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乳母になりたいので子宝ベーグル片手に婚活した件について。  作者: あゆま3


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10/28

私の初めてのお宅訪問~な、なんですの?このお屋敷!~

こんにちは!

いつもありがとうございます。

楽しくなってまいりましたね!

では、続きをどうぞ!

私は、例の男性の足元に視線を置いて歩いていました。

まだ午前中とあって、街には多くの人が行き交っていました。

しかし、男性を避けるように通り過ぎました。


ーーみんな避けてます。怪しい……ですもんね。私、従者だと思われたくないのです。


私は3歩後ろ程度を歩いておりましたので、ぶつかることはありませんでした。

視線を男性の背中に移しました。

背中にも無数のシワが寄っていました。


ーー服の質は良さそうなのに……もったいない。私なら、こんなシワシワのシャツなんて断じて出しませんのに。


足を踏み出す速度を落とし、男性との距離を広げました。

急に男性の足が止まりました。

そして、私の方へ振り返りました。

視線を合わせました。


「歩くの速かった?」

「いいえ、そんなことはございません。」


ーー気づかれてしまいました……従者だと思われたくなかったから、なんて言えません……。


事務的に伝えようと口を開いたのですが、冷たい響きとなってしまいました。

私は、少しだけ頭を下げました。

視界から男性が消え、代わりに地面が入りました。


「ふぅん、そう。」


男性は何事もなかったように背中を向けました。

前に進みますが、心なしかスピードが緩くなっているように見えました。


ーーこんな私にも気を使っていただけるなんて……意外です。


その後も私は1歩後ろを付いていきました。


10分後、男性の後をついて歩いておりましたら、だんだん人が少なくなっていきました。

大きなお屋敷が立ち並ぶエリアに足が進んで行ったのです。

私の足はだんだん重くなっていきました。


ーーこんなところ……やはり、怪しい。帰った方が……でも、シャツを汚したのは私ですし……。


ただ男性の足元に視線を固定して、足を動かし続けました。

男性の足がピタリと止まりました。

私は、視線を足元から上げました。

男性は首を横に向けました。


「ここだよ。」


目の前にはツタが這っている大きなお屋敷がありました。

外壁は白で風格のある建物でした。

私は、男性と屋敷を2度視線を往復させました。


ーーここ? 随分立派。この方は……本当になんなのでしょうか……


男性は慣れた手つきで門に手をかざしました。

すると淡い光を発して、勝手に扉が開きました。

私は目が点になりました。


「え?!魔法?!」

「そうだけど。なに?」

「……」


口元は一文字で表情は読めませんでした。

私は圧に口を閉ざしてしまいました。


ーー初めて見ました! 魔法なんて……


今度は目を皿にして門と男性の間を何度も往復させました。


ーーなかったように言いますが……魔法は、一握りの人しか使えないのです……私は、とんでもない男性の家に来てしまったのかもしれません。


男性が門をくぐりました。

私の足はまだ動きませんでした。


「なにしてるの?いくよ?」

「は、はい!」


奥歯を噛みしめ、男性の後ろについて門をくぐったのです。

門をくぐると背後で門の閉まる音がしました。

慌てて振り返ると、今度は鍵がガチャリと閉まったのです。

私は目を凝らしました。


ーー本当に閉まってる。勝手には帰れなくなってしまいました。


足がすくみました。

男性へ視線を移すと、玄関近くまで足を進めていました。

従者のお出迎えはありませんでした。


ーーこんな立派なお屋敷であれば、使用人は沢山いるはずです。なのに、一人も出てこないなんて、おかしいのです。


私は眉をひそめ、首を傾げました。

私とは対照的に男性には迷いがありませんでした。

玄関の扉に腕を伸ばすと、自ら押して開けました。


「散らかってるけど、気にしないで。」

「……」


ーー散らかっている? いや、きっとそう言うだけですよね。


そのまま男性は足を進めました。

私もドアに手を掛け、屋敷の中に足を踏み入れました。

ゆっくり目線を家の中に移しました。

そこには、本、本、本。山のような本でした。

本が沢山乱雑に置かれていたのです。


「まぁ!!!」


腹の底から声を上げてしまいました。

息を飲みました。

視線を一点に留められないのです。


ーーあ、ありえません!! 使用人は何をしているのでしょうか?!


「こ、これは……使用人はどうしたのですか?」


込み上げてくる言葉を殺して、声を絞り出しました。


「いないよ。俺一人。」

「……は?」

「だから、一人。」

「……」


淡々とした返事でした。

私は、なにも言えませんでした。


ーー幻聴でしょうか?こんな大きなお屋敷に一人のはずが……でも、嘘をついているようには感じません。


「俺、誰かに世話されるの嫌いだから。」

「……」


静寂を破るように、男性は言いました。

口が開いてしまいました。


ーーやはり、身分は高い方なんですね。でも、平日に図書館にいるくらいですから、親の脛をかじって生きているのでしょうね。もう、これ以上関わらない方がいい。さっさと用を済ませて帰りましょう。


私は、拳を握り息を吸いました。


「早速ですが、シミ抜きいたします。お洋服をお召し替えいただけますか?」

「わかった。」


男性は首元に指をかけ、ボタンを2つ3つ外しました。

そして、裾を掴んで一気に捲りあげ、首を抜いたのです。

私は一瞬のことで反応が遅れました。


「ななななななな、何ですかっ!!!!」


私の口からは意味のない言葉が漏れました。

掌を目元に移動させ、視界を塞ぎました。


「え? なに?」

「ここここ、ここは玄関ですよ! 女性の前でそんな、そんな! はしたないことしたらいけません!!」

「あー、お姉さん、乳母になりたいって言ってなかったっけ? そんなんじゃ無理なんじゃない?」

「それとこれは別です!!」

「へーへー。」


男性は床にシャツを放り投げました。

頭をかきながら、本の隙間を縫って屋敷の奥へ消えていきました。

私は汗が噴き出ていて、暴れる胸を両手で押さえました。

それから、動けませんでした。


ーー見て……しまったのです。お腹が6つに割れていました……いや、いけない! 忘れないと……!


ふと、視線を床に下すと男性のシャツが目に入りました。

散らばる本の上に無造作に乗ったシャツ。

私はそれに近づきました。

指先2本で摘まみ上げると、腕に抱えました。

そして、改めて部屋全体を見渡しました。


ーーなぜ、こんなに本が……? これでは、心を休めることはできません。


膝を折って足元にある本を取りました。

開いて、ペラペラと捲ると、なにやら歴史書のようでした。

閉じて元に戻すと、また別の本を取りました。

捲ると、続きものの小説で上巻と書かれていました。


ーーまとまっていない……。せめて分類さえ分ければ読みやすいのに。


気が付けば次々と本を取り、本の分類をはじめていました。

積み上がる本。

散らかった本はなくなっていきました。


ーーシミ抜きしに来たのに。でも……気になるのです。片づけしないと……。


手に取った本の表紙を開いた時、足音が聞こえました。


「え! お姉さん、何してるの?! ちょっ、俺場所決めてたんだけど?!」


上ずった声の方へ首を傾けました。

そこには、新しいシャツを着て戻ってきた男性。

駆けて私のところまで来ました。


「本が玄関にあること自体がおかしいのです! 散らかっているじゃないですか!これでは本もかわいそうですし、整理しますよ!」

「え?! いやっ、お姉さん何しに来たの? シミ抜きでしょ?! 勝手に触らないでよ!」

「いいえ、私、決めました! 片付けさせていただきます!」

「え、なんで?! いや、シミ抜きだけでいいから!」

「こんな状況でよくそんなことが言えますね! ダメに決まってるでしょ!」


前のめりになって男性に詰め寄りました。

男性は仰け反って、口が一文字になりました。

なにか言いたそうに口が動きましたが、構いませんでした。

振り返って、本の表紙を開きました。

男性の視線がささりましたが、無視しました。

しばらく動かなかったのですが、散らかった本を手に取りました。

表紙を捲り、閉じました。


「これ、薬草図鑑なんだけど、どこに置けばいい?」

「一番奥です。」

「わかった。」


奥の積み上がった本の方へ足を向けました。

そして、そこに手に持った本を乗せたのです。

私は、口元が緩みました。

男性と私はこの後会話することなく、分類を続けました。


1時間後、玄関にもう散らばった本はありませんでした。

近くにあった本棚には、びっちりと整列している本。

ジャンルはさまざまで、外国語で書かれた本までありました。


ーーこれだけ本があるなら、図書館に行く必要ないのでは?


首を傾げますが、肩の荷がおりました。


「お姉さん、手伝ってくれてありがとう。床が見えたの久しぶりだよ。」


男性は本棚の近くで、数冊手に持っていました。

目元は見えませんが、視線を感じました。


ーー床が見えるの久しぶりというのは、いつから散らかっているのでしょう……聞きたくもないです!


口を閉ざしました。

男性が私に近づき、手に持った本を差し出しました。


「お姉さん、乳母になりたいんだろ?この本、オススメだから。持って帰って。」

「……」


本と男性を見比べました。


ーーこないだみたいな本だと、困るのですが……でも、せっかくの好意ですし……


視線が泳ぎました。

身体は半歩下がりました。

しかし、時間をかけて両手を差し出し、本を受け取ってしまいました。


「あ、ありがとうございます……」

「悪いけど、客が来る時間だから。帰ってくれる?」

「え? シミ抜きは?」


私は、一度瞬きをしました。

顔を背けられました。


「あー……自分でどうにかするよ。」

「あのっ……苦手なのですよね?」

「……」


息をするのも難しいくらいの空気が流れました。


ーー私が迷惑かけましたのに……片づけだって私が勝手に始めましたし……放っておけません。


「あのっ、私預からせてもらっていいですか?シミ抜きして、明日また持ってきます。」


ーー明日は仕事だけど、夕方以降は自由な時間ですし。その時間にここまで届ければ、いけます。


男性は顎を爪で掻きました。


「悪いけど、そうしてくれるか?」

「承知いたしました。」

「じゃあ、勝手に門を通れるようにするから、名前教えて?」

「私、カミラと申します。」

「俺は、ジグルド。よろしくね、お姉さん。」


ジグルド様は、二っと笑いました。

そして、門の方を指をさしました。

指先から淡い光の線が門の方へ向かって走っていたのです。

人生2度目の魔法。

声を上げそうになりましたが、唇を噛みました。

光が止まって、ジグルド様は私の顔を見下ろしました。


「これで門通れるから。悪い。本当に時間ないから、帰って!」


ジグルド様は私の背を掌で押しました。

私は足を縺れさせながら、お屋敷を出たのです。

一度振り返ると、すでに門は閉まっていました。

最後までありがとうございます。

本に囲まれた生活っていいですよね。

私は図書館に住みたいです笑

同志の方いらっしゃったら、連絡ください笑

では、次回もお楽しみに。

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