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乳母になりたいので子宝ベーグル片手に婚活した件について。  作者: あゆま3


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11/28

私の初めてのカミングアウト~お嬢様、私は…~

いつもありがとうございます。

最近、ピンクの椅子買いました。

桜色です。

みなさんの桜も咲きますように。

~夕方、使用人の部屋


私はジグルド様のお屋敷を後にして、レオン様のお屋敷に戻ってまいりました。

すぐにランドリーに向かいました。

お化粧は油汚れですので、中性洗剤を揉みこみます。

作業しながら先ほどあったことを少し考えます。

私は乳母になってお嬢様のお役に立ちたいと思っていたのです。

ですが、この気持ちはお嬢様にとってご迷惑なことかもしれないと、ジグルド様の言葉で初めて気が付きました。

けれども、今までお嬢様を最優先で生きてきたのです。

私にとっては、乳母になることを諦めてしまったら、なんのために生きてきたのかわかりません。

自分の根幹を揺るがす言葉にいい大人が涙してしまいました。

私は結局自分のためだったとしても、乳母になることを諦めなかったのです。

考え事をしているうちに、つい手が止まっていました。

お屋敷のメイドに任せず、自ら丁寧に染みを落とすことで自分の心も洗われた気がいたしました。


洗濯が終わり、いざ干そうと屋敷の外に一歩出たとき足が止まりました。

お嬢様の侍女である私が男性のシャツを干しているところを見られたらどう思われるでしょうか?

侍女が男遊びをしている、なんて思われてしまったら?

私の行動でお嬢様の名誉に傷がついたらいけないのです。

濡れたシャツをそのままにすることもできません。

それに明日ジグルド様に持っていく約束をしていました。

私は、踏み出した一歩を引いて自分に与えられた部屋に引き返したのです。

廊下を歩きながら誰かに見られないか、ハラハラいたしました。

私はなぜランドリーに行ってしまったのか、見られたらどうしたらよいのでしょうか?

シャツを握りしめる力が強くなってしまい、足を運ぶスピードも上げました。

しかし、私の心配は外れ誰にも遭遇することはございませんでした。

自分の部屋に戻ってドアを閉めたその瞬間。

私の息は上がりきって、心臓も壊れそうなほど早く胸を打ちつけておりました。

私はなにも悪いことはしておりませんのに、なぜこんな思いをしなければならないのでしょう。

シワになったシャツを干し、何度も何度も撫でたのです。


~夜


シャツを見つめていましたら、あっという間に時間が過ぎておりました。

この1週間、せっかくお嬢様にいただいたお休みも何も成果を出せなかったのです。

ただトリティクムの街をウロウロしただけとなってしまいました。

せめてジグルド様からお借りした本を読もうとバッグを開きました。

なにも役に立たなかった、

いや、役に立てることができなかったベーグルを見つめました。

お嬢様がお見合いの日に購入したプレーンのベーグル。

つやつやと輝いていて、大きく、そして見た目からももっちりしていることがわかります。

購入して時間が経っているはずですのに、ベーグルは購入した時のまま。

手に持つと見た目からは想像できないくらいずっしりと重く感じました。

私は、思い切って一口噛りつきました。

口の中に広がる小麦の甘味。

噛めば噛むほど甘く、そして鼻に小麦の香りが抜けていきます。

もっちもっちで、落ちかけていた気持ちも忘れて夢中で食べ進めていきました。

子宝ベーグルは大きいはずですのに、気が付けば消えておりました。

夕食後ですのに、ペロリと食べきって、満腹感より幸福感が漂いました。

私は、そのふわふわした気持ちで本を開いたのです。





~翌日、お嬢様の部屋


「カミラ!」


休暇明けのお嬢様は笑顔で私を迎えていただけたのです。

化粧台の前でお嬢様にお化粧を施し、チャームポイントの御髪を整えます。

本日もお嬢様はかわいいのです。

癒しなのです。

久しぶりの仕事に燃え上がりました。

しかし、ジグルド様に昨日言われたことが心に引っかかって、お嬢様の御髪を整える手が止まってしまいました。


「カミラ?」


お嬢様に声をかけられてやっと私の手が止まったことに気が付きました。


「も、申し訳ございません!」


休暇明け早々にミスを犯し、急いで手を動かします。


「カミラ、どうしたの?」


「なんでも…ないのです。」


お嬢様に私の考えていることが、迷惑かどうかなんて聞けないのです。

お嬢様の顔が曇っていってしまい、こんなお顔をさせるなら無理にでも笑ったほうがよかったのです。

いつもならできたのかもしれませんが、本日はやはりおかしいのかできないのです。


「なんでもないことないでしょう?カミラが元気ないと私も悲しい。」


お嬢様のお言葉が胸に突き刺さります。

無理に口角を上げようといたしますが、自分の顔がどうなっているのかわからなかったのです。


「…お嬢様。」


「無理しなくていいのよ?」


時としてお嬢様は大人びていて、私のほうが倍近く生きておりますのに不思議と年上の女性とお話しているような感覚に陥ります。

このままお嬢様に隠し通しても、見透かされてしまうでしょう。

私は、クシを持つ手を握り鏡越しにお嬢様と目を合わせたのです。


「お嬢様、私、先日結婚したいと申し上げました。」


「そうね。もしかして!いい人と出会えたの?」


勢いよくお嬢様は振り返りました。


「残念ながら…。その件に関しては力不足で申し訳ございません。私、お嬢様にお聞きしたいことがあります。」


私の真剣な顔にお嬢様は、体が私の方に向くように椅子に座りなおしました。


「なに?」


「お嬢様…、私は、乳母になりたいのです。」


私はお嬢様の顔が見れませんでした。

鼓動はうるさいくらい早くなり、息をするのを忘れてしまいました。


「嬉しいわ!」



お嬢様は立ち上がり、私の手を両手で包み込みました。

お嬢様の柔らかい手が温かくて、冷えた心を温めてくださるようでした。

私は目を見開いて、顔を上げました。


「カミラが乳母なら心配ないじゃない!でも、焦ってダメな男にひっかかちゃダメよ!私が許さないんだから!」


私はただの侍女の一人ですのに、まるで友人のように心配してくださいます。

行き遅れで31歳で、殿方ともお付き合いしたことがない私に乳母になることは、ご迷惑ではなかったのでしょうか。


「お嬢様、ご迷惑では…?」


「なんで?」


「私が乳母なのですよ?」


気持ち悪いと言われるかもしれないと覚悟していましたのに、お嬢様は逆のことを言いました。

まさかの展開に、瞬きも忘れてお嬢様から目が離せません。


「私はね、夢の中でカミラみたいに仕事を頑張ってたの。だけど誰にも頼れなくて、いつもボロボロだった。だからカミラが乳母になりたいなら、精一杯応援したい。」


「ありがとうございます…。カミラ、精一杯務めさせていただきます。」


頭を下げ、お嬢様がいいというまで上げることができなかったのです。



「ひとまず、出会いがなかったのなら紹介ね。どんな人がいいの?」


「いえ…。実は、紹介していただけるようにお願いしたのですが、年齢で断られてしまいました…。」


「じゃあ、お見合いは?パーティーとかないの?」


「そちらも、年齢で…。」


「ちょっと、この世界厳しすぎでしょ!?」


お嬢様は時たま不思議なことを言うのです。


「じゃあ、レオンに聞く!」


「申し訳ございません、騎士様はちょっと…。」


「あー筋肉バカ嫌いなのね。」


筋肉バカとはなんのことでしょう?

外国語なのでしょうか?

お嬢様は語学が堪能なので、理解ができないときがあるのです。


「でも…。」


「でも?」


「図書館で不思議な方と出会いまして、その方から面白い本をお借りしたのです。」


「へ~!どんな?」


「人は見た目で判断している。ですとか、男性に好まれる服装ですとか、お化粧ですとか…。」


ジグルド様からお借りした本は、どうすれば男性に振り向いてもらえるかなど、こと細かくアドバイスが書かれており大変参考になったのです。

私の今の地味なワンピースにお団子ヘアでは、男性も声をかけづらいらしいのです。


「確かに!カミラは普段も地味にし過ぎ。まずは見た目からね!お父様に連絡しとくわ。」


「いえ!旦那様にそのような…!」


「なに言っているの?私が、カミラに乳母になってほしいのよ?」


お止めしようとしましたが、お嬢様からの圧力が強くてなにも言えなくなってしまいました。

そして、お嬢様は手紙の用意を私に命じたのです。



最後までありがとうございます。

お嬢様は前世と年齢を合わせるとカミラより年上です笑

前世はキャリアウーマンです!

一応ムーンの方にお嬢様のお話を載せているので、よかったらご覧ください。

※ムーンですので18歳未満の方はご遠慮ください。

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