十二話 新鉄鬼隊!
――30分後、私は叱られていた。
「じゃあ、これで隊の正式な任務を……」
リリィがこれからの任務に向けてやる気を出していたその時、リニアが突然、彼女を睨みつけた。
「ちょっとあんた!いったい何考えてるの!?どうして私に挨拶もないわけ?レディに礼儀ってものがあるでしょうが!」
「えっ?あ……おはようございます?」
リリィは戸惑いながら返事をするが、リニアはその答えにさらに憤慨した。
「おっそいのよ!もう何分経ってると思ってるの!?それにさっきも、私が話してるのにあんた、どこ見てたの?私はこの髪型に30分かけてんの!それを無視するなんて、ありえないでしょ!」
リニアの言葉にリリィはますます混乱する。彼女にとっては、髪型や挨拶よりも、これからの戦闘準備の方が重要だと思っていたのだが、リニアの世界ではそれは大問題らしい。
「えっと……その、すみません?」
「謝るならもっと早くしなさいよ!全然わかってないわね、ほんとに!」
理不尽な怒りに晒されるリリィは、ただただ呆然としながら、なぜ自分がこんなに怒られているのか理解できない。横で細身の男が、軽くため息をつきながらリニアをなだめようとしていたが、彼女の怒りは収まる気配がない。
「うっさいわね、ルーカス!私に意見しないでくんない?」
今度はルーカス君が怒鳴られた。彼はいつものように怯えた様子で、反論することもなく、ただ黙っていた。細身の彼は、どこか弱々しく、リニアに完全に振り回されている。
「ふん、もういいわ。私、先に出口で待ってるから。早く来なさい!」
リニアはそう言い残し、縦ロールの髪を揺らしながら、曲がり角の向こうへと姿を消していった。
私はルーカス君を見つめ、少し呆れながら声をかけた。
「ルーカス君、あれでいいの?もっとガツンと言ってやってもいいと思うんだけど。」
ルーカスは私の言葉に反応せず、しばらく無表情でいた。沈黙の中、彼は静かに息を吐くと、やっと口を開いた。
「いいんだよ。彼女、実力は本物だからさ。僕が下手に出てご機嫌とっておいた方が、AIをたくさん殺してくれるし…。」
その言葉に、私は思わず背筋が凍った。
なるほど、こいつもダメだな。人を道具としてしか見ていないんだ。
ルーカスの言葉には冷たさと計算が感じられた。私が感じた不安は、ただのものではなかった。
「えっと、私たちも行こうか。」
流れそうな汗を堪えながら、私はそそくさと出口へ向かった。
『鉄鬼隊、出陣します!』
掛け声と共に、レヴナントの巨大な扉がゆっくりと開かれていく。
――――――――――――外――――――――――――
外に出た瞬間、私はその光景に息を呑んだ。
「森だ…。」
今まで生まれてからずっと砂漠しか知らなかった私は、目の前に広がる緑の世界に心を奪われた。初めて見るその風景に、自然と感動がこみ上げてくる。
「何、当たり前のこと言って泣いてんのよ。」
感動に浸る間もなく、リニアが呆れたように私をどついてきた。
「行きますよ。任務を説明しますね。」
「敬語なんだね。」
「任務ですから。」
淡々としたルーカスの言葉に、少し肩透かしを食らったが、すぐに彼が任務の説明を続けた。
「私たちに指示が下された内容は、レヴナントの前方右側の足に機械がこびりついて、進行を妨げているというものです。それを除去します。今回のAI Levelは1とされていますが、他のAIにも警戒しつつ、迅速に終わらせるよう命じられています。」
『りょーかい!』
全員の声が揃うと、私たちは森の中へと足を踏み入れ、草をかき分けながら前方の足に向かって歩き出した。10分ほど進んだところで、目的の足に到着した。
「これかぁ…。」
目の前には、アリのような形をしたAIが群れをなして、レヴナントの足の節にしがみついていた。まるで巨大な団子のように、うごめくその姿にぞっとする。
「気持ち悪いわね!」
リニアが一言吐き捨てたかと思うと、突然前に出て言った。
「じゃ、ちょっと行ってくるわ。」
行ってくる?……。え?
「ちょっと待って!作戦は!?」
私は突然のリニアの行動に取り乱したが、彼女は振り向きもせず答えた。
「知らないわ!あんたらは私の援護でもしてなさい!」
そう言い放ちながら、リニアは自分の身長の2倍ほどもある大きな鎌を取り出した。そして、私が戸惑っている間に、彼女はその鎌を軽々と振り回しながらレヴナントの足に向かって猛然と駆け出していった。
「僕は援護に回ります。」
そう言いながら、ルーカスは背中に背負っていた大剣を取り出した。
「大剣を使うのに援護に回るんですか?」
不思議に思って問いかけた私に、彼は自信ありげに笑いながら答えた。
「まあ、見ててください。」
次の瞬間、彼の手に握られた大剣がガチャガチャと機械音を立てて変形し始めた。刃が収縮し、柄が伸び、あっという間に立派なライフルの形に変わった。
「僕の武器は銃剣です。男だから、こういうの好きなんですよ。」
そう言って、ルーカスは軽く肩をすくめてみせた。確かに、2メートル近くある巨大なライフルを見ると、私も自然と興奮を抑えきれなくなった。
「すごい……それ、撃ったらすごい反動がありそうだね。」
「慣れれば何とかなるさ。さて、そろそろリニアの援護をしないとね。まぁ援護というか君の強さも見たいしガッツリ戦って来ちゃっていいから。」
「わかりました!」
そう言いながら、私は新しくなった自分の剣にもっと興奮していた。




