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ひよっこ錬金術師ヴィータちゃん

 お師さまに任された仕事をやる為に、私の作業室へと入る…前に、そっと部屋の中の様子を伺います。

 お師さまに対応してもらいましたが、先ほどの実験で出来てしまった謎の生命体Xがどうなっているか分かりませんからね…


「おお〜…あのよく分からない、ぐちゃぐちゃの呻く何かが綺麗さっぱり消えています!」


 酸や毒をかけても膨れ上がるばかりだったあの『呻くぐちゃぐちゃ』が綺麗サッパリですよ!小型錬金釜の中を覗いてもカケラも見当たりません!さすがお師さまは格が違いますね…


「さてと、低級傷薬となると錬金釜はそこまで必要無いですが…とりあえず、精製水を用意しますか!」


 お師さま曰く、【あらゆる錬金の基礎は水の精製から始まる】と言われるそうです!

 大抵の水薬はもちろん、粉薬を作るにしても『抽出』や『精製』などの過程で綺麗な水が必要になったりしますし、精製水が関係しない物はそう多くないと聞きます。

 その上、機具の清掃にも使ったりしますから…つまり、錬金術は無茶苦茶大量の水を使うと言う事ですね!


 なので、精製水は基本的に大量に作り置きしておく物なのですが…お師さまはまだ私に精製水の作り置きを許可してくれません。

 お師さまが言うには「まだまだ見習いなんだから、水の精製を通じて技術の基礎を固めな」との事ですが、流石に精製水の作り置きくらいは解禁してくれても…なんて思ったりしない訳ではありません。


 とにかくぶちぶち言っててもしょうがないですし、早速精製水の作成に取り掛かりますよ!


「お水と攪拌用の棒に、あとは純化石はあるから…」


 水の精製に必要な物を手早く集め、作業を開始する前に改めて確認します。


「消火器、よし!周囲に危険な薬剤、なし!各種医薬品、よし!流石に水の精製でやらかす事は無いでしょうけど、数日後にはお師さまも居ないんだから安全策はしっかり用意しておかなきゃですよね!」


 今後の事も考えて、普段よりも慎重な準備を心掛けましょう。火を扱うので消火器を用意して、周囲に爆発したり激しく炎上したりする薬品が無い事を確認します。


 さて、安全確認も済んだ事ですし、いよいよ錬金を開始します…が、その前に!錬金術についての説明がまだでしたので、簡単に説明しておきましょうか!


 錬金術とは…大元は『生命の根源』や『不老不死の薬』、『卑金属を貴金属へ変換する方法』などのすっごい技術を研究する為の物だったそうです!

 その過程で様々な薬品や特殊な物質が生まれ、その中に人の暮らしを豊かにする物が多くあったのです!私が今から作る傷薬なんかもその内の一つですね!


 そして、錬金術には色々な『流派』があるのです。どのような方法で、何を求めるのかによって色々と変わるそうですが…現在私が教わっているのは『力術』と『生命術』の複合系です!

 『力術』は色々な『力』を利用して反応を起こす流派で、『生命術』は自身の生命力の余剰エネルギーを利用する流派です!それぞれメリットデメリットがありますが、そこら辺はややこしいのでまた別の機会に…


 まあ、何を言いたいのかと言うと、つまり私は…『力術』をベースに反応を起こして、『生命術』でイイ感じに調整する方法を教わっているのです!


 このお家は大きな【地脈】の上に建っているらしいのです。この地脈からエネルギーを受け取って、なんやかんやすると…ボウッと火が点きました!これが『力術』の錬金術です!

 ですが、このままだと火が強すぎるので『生命術』の技術を使ってイイ感じに調整します。

 このように『力術』は出力に優れ、『生命術』は操作精度に優れるのです。それらをこうして組み合わせてイイ感じにすれば、色んな事が出来るようになるって寸法ですよ!


「ぐっつぐっつ煮えるよ〜水が煮える〜」


 ですがそんなすごい技術も、学ぶ為には相当珍しい『素質』やすっごいお金やら土地やら…色々な物が必要だったらしく、今や錬金術を学ぶ人間もそう多くないらしいです。

 王都にはぼちぼち居るそうですけど、その多くが王宮勤めだったり『闇錬金術師』みたいな危険物を高値で悪い人に売るような方ばかりらしいので…その『壁』は私が思うよりもずっと高く険しいのでしょう。

 こんな素敵で不思議な面白い技術なのに、学べる人が少ないだなんて…なんだか悲しいですね。


「ふんふんふ〜ん…できた!精製水!抽出用に希釈用、あとは清掃用にも必要だから……まだまだ必要だなぁ」


 そうして世を儚んでいる内に精製水が出来ました!が、これではちょっと…かなり足りてないですね。

 現在私が使っているのは小型の錬金釜。家庭用のちょっとだけ大きめな鍋くらいのヤツです。

 もちろん、普通の鍋ではないのですが…流石にその程度の大きさの錬金釜で、一度に大量の精製水を作るのは無理があります。なので何度も同じ作業をしないといけないんですよね。


 しばらくはとにかくお水を精製するだけなので、進展があるまでカット!錬金術は準備だけでも色々と手間のかかる物なのです。


「精製水はこれで十分ですかね。次は…低級傷薬用の保存溶液ですね!」


 精製水が出来たら、次は傷薬の保存期間を長くする為の媒体を作りますよ!薬草を煮詰めてちょこちょこしただけの原液は数日でダメになっちゃいますが、これを混ぜれば半年は持つようになるんですよ!凄いですよね!


 材料は精製水と人工魔法生物のスライムから採った体液を乾燥させた粉末です。裏庭でも数匹生育しています。

 水と粉末を混ぜて、魔力を込めながら撹拌すれば…とろみのある液体が完成しました。粉末を多めに入れてあるのでかなり重量感がありますが、この後に水薬を混ぜればちょうど良い感じになる筈です!


「低級傷薬用の保存溶液、ヨシ!さてさて、いよいよ出来ますよ〜!」


 ようやく目的の傷薬の錬金です!既に材料は用意してあるので、これらを加工して器具に詰め込んで抽出をしますよ!

 材料は森の中に自生している薬草が数種類、これを煮たり刻んだり磨り潰したりします。

 そしたらそれぞれ別の器具に入れたりして…火にかけたり水で煮だすなりして欲しい成分を抽出します!


「ちゅ、ちゅ、ちゅーしゅちゅー!素材セットよし!錬金道具セットよし!チャッカ!ファイアー!火加減…よし!キコキコキコキコ、器具が下に参りま〜す」


 機具に素材を入れたりして準備が完了したら、抽出機に火をかけて必要なエキスを取り始めます!

 取ったエキスはフィルターを通して保存溶液の入った器に入ります。撹拌は中に入っている器具に動力を通しているので、私は適宜火の調節をしたりするだけですね。


 …この光景を見てなんとなく違和感を持った方もいるかもしれません。実は私、まだ高位の錬金術は教えてもらえていないので、殆どふつうの薬学と変わらないんですよね。

 鉱石類を扱えるようになればもっと錬金術っぽい事も出来るんですけど、危険度や難易度も相応に跳ね上がるので【ひよっこ】の私はお師さまの監督がなければ扱えません。


 お師さまの錬金術はもっと色んな機材を使ったり、大きな錬金釜を使っています。これこそ錬金!って感じの見た目なのですが…私がその域まで行くにはまだまだ道のりは遠そうです。


「はぁ…はやくもっと大きな錬金道具が使いたいなぁ〜」


 私が現在使っている錬金道具は初心者用の物なので、一度に作れる薬品も少ないです。

 言うまでもないですが、道具は大きければ大きいだけ一度に大量の薬品を生産できます。ですが、その分火の通り方が違ったりして扱いも難しくなりますので、私が中型の錬金道具を使えるようになるのもまだまだ先でしょう。

 お師さまから錬金術を学んで早6年…一人前になるにはまだまだ掛かりそうです。


「出来た!【低級傷薬(原液)】!ふっふっふ〜、私にかかればこの程度お茶を沸かすのと変わりありませんね!」


 そんなこんなで完成しました!このお薬はちゃんとした診療所や病院でも扱われてる傷薬を、錬金術によって長持ちするようにした物です。

 実際に使う時には専用の希釈剤を混ぜなければなりませんが、こちらは知識さえあれば誰でも作るのは難しくないので、錬金術師と提携しているお医者様なら問題なく使用できる筈です。


「さ〜て、これを後2本分ですね!がんばっちゃいますよ〜!」


 精製水は予め多く作ってあるので、錬金道具の清掃をしたらまた抽出です。同じ作業をあと二回…そう難しい事はしてないので、失敗する事もないでしょう。

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