を踏ん張りますが、慣れない靴。
手に持った荷物とランプは落としてしまいました。
引きずられるように、そのまま裏路地に引き込まれました。
路地は暗く、人気はありませんでした。
すえた匂いが充満していました。
壁に背中を押し付けられ、顔の横に両手取られ置かれました。
顔は、暗くて見えませんでした。
私は、顔を歪めました。
大きい体が近づいてきて、耳元に息がかかりました。
私は心臓が跳ね上がって、鳥肌がたちました。
「姉ちゃんも期待してたんだろ? 楽しもうな?」
息を荒くして、男が言い放ちました。
腕を動かそうとしましたが、ピクリとも動かない。
「あ、あ……」
奥歯がカタカタ鳴りました。
意味のない言葉しか口から発せられません。
男が私のうなじに舌を這わせました。
「ひぃっ……!」
「もっと色気ある声で喘げよ!」
男は耳元で叫びました。
もう一度、そこを舐めました。
背筋がぞっとして、飛び上がりました。
「ひぃっ! やめっ……」
体は震えるばかりで言うことを聞きません。
男が膝を私の足の間に差し込みました。
ーーもう、だめなのかもしれない。
目を強く瞑ったのです。
震える体を固くしました。
ーーただ無になること。あの時のように……あの時って、いつ?
「カミラ、乳母になりたいからって、それはさすがにだめでしょ?」
「はあ?」
男は声のした方へ振り返りました。
私は目線を上げました。
暗くてシルエットしか捉えられませんでした。
でも、聞いたことある声に、涙がどっと溢れてきました。
「兄ちゃん見てわからないのか!? 取込中だ! どっか行け!!」
「どっか行くのは、あんただけどね。」
「なんだと!」
男が大きな声をあげました。
ジグルド様の声は落ち着いていました。
そして、片腕を上げました。
すると、私に覆いかぶさっていた男が宙に浮き上がりました。
「うわっ!! な、なんだ?!」
地面から足が浮き、身体を二つに折って手足を掻く男。
その顔には、色がありませんでした。
「お、お前!! 下ろせ!! コノヤロー!」
ジグルド様に向かって叫ぶ男。
地面から身体が1メートルほど浮かんだ時、上昇がピタリと止まりました。
「な、なんだ?!」
男は背後にあった壁に勢いよく背中からぶつかりました。
鈍い音が静寂に響きました。
「ぐわっ!!」
そのまま、地面に尻餅をつきました。
男は背中を手で押さえつけました。
顔をジグルド様に向け、すぐ立ち上がりました。
「やったな、おまえ!! 許さねぇ!!」
男はジグルド様に腕を伸ばし、大股で近づきました。
「……無駄だ。」
ジグルド様は再び片手を男に向かって腕を上げ、掌を開きました。
今度は頭上より高く身体が浮かび上がりました。
そしてジグルド様が拳を握りました。
魔法を解いたのか、男は地面に尻を打ち付けました。
男は腰を押さえ、震えているのが見えました。
「ひぃ……! バ、化け物だ!!!」
男は唾を飛ばしながら、尻で退きました。
四つん這いになって、立ち上がるとよろめきながら逃げていきました。
私は胸の前で拳を握っていました。
震えは、小さくなっていきました。
しかし、言葉を発することができなかったのです。
ジグルド様の首が私に向きました。
「大丈夫? カミラが遅いからおかしいと思ってね。」
「……」
表情は見えなくて、抑揚のない声。
手を差し出されました。
私は、その手から視線を逸らせませんでした。
ーー私は……汚れているのです。
視界から手を外しました。
左手で舐められた首を掻きむしりました。
右手は掴まれた腕に指を沈めました。
痛みが走りましたが、構わず続けました。
「カミラ? なにしてる! やめろ!」
ジグルド様は私の両手首を取り、顔の横で止められました。
ーーおかしいのです。
また身体の震えが大きくなりました。
呼吸は乱れ、酸素を求めました。
ーーダメなのです。ジグルド様、私は汚れているのです。
「あ……あ……」
また意味のない言葉が零れました。
ジグルド様の動きが止まりました。
視線が刺さるように感じました。
そして、私の手首から指が外れました。
その腕は背中に回ったのです。
胸と胸が重なりました。
そして……唇に唇が押し付けられたのです。
まぶたは閉じられませんでした。
息は止まって、なにもできませんでした。
ジグルド様の前髪が私の頬をかすめました。
ーーなに……これは?
少しかさついていて、やわらかな唇が触れていました。
時が止まったようでした。
重なった唇が離れていきました。
「落ち着いた?」
「……はい。」
「そう、じゃあ、いこうか。」
「……」
私は何も捉えることなく見上げていました。
ジグルド様は私の腕を掴みました。
引っ張られるままに、足を動かしました。
表の通りに出て、近くにあった荷物を拾い上げてくれました。
そのまま、ジグルド様のお屋敷まで歩いて行ったのです。
夜、ジグルド様のお屋敷
私とジグルド様は魔法で開いた扉をくぐりました。
鍵が後ろで閉まる音が聞こえました。
閉まったと同時にジグルド様は足を止めました。
そして、振り返ったのです。
「ねぇ? 今日に限ってなんでそんな格好してるの?」
「お嬢様に……似合うと……」
「だからって、夜にそんな恰好で女の子が歩いたら、ダメなのわかるよね?」
「……」
何も言えませんでした。
ーー女の子だなんて……お嬢様が選んだ服ですもの……いつもの服に着替えればよかった。
私は顔を上げることができませんでした。
握られた腕を引っ込めようとしました。
しかし、逆に強い力で握り込まれて、痛みが走りました。
「それとも、誰でもいいから子ども欲しかったの?」
息を飲みました。
ーーそう思われても、仕方がないのです。
身体は震え上がりました。
掻きむしった首が、風に当たってヒリヒリしました。
伏せたまま、視線を動かせません。
「誰でもいいなら、俺の子、産む?」
「……え?」
私はジグルド様の顔を見上げました。
暗いし、前髪もあります。
表情はわかりません。
けれども、低くゆっくりとした口調でした。
ーーこれは、本気です……
「私は……私は……汚れております……」
また大きく体が震え始めました。
ーー思い出した……独身を貫こうと決めたあの日のことを。
「その様子じゃ、今日の事だけじゃないよね?」
鳥肌が立ちました。
大きく息を吐きますが治まりません。
私は、震える唇を無理に開けました。
最後までありがとうございます。
次回もよろしくお願いします。




