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アーク 2:第2章: 沼地の神殿と粘液の浄化


[第一節:神殿への侵入と女神の嫌悪]


ヴァレイラとブリナは、古びた神殿の入り口をくぐった。


石造りの壁は黒いカビと腐りかけた蔦に覆われ、そこから湿気を含んだ水滴が滴り落ちていた。


沼地と腐敗の悪臭が、入った瞬間にヴァレイラの鼻を襲った。


(……何なの、この臭い。


女神である私にふさわしくない、あまりにも不快な臭いだわ。


もし虫が私の帽子に落ちてきたら……この場所ごと焼き払ってやるんだから。)


一方、ブリナは子供らしい好奇心を発揮しながら先を歩き、壁に触れたり、目を輝かせながら周囲を観察したりしていた。


「ヴァレイラ様、見てください! ここに古い壁画がありますよ!」


神殿の奥へ進むにつれ、周囲は次第に暗くなっていった。


ヴァレイラはダイヤモンド魔法で浮遊する水晶を生み出し、周囲を照らした。


その光が闇を払い、中央に据えられた祭壇を浮かび上がらせる。


祭壇は、馬車の車輪を動けなくしていたものと同じ、緑色の粘液に覆われていた。


「……やっぱりね。


この気持ち悪い物質の発生源は、ここにあるようね。」


◆◆◆


[第二節:沼地のスライムの出現とパニック]


二人が祭壇を調べようとした、その直前だった。


床や壁にこびりついていた粘液が、不気味にうごめきながら一か所に集まり始めた。


そして、三体の巨大なゼリー状の怪物が暗闇から姿を現した。


沼地のスライム。


体内では不気味な核が輝き、ぬめった目のようなものが浮かび上がっている。


その身体は、湿った不快な音を立てながら形を変えていた。


三体のスライムは、出口を塞ぐように立ちはだかった。


ヴァレイラの精神は、ある意味で崩壊寸前だった……。


死への恐怖からではない。


あの粘着質な物質が、新調したばかりの宮廷魔導士の制服に触れることを想像しただけで、耐え難い嫌悪感に襲われたのだ。


(……いやああああっ!!


私の服に触らないで!!


せっかく宝石を手に入れたばかりなのよ!?


この制服も! 私の尊厳も!


全部台無しにする気なの!?


この気持ち悪い緑色の化け物ども、さっさと消えなさい!!)


ブリナは素早く反応した。


後方へ跳び退き、弓を構えると、警戒した声で告げた。


「ヴァレイラ様! あの魔物たち、祭壇を守っているみたいです!」


◆◆◆


[第三節:粘液の攻撃とブリナの射撃]


スライムたちは攻撃を開始した。


酸性の粘液を勢いよく飛ばし、その液体が石の床に触れるたび、恐ろしい音を立てながら表面を侵食していく。


ヴァレイラは必死に平静を保ちながら、ダイヤモンドの結晶を展開した。


「ダイヤモンド・シールド!」


しかし、粘液が結晶にべったりと張り付き、その防御効果を弱めていることに気づくと、彼女の苛立ちは一気に増していった。


(……くっついてる!?


私の完璧なダイヤモンドに、くっついているじゃない!!


こんな屈辱、あってたまるものですか!)


そのとき、ブリナが勇敢な一面を見せた。


女神の防御に合わせて動きを調整しながら、彼女は正確な狙いで矢を連続して放った。


矢は二体のスライムの体内で輝く核を、見事に貫いた。


ドォン! ドォン!


二体の魔物は爆発し、無害な泥の水たまりへと変わった。


ヴァレイラは口には出さなかったものの、心の中では誇らしげに思っていた。


(……よくやったわね、ちびっ子。


……まあ、本人には絶対に言ってあげないけれど。)


◆◆◆


[第四節:魔導書と浄化の呪文]


残された最後のスライムは怒り狂い、先ほどの二倍ほどの大きさに膨れ上がった。


そして、ブリナに向かって一直線に襲いかかった。


その瞬間、ヴァレイラは嫌悪感を忘れ、保護本能のままに行動した。


彼女はブリナを守るため、迷わずその前に立ちはだかった。


「この子に触れることは、絶対に許さないわ!」


その言葉に呼応するかのように、**『願いの魔導書』**が強烈な紫色の光を放った。


汚れを消し去りたいという、彼女の切実な願いに応えたのだ。


ヴァレイラは、これまでのように固体の水晶を生み出すのではなく、まったく新しい形でマナを練り上げた。


「ダイヤモンド・クレンズ!」


彼女の掌から、ダイヤモンドの輝きを帯びた浄化の熱波が放たれた。


その力はスライムのゼリー状の身体を瞬く間に完全分解し、澄み切った水へと変えていった。


さらに、その浄化の波は祭壇を覆っていた粘液までも一掃した。


神殿は、静寂に包まれた。


◆◆◆


[第五節:遺物の発見と神秘の解毒剤]


ヴァレイラは、服が無事であることを確認し、安堵の息を吐いた。


「……ようやく終わったわね。


これで、きれいになったわ。」


浄化された祭壇を調べると、二人は今回の事件の原因を発見した。


そこに置かれていたのは、小さな神秘的な小瓶だった。


その中には、**「粘液の母なるエッセンス」**と呼ばれる魔法触媒が収められていた。


おそらく、黒の悪魔たち、あるいは彼らに従う盗賊たちが、商業用の馬車を罠にかけるために仕掛けたものだろう。


ヴァレイラは優越感に満ちた笑みを浮かべながら、その小瓶を懐にしまった。


(……これは都合がいいわね。


魔導書に残された魔力を、このエッセンスと組み合わせれば、車輪に付着した粘液の効果を逆転させられるはず。


完璧ね。)


◆◆◆


[第六節:完璧な勝利とルート3への進軍]


二人は急いで街道へと戻った。


御者は相変わらず馬車を動かそうと必死になっており、泥と汗にまみれていた。


ヴァレイラは優雅かつ芝居がかった仕草で魔導書を掲げ、車輪へと向けた。


「よく見ていなさい。」


彼女は「粘液の母なるエッセンス」を利用し、自らの魔法をわずかに加えた。


次の瞬間、車輪に絡みついていた緑色の粘液が、跡形もなく溶けて消え去った。


御者は感動のあまり、その場にひざまずいた。


「おおおっ!! 魔導士様……あなたはまさに奇跡そのものです!!」


すると、ブリナも負けじと胸を張った。


「私だって魔物を倒しましたよ! スライムを二体も!」


こうして一行は、再び馬車へと乗り込んだ。


ちょうどそのとき、空から雨が降り始めた。


馬車は雨に濡れる街道を走り出し、ルート3へと向かっていく。


ヴァレイラは懐にしまった小瓶を、横目でちらりと見つめた。


(……今回の沼地の罠……。


偶然なんかじゃないわね。


また誰かが裏で糸を引いている……。


……まったく、面倒なことになったものね。)


雨の中、馬車は次なる危険が待ち受ける場所へと進んでいった。


◆◆◆


アーク2・第2章 完

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