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革命のリリィ  作者: 鳩ポ
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二十一話 覚悟と方針

私は、一度深呼吸をし、心の中で自分を奮い立たせた。胸の鼓動が高鳴るのを感じながら、全員の視線を受け止め、しっかりとみんなの目を見つめる。そして、力強く声を張り上げた。


「私は――勝ちたいんです!」


その瞬間、広間全体が静まり返った。驚きと戸惑いが混ざった隊員たちの顔が一斉に私を見つめる。私はその視線にひるむことなく、鋭い目を返してさらに言葉を紡いだ。


「私は、絶対にAIから人権を取り戻す。それには、皆さん一人一人の協力が必要です!」


場に漂う緊張がさらに増す。誰もが私の言葉を真剣に受け止めているのがわかった。私は一息つき、さらに心の内を伝えるため、声を震わせながら続けた。


「でも…どうか、死なないでください。もし『ヤバい、死ぬかもしれない』と感じたら、一目散に逃げてください。未来に希望を託して命を捨てるなんて、そんな悲しいことはしないでください!」


その言葉を聞いた数人の目が揺れ、唇を噛む音が聞こえた。私が伝えたいのはただ一つの願いだ――彼らが生き抜くこと。


「私は、副船長になりたかったわけではありません。ただ、これだけは皆さんに知っておいて欲しいんです」


私は視線を一人一人に送り、目の前にいる仲間たちに心から語りかけた。彼らの顔には、戦いの中で何度も傷つき、何度も立ち上がってきた決意が刻まれている。


「私たちは、AIを打ち倒し、必ず自由を取り戻す。そして、戦いとは無縁の平和な世界を築く。その時、最初にその世界に立つべきは、ここでずっと戦い続けてきた皆さんであるべきです!」


静かな空間に響く私の声が、やがて大きな鼓動のように広がり、隊員たちの心に火を灯していくのを感じた。隊員たちは無言のまま、しかしその眼差しは輝きを取り戻しつつあった。


「私も副船長になったからといって、戦いから身を引くつもりはありません。これまで通り、最前線で戦い続けます。しかし、今だけはこの副船長という立場を使わせていただきたいと思います。」


私は胸の中に溢れる思いを抱え、思い切り息を吸い込んだ。そして、しっかりとした声で続けた。


「このレヴナントに新しいルールを追加します!それは――『絶対に死なないで生き抜くこと』です!」


その言葉が場を震わせるように響く。隊員たちは一瞬息を飲み、互いに顔を見合わせた。重い戦場でのルール、そんなものを誰も聞いたことはなかった。


「皆さん、人類の生き残りとして、時には醜くても、必死にもがいてください。どんな手を使っても、生き延びることに全力を注ぎましょう!」


その言葉に、レヴナントの隊員たちが雄叫びを上げた今まで数え切れないほどの戦いを経験し、命の重さを知る彼らだからこそ、このルールが胸に響いたのだろう。生き抜くために、誰もが心の中で新たな誓いを立て始めていた。


私は静かに舞台を降り、涙を浮かべながら抱き合い、闘気を燃やしている隊員たちの間をすり抜け、自分の席へと戻った。そこには、ルーカスとリニアの二人が待っていた。


「ありがとう、リリィ。」


ルーカスが私の肩にそっと手を置いて話しかけてきた。その目は、いつも以上に優しさをたたえていて、心が温かくなった。


「副船長になったからって、私より立場が上になったと思わないことね!すぐにその副船長の座を奪ってやるんだから!」


リニアは、いつものように挑戦的なドヤ顔を見せているが、その口調には温かみと信頼が感じられた。仲間としての絆が、今まで以上に強まっているのがわかる。


私は小さく微笑み、二人を見つめた。そして、思いを新たに言葉を口にする。


「まだ、やるべきことは何一つ終わってないわ。これからが本当の戦いよ。頑張ろうね、みんな。」


その言葉に、ルーカスは力強く頷き、リニアは笑顔を浮かべながら拳を突き出した。私たちはそれぞれの決意を胸に抱き、これからの厳しい戦いに向かう覚悟を新たにした。



数日後―――



船長室のドアには「立ち入り禁止」の張り紙が貼られていた。中では緊張感の漂う空気が張り詰めている。


「今後の作戦について会議をしようと思う。」


ゲンテツが低い声で話し始めた。私は軽く頷き、「わかったわ」と返事をする。


「リリィはどうすればいいと思う?」


「は?」


予想外の質問に私は一瞬言葉を失った。どうすればいいか、なんて漠然としすぎている。もっと具体的に聞いてほしいものだと内心で思う。


「えっと、もう少し具体的な質問をしてくれますか?」


「え?具体的?」


2人の間に数十秒の沈黙が流れる。


「もしかして、何も考えてないの?」


会話が続くにつれ、私の胸に広がる違和感は増していった。最初に私を絶望から救い出し、全員の希望となったあの威厳に満ちたゲンテツの姿が、話すほどに崩れて見えていく。


静かな船長室に、微妙な緊張感が残響のように響き渡っていた。


私は心の中でため息をつきながら、言葉を選びつつ口を開いた。


「まず一つ言えるのは、香港には行かない方がいいと思います。もし本当にクイーンよりも強力なAIが存在しているなら、私たちは確実に全滅するでしょう。」


ゲンテツは私の言葉に頷き、眉間にシワを寄せて応じた。


「まぁ、そうだろうな…。でも、どこへ行こうと、いずれそのAIと対峙することは避けられない。後回しにするだけで、良い結果を生むとは限らない。」


彼の言葉は真実だった。香港へ行かない場合、次に向かうべき場所はどこなのか?そして、その選択が将来、香港のAIを倒すための足がかりになるのか?いや、そもそも香港のAIに勝ったところで、人類復興にどれだけの影響があるのか?


私の思考は渦巻き、次第に沈黙が船長室に広がった。そんな私を見て、ゲンテツが問いかける。


「リリィ、お前が考えているのは…『香港のAIを倒して何が得られるか』、そういうことだろ?」


その通りだと気づいた私は、ハッとしながら彼の言葉に頷いた。「あ…はい。私は、倒すべき敵が本当に何なのか、それを見極めるべきだと思います。」


ただ単に強力な敵を倒すだけでは、人類の未来に繋がるとは限らない。もし香港のAIを打ち倒しても、それで得られる利益がわずかならば、その戦いに価値はない。そう、私たちは、今この瞬間だけでなく、その先に待つ未来まで見据えて選択をしなければならない。


ゲンテツの目が鋭く光り、再び問いかけてきた。


「なら、お前の考えでは、どの敵が本当に倒すべき相手だ?」


その問いに答えるべく、私は自分の心の中で再び整理し、慎重に言葉を探し始めた。


「まず、強いAIを倒すにも圧倒的に人材が足りません…。ヒューマンコロニーを見つけ出して増援を求めるという案も考えましたが、今残っているヒューマンコロニーはAIが50年以上探しても見つけられなかったものばかりです。そんな簡単に見つかるとは思えません。」


ゲンテツは腕を組みながら頷いた。私の言葉に耳を傾けている。


「ならば…少人数であっても、一人ひとりが飛躍的に戦闘力を高められる場所に行くしかない。」


その時、私の頭の中に一つの答えが浮かんだ。


――軍事施設…。


ゲンテツが問いかける声が現実に引き戻す。


「ん?軍事施設だって?」


心の中でつぶやいたつもりが、思わず口に出ていたようだ。少し動揺しながらも私はすぐに真剣な表情に戻し、冷静に答えた。


「そうです。私たちが本当に倒すべきAIが何なのか、まだはっきりとはわかりません。でも、それに立ち向かうためには圧倒的な力が必要です。力がなければ何も始まりません。」


ゲンテツは驚きながらも、私の意図を理解しようとするようにじっと見つめていた。


「なるほど…」


「軍事施設には、過去の人類が生み出した強力な武器や戦闘技術、さらにそれらを今のAIが強化した超近代兵器があるはずです。それを私たちのものにできれば、戦況は大きく変わる。いっそのこと、その施設にいるAIの制御を奪って、逆に味方につけることも視野に入れられれば…」


私は、微かに不敵な笑みを浮かべた。ゲンテツの目が驚き見開かれ、息をのんだ様子だった。


「本気か、リリィ…。その発想は、想像以上に大胆で実現できるかどうか。」


「本気です。軍事施設を攻める方が最強AIに突っ込むよりましですから。」


その瞬間、部屋の空気がピンと張り詰めた。ゲンテツの表情には、新たな闘志の光が宿っていた。私もまた、自分の中に燃え上がる熱を感じた。


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