表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
11/15

晩餐

お部屋の準備が整いましたと使用人が迎えに現れ、ひとりづつ使用人に連れられて個室に案内された後は文字通り、夜の支度に追われた。


各部屋に湯舟が持ち込まれ石鹸でごしごしされ、真新しいシャツに着替えさせられた。

何着もの服が引っ掛けられた台車が運び込まれとっかえひっかえ着せられ、クロウやガイなどはその場で仕立て屋が縫い直した程だ。熱した鉄ごてで髪を撫でつけられ香油を塗られた。

リナには侍女の手により化粧が施された。

石鹸は臭いし衣装は動きにくいし頭がかゆいとかこうものなら触るなと怒られた。これだけで3人は貴族なんかもうたくさんだと思ったとか思わなかったとか・・・。


支度は終わり、夕食まで着崩さない様おとなしくしている以外にできることはなかった。

リナには気を利かせた侍女が数冊の本を差し入れてくれたのでそれを読んで時間を潰した。最も、本の内容はドーリア王国の歴史とそれにまつわるフロックハート家がどれほど貢献して来たかというものだったが。最後の一冊だけは詩集だった。


案内された部屋で、レオはベッドに寝転がっていた。

「・・・残ってるとはな」

室内は整えられており掃除も行き届いていた。

案内に立った使用人は「どなた様もお使いになられておりません」と言ってドアを開けた。誰の采配であるかはすぐに察しが付いた。出迎えに現れた年配の男。もう髪は半分以上白くなっていた。少し痩せたような気がした。

「・・・にしてもあの野郎」

思考はすぐに別のところに移った。馬車の前に現れた黒服の男。商売を始めた時からの顔なじみで、港湾局の役人である。係船料を払うに当たって偽名で登録することを条件に大目に払っておいたにも関わらずこの様だ。じじいは一体どこから聞きつけてきたのだろう。しかし、いつ、どの船に戻るのかを漏らしたのかは絶対に奴だ。でなければあんなにタイミングよく船の前で馬車が待っている筈がない。上乗せを貰って朝から待ち伏せに付き合っていたのだろう。あの上機嫌の笑顔がそれを物語っている。

(覚えてろよあんの野郎・・・)



夕食前に使用人が呼びに来て広間に集まると、ガイとクロウはお互いの装いにどこを見ればいいのかわからず視線がうおさおした。レオが袖のボタンを留めながら足早に入ってくる。着慣れた動作でその装いも堂に入っていた。

「みなさんお揃いかな」

最後にチェスター卿が入ってくると、昼間の時とは違って襟の高い上着に喉元にシルクのリボンタイを締めた正装だった。リナをみとめるとすっと片腕を差し出した。戸惑っていると、レオが目で頷くので手を添えた。

「では、行こうか」

卿に案内され晩餐の間に入った。

晩餐は公爵家らしい豪華さだった。食器は銀器やガラスや真っ白な磁器が使われ、一皿ずつ提供され、間を給仕たちが回って飲み物を継いだり終わった食器を片付けたりした。

卿はこのガレイア港がいかに素晴らしい港か、代々に渡ってどれほど支援してきたかを上機嫌で語ってくれた。ガイとクロウはいかにこの服を汚さないか、どうやって食べればいいのかで頭がいっぱいでそれどころではなかった。リナは慣れないテーブルマナーに四苦八苦していた。王国ではこんなにたくさんのナイフも器も使わなかった。レオはひとり静かに食事を進めていた。


食後は別室に移った。

使用人の推す台車から茶色く濁った飲み物が提供され、嗅いだこともない不思議な香りがした。涼しい顔でカップを傾けているレオを見て、口を付けた途端リナはうえっと顔をしかめた。

「はははお嬢さんにはまだ早かったかな」

これは南の島で採れる珍しい豆の粉からつくる飲み物なのだと説明してくれた。クロウもウエっという顔をしたがガイはそうならなかった。

「お、うまい」

「ほお、わかるかね」

卿は嬉しそうにガイに近寄って行った。

「あんまり飲んだことはねえんですが確か豆が違うと聞いたことが」

「その通りだよ。産地によるんだ。この豆はまだあまり出回ってない希少種でねえ、これから栽培を広げていこうと」

ふたりは豆談議に入った。

リナの前はすぐに紅茶と甘いお菓子に取り換えられた。クロウが口直しにと横から手を出してクッキーを一枚持って行った。

前触れなくドアが開き、あなた、という艶やかなささやきが聞こえた。

「ああ」

卿はすぐに出て行った。

チェスター卿が出ていくとレオはふうと息を吐いて首元のタイを緩め上着を脱いだ。それを見たガイとクロウも倣って上着を脱ぎ始めた。もっともどこを留めてあるのかわからなくて四苦八苦していたが。顎を上げて喉元に手をウロウロさせているガイに、レオが首元をトンと示してもう一個上、と教えてやる。袖が抜けなくてしきりに引っ張ているクロウに手首の留め具を外せと言ってやる。

大人しく紅茶を飲んでいるリナの前に座ると、晩飯うまかったかと聞いた。

「おいしかった!あの・・・最初の方に出て来たぷちぷちしたのが。ソースがちょっと酸っぱかったけど」

「・・・ああ、チョウガイだな。この辺じゃよく採れる。今度連れてってやるよ」

他愛もない話をしているとレオが呼ばれて出て行った。そのまま戻って来なかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ