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乳母になりたいので子宝ベーグル片手に婚活した件について。  作者: あゆま3


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10/28

私の初めてのお宅訪問~な、なんですの?このお屋敷!~

こんにちは!

いつもありがとうございます。

楽しくなってまいりましたね!

では、続きをどうぞ!


私は今、顔は半分髪で隠れて名前も知らない、だらしない身なりの男性と道を歩いております。

私のお化粧で汚してしまった男性のシャツを染み抜きするために男性の家に伺うことになったのです。

普通に考えれば、独身の女が1人で男の家に行くなど猛獣の檻に入るようなものですが、私は行き遅れですし、男は若そうですし、恋愛小説の部屋に入り浸るような変わった方。

どう考えてもなにもないと思われますし、私のせいで男性のシャツを汚してしまった事実も迷惑をかけたのに何もしないなんて私の中で許せません。


私はそそくさと、目線を下げて男性の一歩後ろをついていきます。

私は紺色のワンピースですし、男性はだらしないながらも高級そうな服をお召しですので、一見すると主従関係のように見えるでしょう。

しかし、私ならばこんなシワシワのシャツなんて断じて主に出しませんし、これでは私がひどくポンコツな従者に見えて嫌なのです。

最初は半歩後ろに控えておりましたが、だんだん距離を広げてしまいます。

すると、急に男性が目の前で立ち止まり、振り返りました。


「歩くの早かった?」


「いいえ、そんなことはございません。」


周りから私がポンコツに見えるから近くにいたくなかった、なんて男性に失礼で申し上げられないのです。

至って冷静に申し上げようとしましたら、思ったより冷たい言葉が零れておりました。


「ふぅん、そう。」


男性はその後なにも言わず前に進みますが、心なしか先ほどよりスピードが緩くなっているようでした。

こんな私にも気を使っていただけるなんて、見た目からは想像できません。

その後も私は1歩後ろを付いていきました。




十分程度歩いたでしょうか。

目の前には古いですが、立派なお屋敷があります。

まさかと思いましたが、男性はこのお屋敷の前で立ち止まりました。

男性と屋敷を二度見比べましたが、このお屋敷で間違いなさそうです。

男性は慣れた手つきで門に手をかざすと、淡い光を発して勝手に扉が開きました。


「え?魔法…。」


「そうだけど。なに?」


初めて見ました。魔法です。

私は目を皿にして再び門と男性を2度拝見してしまいました。

男性はなにごともなかったように言いますが、魔法はこの国で一握りの人間しか使えません。

大体は要職についていることが多く、こんな田舎では、領主様や騎士くらいしか使えないのです。

もちろん、私は使えません。

そんな魔法をたった今、目の前で使ったのです。

私はとんでもない男性の家に来てしまったのかもしれません。

しかし、こんな大きなお屋敷の方ならシミ抜き程度メイドがしてくれるでしょう。

なぜ、私を家に呼んだのか理解しかねますが、おそらく頑として乳母になることを譲らなかった私を説得するためかもしれません。

奥歯を噛みしめ、絶対に乳母になることは譲らないと心に決めて男性の後ろについて門をくぐったのです。


門を潜ると勝手に門が閉まり、鍵がガチャリと背後でかかりました。

私は振り返って目を凝らしましたが、やはり何度見ても閉まっていて、これで勝手には帰れなくなってしまいました。

逃げるつもりはございませんが、逃げれないと思うと足がすくみます。

門を潜っても従者がお出迎えすることなく、遂に玄関までついてしまいました。

こんな立派なお屋敷であれば使用人は沢山いるはずですのに、一人も出てこないなんておかしいのです。

そもそも、護衛やお付きの者もつけずに一人で図書館にいたことも理解ができません。

一般的な常識とかけ離れた現状に頭が付いてきませんが男性は迷いなく玄関の扉を開けました。


「散らばってるけど、気にしないで。」


散らばっているとはどういうことでしょうか?

そんなはずはございません。

ゆっくり目線を家の中に移しますと、そこには、本、本、本。山のような本でした。

本が沢山乱雑に散らばっていたのです。


「まぁ!!!」


ここの使用人は何をしているのでしょう。

玄関ですのに、この状態では客人も迎えられませんし、なにより主人の心も休まらないでしょう。


「これは…使用人はどうしたのですか?」


人のお屋敷の事ですから、口出しするのもどうかとは思いましたが我慢がなりません。

主人である男性がこんなシワシワの服で泥のついた靴を履いている理由が分かりました。

私が来たからには、徹底的に使用人を教育しなければなりません。


「いないよ。俺一人。」


「は?」


幻聴が聞こえたのでしょうか。

こんな大きなお屋敷に一人のはずがございません。

冗談にしては笑えませんし、男性が嘘をついているようには見えませんでした。


「俺、誰かに世話されるの嫌いだから。」


「…。」


きっとお若いですし、心が十分に成長しないまま大人になってしまわれたのでしょう。

おそらく平日の昼間に図書館の恋愛小説の部屋にいるくらいですから、仕事もしていないでしょうし、親の脛をかじって生きているのでしょう。

私は顔から表情が抜け、お面のようになってしまいました。

そうなれば、用事を済ますとさっさと帰ることが賢い選択のように思えて、早急に男性のお洋服をシミ抜きすることに決めたのです。


「シミ抜きいたしますので、お洋服をお召し替えいただけますか?」


「わかった。」


そう言うと、男性はおもむろにお洋服を脱ぎ始めたのです。


「ななななななな!!!!」


私は思わず目に手をあてて男性から目線を外しました。


「え?なに?」


「ここは玄関ですよ!女性の前でそんなことしたらいけません!!!」


「あー、お姉さん乳母になりたいのにそんなんじゃ無理なんじゃない?」


「それとこれは別です!!」


「へーへー。」


男性は床にシャツを放り投げ、頭をかきながら本の隙間を縫ってどこかに向かわれました。

私は玄関から動けず、熱を持つ顔を押さえますがなかなか引きません。

男性の体を一瞬見えてしまい、心臓が壊れそうなくらい暴れまわります。

忘れようとしますが、意外に着やせするタイプらしく実は筋肉質でお腹が6つに割れていたとか、胸板がしっかりしていたことが目の裏に焼き付いてしまって離れないのです。


ふと、目に入った男性が床に落としたシャツを拾い上げます。

私はシャツを抱え男性はどこに行ったのかわかりませんが、部屋全体を見渡しました。

なぜ、玄関にこんな本があるのか理解できませんがこんな状態では心を休めることはできないでしょう。

そう思うと、体が勝手に本を拾い上げました。

ペラペラとめくるとなにやら歴史書のようでした。

また目に入った別の本を取り上げると続きものの小説で、乱雑に本が散らばっていることが分かりました。

せめて本の分類さえできていれば読みやすいのですがと思ってしまい、気が付けばせっせと分類をはじめてしまいました。

私、一度始めるとやり遂げるまで次のことができないのです。

さっさと本の分類をやめてシャツの染み抜きをすればいいものの、視界に入る本が気になります。


「え!お姉さん、何してるの?!ちょっ、俺場所決めてたんだけど?!」


新しいシャツを着て戻ってきた男性は焦って私の行動を制止しようとしてきましたが、玄関の床に本があること自体がおかしいのです。


「散らかっているじゃないですか!これでは本もかわいそうですし、整理しましょう!」


「いやいや!お姉さん何しに来たの?染み抜きでしょ?!」


「いいえ、私決めました!片付けさせていただきます!」


「なんで?!いや、染み抜きだけでいいから!」


「こんな状況でよくそんなことが言えますね!だめに決まってるでしょ!」


私は男性を無視して本を片付け始めました。

男性は唖然と私を見つめましたが、頭をかくと観念したのか一緒に分類を始めました。


~1時間後

玄関にある大体すべての本を分類して整理いたしました。

恋愛小説が多いのかと思いきや、ジャンルはさまざまで外国語で書かれた本までございました。

これだけ本があるならば図書館に行く意味はさなそうなのです。

不思議に思いましたが、一応整理までできましたので心がすっきりしました。


「お姉さん、手伝ってくれてありがとう。床が見えたの久しぶりだよ。」


本を数冊手に持ちながら、男性は私にお礼を言ってくださいました。

床が見えるの久しぶりというのは、いつから散らかっているのでしょう。

聞くことがこわくて、口を閉ざしました。


「お姉さん、乳母になりたいんだろ?この本、オススメだから。持って帰って。」


先日のお薦めがお薦めだっただけに、思わず後退りしましたがせっかくの好意なのです。

受け取らないわけにはいかないのです。

おずおずと本を私は受け取りました。


「あ、ありがとうございます…。」


「悪いけど、客が来る時間だから。帰ってくれる?」


「え?染み抜きは…?」


ここに来た理由は染み抜きなのになにもしないまま帰るのは忍びないのです。


「あー…自分でどうにかするよ。」


「苦手なのですよね?」


「…。」


時間もなさそうですし、シャツの数も少ないとおっしゃっていました。

男性は困ってらっしゃるでしょうし、ここは私が屋敷で染み抜きして持ってくるのが得策でしょう。


「染み抜きして、明日また持ってきてもよろしいですか?」


明日は出勤することになっていますが、夕方以降はレオン様がお嬢様をお放しにならないので自由な時間があるのです。

その時間にここまで届ければ、どうにかなると考えたのです。


「悪い。そうしてくれるか?じゃあ、勝手に門を通れるようにするから名前教えて?」


「カミラと申します。」


あの魔法の門のことでしょうか。

勝手に入れるようにするなんて、防犯上どうかと思いましたが私が困りますので、素直に申し上げました。


「俺は、ジグルド。よろしくね、お姉さん。」


ジグルド様は、門の方を指さすと淡い光の線が門の方へ向かっていきました。

人生2度目の魔法に目が皿になりましたが、侍女として声を上げることは我慢いたしました。


「これで門通れるから。悪い。本当に時間ないや。帰って!」


ジグルド様は私の背を押したので、私は走ってお屋敷を出たのです。





最後までありがとうございます。

本に囲まれた生活っていいですよね。

私は図書館に住みたいです笑

同志の方いらっしゃったら、連絡ください笑

では、次回もお楽しみに。

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