十三話 新鉄鬼隊 No.2
私はニヤリと笑い、腰に左右に備えた剣の柄を軽く撫でた。そう、二刀流だ。
かつての一刀流では、鞘に剣を戻してから加速させるまでの時間がロスタイムになっていた。しかし、今は違う。二刀流にすることで、その無駄を完全に解消できたのだ。
柄をしっかりと握り、目の前のAIに標準を定める。
その瞬間、義足のエンジンをフルスロットルにした。
――ゴォォォォ!
エンジン音が轟くと同時に、私はかつての電光石火を超える速度で加速。周囲に衝撃波を放ちながら、わずか1秒もかからずにレヴナントの足元へと到達した。風圧が肌に刺さる感覚に、全身が高揚する。
「さぁ、始めようか」
私とほぼ同時に到着したリニアが、私のあまりの速度に目を丸くしているのが見えた。
「あんた、早いわね…。」
さっきまでずっと上から目線だったリニアのその反応に、優越感が胸の中で湧き上がる。思わず口元がほころびながら、私はモーター式微振動剣を起動させた。
――ギィィイ――
モーター音が響くと同時に、刃が勢いよくアリの大群へと発射される。この速度、普通の人間なら反応する間もなく吹き飛ばされるだろう。しかし、その勢いを私の義手の強力な握力でしっかりと抑え込む。義手がギリギリと音を立てながらも、刃を寸分の狂いもなく制御する感覚が手に伝わってくる。
「この威力なら、一瞬で片付けられる…!」
思考が走る間もなく、刃はAIの大群に突き刺さり、次々と切り裂いていく。その様子を見たリニアが、一瞬だけ動きを止め、驚きと焦りを混ぜた表情を浮かべているのが視界の端に映る。
「どう? これが私の戦い方よ。」
驚くリニアに向かって、私は少し彼女の真似をして、精一杯のドヤ顔を見せてやった。
しかし次の瞬間、リニアが勢いよく走り寄ってきて、私を思い切り突き飛ばした。
「何すんのよ!」
怒りが一気に頂点に達し、私はリニアに向かって怒鳴ろうとした。だが、視線をリニアに向けた瞬間、その言葉は喉に引っかかった。
リニアは大鎌を手にしながら、足元にある正方形のコアのようなものを必死に押さえ込んでいた。
私を突き飛ばしたのは、このコアに反応したリニアの素早い判断だったのだと気づいた。
「まさか...これが...」
私は思わず声を漏らしながら、彼女の動きに目を奪われた。
「あんたもまだまだね。実践経験が無さすぎるわ!」
リニアがそう言い放った瞬間、彼女は鎌を振りかざし、コアに鎌の先を力強く刺した。
「ヘルファイア、解放!」
その掛け声と共に、リニアが押さえ込んでいたコアが一瞬で高熱に包まれ、じりじりと溶け出す。そして、次の瞬間――轟音と共にコアが爆発。煙が舞い上がり、その中から現れた彼女の姿は、まるで闇の中から現れた悪魔のようでありながら、どこか美しさを感じさせるものだった。
「集団で固まってるAIには核となる個体がいるのよ。そいつが他の個体に指示を出してる。だから、まずはそいつを潰せば全部無力になるってわけ。」
そう言いながら、リニアは鎌を肩に担いでこちらを一瞥した。その言葉には確かな自信と、実戦で培われた経験が滲み出ていた。
私はその時、ハッと気づいた。リニアをただの傲慢な奴だと決めつけていたが、どうやら考えを改める必要がありそうだ。
「ありがとう……助かったよ。」
素直に礼を言うと、リニアは一瞬だけ驚いた顔を見せたが、すぐに顔をそむけて、まるで照れ隠しをするかのように吐き捨てた。
「礼なんていらないわ!あんたも十分強かったじゃない。あの剣、使える人がいなくて正直困ってたのよ。ま、悪くないわね。」
そう言いながら、彼女の頬がほんの少しだけ赤く染まっているのを見逃さなかった。どうやら、彼女は俗に言う”ツンデレ”というやつだろう――いや、正確には”ツンツンツンデレ”ってところだね。
「ねぇ、せっかく同じ隊に入ったんだから、名前で呼んでもいい?」
私がそう言うと、リニアは少し驚いた顔をしてこちらを見た。
「あんたなら、別にいいわよ。」
「いや、あんたじゃなくて…名前で。」
リニアは少し恥ずかしそうに目をそらし、頬を赤くしながら口を開いた。
「リ…リリィなら、別に…いいわよ。」
「ありがとう、リニアちゃん!」
私が嬉しそうにそう言うと、リニアはますます顔を赤くしていた。その様子が少し可愛らしくて、思わず笑みがこぼれる。
そんな会話をしていると、ルーカス君がこちらに戻ってきた。
「僕の出番、なかったね。」
彼は残念そうに肩をすくめながら、自分のライフルを見下ろしている。せっかく大剣を変形させたのに、使う機会がなかったことが少し悔しかったのだろう。少し申し訳ない気持ちで彼を見ながら、私は心の中で今度は彼にも活躍の場を作ってあげようと決意した。
「ルーカスには積極性が無いのよ。」
リニアがからかうように言い放つ。ルーカス君は苦笑いを浮かべて、肩をすくめた。
「まぁ、戦い方にはいろいろあるんだよ。僕はサポートに徹するのが好きなんだ。」
その言葉にリニアは「ふん、言い訳にしか聞こえないわね」と鼻で笑うが、どこか楽しそうだ。二人のやりとりを見て、私は少しだけ安心した。リニアも冷やかしているだけで、本当に嫌っているわけではないのだろう。
「ともかく、今日のミッションはこれで終了よ。お疲れさま。」
リニアが軽く手を振りながらまとめると、私はほっと息をつき「これからもよろしく」と答えた。
「こちらこそ。」
リニアは気の抜けた様子でそう返すが、その表情にはどこか満足感が漂っている。
こうして、私にとって初めてのミッションが無事に終わりを迎えた。緊張していたものの、リニアやルーカスと少しずつ距離が縮まったことを感じて、これからも彼らと共に戦っていけるという確かな手応えを感じていた。
次に何が待ち受けているかは分からない。でも、私はもう恐れることなく、この新しい仲間たちと共に歩んでいけると確信していた。




