私の初めてのカミングアウト~お嬢様、私は…~
いつもありがとうございます。
最近、ピンクの椅子買いました。
桜色です。
みなさんの桜も咲きますように。
夕方、レオンの屋敷
お屋敷に戻ってすぐに、ランドリーの方へ進みました。
水を汲んだ桶を用意して、シャツを浸しました。
水面に映った自分の顔をしばらく眺めました。
ーー私が乳母になるってことは、お嬢様にとってご迷惑だったのでしょうか……でも……、お嬢様のために私ができることはそれしか思い浮かびません。じゃないと……
水面に水滴が1つ落ちました。
歪む水面と私の顔。
次々に落ちていきました。
しばらく、動けなかったのです。
それから、時間をかけて私は洗いました。
洗濯が終わり屋敷の外に一歩出た時、足が止まりました。
手には男性物のシャツ。
ーー私が干していると、男遊びをしている、なんて思われてしまったら?
急激に冷えていく指先。
シャツから視線を逸らせません。
ーーほかの洗濯と一緒には干せません。
私は、踏み出した一歩を引きました。
一度戻ってバッグを掴むと、自分の部屋へ方向転換したのです。
廊下を歩く足が早まります。
シャツを抱え込んで、身体を縮こまらせました。
ーー見つからないで!!
シャツを握りしめる指先に力がこもりました。
ふくらはぎが攣りそうになりますが、それでも足を運びました。
自分の部屋のドアが見えてきました。
もう、呼吸は乱れきっていました。
ドアノブを掴み、少し開けると身体をねじ込みました。
ドアを後ろ手で閉めて、ドアに身体を預けました。
私の心臓は、早く胸を打ちつけておりました。
膝は小刻みに震えていました。
ーーなにも悪いことはしておりませんのに、なぜこんな思いをしなければならないのでしょう……
肺の空気を出し切ると、ドアから身体を離しました。
バッグをベッドの上に置きました。
クローゼットからハンガーを取ると、シャツにかけました。
そして、それを窓枠にかけたのです。
抱え込んだシャツはシワが寄っていました。
それを、何度も何度も掌で撫でたのです。
夜
窓際でシャツを見つめていました。
気付くと、部屋におぼろげな光が入ってきていました。
冷たい空気が部屋に入って来て、身震いしました。
ーーお嬢様にいただいたお休みも、何も成果を出せなかった……
空に浮かぶ月に視線が縫い留められました。
しかし、雲で隠れてしまいました。
溜息をつくと、ベッドに近づきました。
そして、無造作に置いてあるバッグを開きました。
ーーなにも役に立たなかった……
目に飛び込んで来たのは、プレーンのベーグル。
つやつやと輝いていて、もっちりしていることがわかりました。
掴み上げると、見た目からは想像できないくらい、ずっしりと重く感じました。
包みを開けて、口を大きく開きました。
そして、一口噛りつきました。
口の中に広がる小麦の甘味。
噛めば噛むほど甘く、そして鼻に小麦の香りが抜けていきます。
咀嚼して、飲み込むと次、次、と繰り返しました。
気が付けばベーグルは消えていました。
ーーお腹いっぱいだったのに……でも、満たされた。
私は、ごみを小さくたたんで捨てると、バッグの中を覗きました。
そこには今日薦められた本。
その本を掴むと、ベッドに座り表紙を開いたのです。
翌朝一番、お嬢様の部屋
私は、お嬢様のお部屋に一歩踏み入りました。
「カミラ!」
「お嬢様、お休みを申し訳ございませんでした。」
「何言ってるの? カミラのためじゃない!」
「ささっ、時間がございませんのでご準備を……」
「わかった、お願いね。」
お嬢様の声は弾んでいました。
お顔も頬をピンクに染めておりました。
早速、朝の支度に取り掛かりました。
洗顔の後、化粧台の前で座るお嬢様。
お化粧を施し、チャームポイントの御髪を整えます。
ーー本日もお嬢様はかわいい。癒しです。でも……私が乳母になったら、迷惑なのでしょうか。
ブラッシングの手が止まってしまいました。
「カミラ?」
鏡越しにお嬢様と目が合いました。
私は視線を髪に戻しました。
止まっていた手を慌てて動かしました。
「も、申し訳ございません!」
「カミラ、どうしたの?」
「なんでも……ないのです。」
ーー迷惑かどうかなんて聞けないのです。
お嬢様の顔から笑顔が消えました。
私の口元が引きつりましたが、すぐに元に戻しました。
「なんでもないことないでしょう?」
「そんなことは、ないです。」
「私は、カミラが元気ないと悲しい。」
「お嬢様……」
肩の力が抜けていきました。
自分の顔がどんな顔になっているのか、わかりませんでした。
「無理しなくていいのよ?」
ーーお嬢様に隠し事など……できないのです。隠しても、全てを見透かされそうです……
私は、クシを持つ手に力を込めました。
鏡越しにお嬢様と目を合わせたのです。
「お嬢様……私、先日結婚したいと申し上げました。」
「そうね。もしかして……! いい人と出会えたの?」
お嬢様は身体ごと私に振り返りました。
「……その件に関しましては、残念ながら。力不足で申し訳ございません……。」
「あら、そう……でも、大丈夫よ! カミラは器量良しだし。なにより優しいし!」
「ありがとうございます。ところで……私、お嬢様にお聞きしたいことがあるんです。」
私は顔を引き締めました。
お嬢様もつられて表情を引き締めました。
「なに?」
「お嬢様……私、実は……乳母になりたいのです。」
「……」
音が消えました。
私はお嬢様の顔が見られませんでした。
息をするのを忘れてしまいました。
「嬉しいわ!」
お嬢様は立ち上がり、私の手を両手で包み込みました。
柔らかい手が温かくて、冷えた心を温めてくださるようでした。
私は目を見開いて、顔を上げました。
「カミラが乳母なら心配ないじゃない!嬉しい!」
「お嬢様……」
「でも、焦ってダメな男にひっかかっちゃダメよ!私が許さないんだから!」
ーー私はただの侍女の一人ですのに……こんな、こんな……
「お、お嬢様……ご迷惑ではないでしょうか……?」
「なんで?」
「私が乳母なのですよ?」
「ええ、そうよ?」
「……」
ーー気持ち悪いと言われるかもしれないと覚悟していましたのに。
瞬きも忘れてお嬢様から目が離せませんでした。
「私はね、夢の中でカミラみたいに仕事を頑張ってたの。だけど誰にも頼れなくて、いつもボロボロだった。だからカミラが乳母になりたいなら、精一杯応援したい。」
「ありがとうございます……カミラ、精一杯務めさせていただきます。」
視界が霞みました。
私は頭を下げました。
「カ、カミラ! そんなことしなくていいのよ?」
「いいえ、お嬢様、私……私……」
「わー! 泣かないで! 大丈夫だから……」
「申し訳、ございません。」
お嬢様の腕が私の頭に回りました。
「カミラ、頼りにしてるわ。」
「はい。」
その後、私が落ち着くまでそのままだったのです。
涙が止まった頃。
私は、お嬢様のブラッシングの続きをしていました。
「ひとまず、出会いがなかったのなら紹介ね。カミラは、どんな人がいいの?」
「えっと……実は、先日紹介していただけるようにお願いしたのですが、年齢で断られてしまいました……」
「じゃあ、お見合いは? パーティーとかないの?」
「そちらも、年齢で……」
「ちょっと、この世界厳しすぎでしょ!?」
荒げた声に、私は櫛を頭から離してしまいました。
「じゃあ、レオンにいい人いないか聞く!」
「申し訳ございません、騎士様はちょっと……」
「あー筋肉バカは、タイプじゃないのね。」
「お嬢様、言葉が……」
「難しいわね。」
言葉が出ませんでした。
「でも……」
「でも?」
「図書館で不思議な方と出会いました。その方から面白い本をお借りしたのです。」
「へ~! どんな?」
「人は見た目で判断するですとか、男性に好まれる服装ですとか、お化粧ですとか……」
ーージグルド様から借りた本は、本当に参考になりました! 今の私では、声をかけづらいらしいのです。ジグルド様には言われたくないですが……。
「確かに! カミラは普段も地味にし過ぎ。まずは見た目からね! お父様に連絡しとくわ。」
「いえ! 旦那様にそのような…!」
「なに言っているの? 私が、カミラに乳母になって欲しいのよ?」
お嬢様はウィンクをしました。
圧力が強かったのです。
思わず頭を縦に振ってしまいました。
そして、お嬢様は手紙の用意を私に命じたのです。
私は言われた通り、用意しましたが口元が緩んでいました。
最後までありがとうございます。
お嬢様は前世と年齢を合わせるとカミラより年上です笑
前世はキャリアウーマンです!
一応ムーンの方にお嬢様のお話を載せているので、よかったらご覧ください。
※ムーンですので18歳未満の方はご遠慮ください。




