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ソフィア攫われる!?



「すっかり寝過ごしてしまったわね」


レナトさんとついつい呑み過ぎてしまって気がついたら夜が明けてしまっていた。

日が明けてからレナトさんを見送って眠りについたから、起きたら昼過ぎなのは仕方がないわよね。

レティシアはそろそろ帰ってくるかしら?

お昼は食べて帰ってくると言っていたから夕食の準備だけで大丈夫ね。


「んー、暇だわ」


魔法付与のお仕事は終わってしまったし、特に予定がないのよね。

家にいたらまた寝てしまいそうだから、食材の買い出しにでも行こうかしら?

レナトさんから貰ったこんにゃくを豚汁に入れてレティシアに出してあげたいから、今日の夕食は豚汁にあうメインが良いわよね。


「豚カツにしましょうかしら。でもそれなら買い出しは必要ないわね」


それなら久しぶりにショッピングに行こうかしら。


でも、それなら南区まで行ったほうが良いわね。

私達が住んでいる西区は住宅が多いから食品系や日用品のお店が多いのよね。

それに比べて南区は隣国である大国のフェニーチェ帝国から入ってくる品が集まる場所。

だから商業施設が沢山建ち並んでいて南区に行けば大概の物が手に入ると言われていて、沢山の商人が南区に店を出すのを目標にしているのよね。

武器や防具が欲しいなら職人が多い東区に行くのだけど、今日はレティシアがいないから一人で行っても意味ないわね。


「そういえば新しく南区に大型複合施設が出来たと言ってたわね。大きな建物に色んなお店が入っているから楽しそうね」


近くから乗り合い馬車が出ているから直ぐに行けるわね、今から行こうかしら。


「春服はレティと一緒に買いにいくと約束しているから、新しい靴を見に行こうかな」



お気に入りのオフホワイトのワンピースを着て、サイドにゆるく三つ編みに編んで同じ色のリボンを結んでみようかな。


「あとはネックレスとブレスレットを着けて、財布持って…鍵持って…うん、忘れ物なし!」


若草色のショルダーバッグを肩にかけて戸締まりを確認する。

レティシアには買い物に行ってきますと置き手紙を置いたから、出かけている間に帰ってきても大丈夫ね。


鍵がきちんとかかっていることを再度確認していると凄い勢いで走ってきた馬車が一台目の前に止まった。


「なんなの?」


私達の住居兼店舗は奥まった場所にあるし、周りの家は今空き地だから馬車がここに来るなんて怪しすぎると思い慌てて踵を返し扉を開けようとしたが、馬車から怪しい男達が飛び出してく方が早かった。


「おっと、そこを動くなよ」


ニヤニヤと汚い笑みを浮かべながら、手入れがされていない刃こぼれしている剣を私に向けてくる。


「いったい何のようですか?」


「お前を連れてくるように依頼されているんだよ」


依頼と言う事は、黒幕がまだいるって事ね。


「助けを呼ぼうとしたって無駄だぞ。この周り一帯には防音と隠蔽魔法がかけられている。

それにお前の妹がAランクの冒険者だって事は調べてある、だからこそ不在の時をわざわざ待ってんだよ」


それを聞いた瞬間、深いため息が漏れてしまった。

王都には犯罪を犯させないために犯罪に使われそうな魔法が街なかで使われた場合騎士団に知らせる魔導具がいたる所に設置されているというのに。

刃こぼれしている剣といい、有名な魔導具の存在を知らないこの男達はなんて無知で愚かなんでしょう。


「さぁ、か弱いお嬢さんは大人しく俺達についてくれば良いんだ」


「確かに私は冒険者ではないですしレティシアと違って運動が得意ではないです」


このまま時間を稼いでいるだけできっと直ぐに助けに来てくれるのでしょうけど。


どうやら私は、武器を持っていて数でも勝っている自分たちが優位だと、妹がいなかったら私など簡単に言う事を聞かせて攫うことが出来るのだと言われて少々腹が立ってしまっているようだ。


「あ?」


怪訝な顔をしている男達に向かって微笑む。


「レティシアほどの魔力はないのですけど─────私、魔力操作が得意なんです」


「なにを言ってっ」


言葉を最後まで発することなく男達と馬車は瞬く間に全員が全身が氷漬けにされた。


「だから、死なせずに男性を数人捕まえることなんて簡単に出来るんですよ」
















「団長」


「あぁ、防音と隠蔽魔法だな」


王都では犯罪に使われやすい魔法が使われた場合、使われた場所を検知して騎士団に知らせる魔導具が置かれている。


「場所は」


防音と隠蔽と言う事は計画的犯行で、誘拐などの陰湿な事件の可能性が高いため早く駆けつけなければいけない。


「───第三騎士団の敷地の横、【まんぷく亭】の店の前です!」


「はっ!?隣ではないかっ、急いで行くぞ」


「はいっ」


急いで門をくぐり道に出ると店の前でソフィアが数人の男達に囲まれていて、そのうちの一人がソフィアに剣を向けているではないか。


剣を向けられて脅されているソフィアの姿に怒りがこみ上げる。


ソフィア!!


「私が、魔法でソフィアさんに剣を向けている男の動きを止めます。団長はソフィアさんの救出をお願いします」


「分かった、ロベルト以外の団員は他の犯人の無力化及び確保を」


「「「はい!」」」


ソフィアに怪我を負わせない為に先ずロベルトの魔法で拘束を試みようとした瞬間、ソフィアは剣を向けられているのに何故か全ての者が見入ってしまうほどの美しい笑みを浮かべた。


「レティシアほどの魔力はないのですけど────私、魔力操作が得意なんです」


ソフィアが言葉を口にすると同時に男達と馬車が一瞬にして氷漬けにされる。


魔法の展開の速さと男達と馬車以外に被害のない正確さに周りにいた俺達は動くこともできずに固まってしまった。

なんて美しい魔法なんだろう。


「ソ、ソフィア?」


「あら、ルイスさん。お仕事お疲れ様です」


氷の粒子が陽の光に照らされて周りをキラキラと輝かせている中でソフィアは俺達に笑顔を向ける。

その姿はまるで女神の如く美しい。


「圧巻ですね、氷漬けになっていますが全員死んではいないようです」


ロベルトは直ぐに氷漬けにされた男達の確認をして関心していた。

流石はロベルトだ、俺は驚きすぎて固まってしまっていたから助かる。


「それは凄いな。では一人づつ溶かした後に拘束を」


「それには及びません」


団員達に指示を出そうとするのを遮られると共に全身黒ずくめに仮面をつけた者が数名、突如として現れた。


「なっ!」


「何者だ!」


「我々は貴方方の敵ではございません」


俺達に剣を向けられても動じずに黒ずくめの者たちは静かに言い放ちソフィアに向かって膝をついた。


「ソフィア様。我々の出番はございませんでしたね」


「あのような者に良いようにされてはレイナルド様達の過保護が増してしまいますので」


「左様でございますね。

グラシア第三騎士団長、これから先の捜査は我々が引き継がせていただきますので、手出しは無用です」


「…王家の影か。────なぜ、王家の影がここに」


気配無く目の前に現れたのはその服装と独特な仮面を見るに、影から王族の護衛を行っている者たちだった。

隠蔽魔法など使わずに俺達に一切気配を感じ取れさせないだけあって、相当な手練のようだ。

だがしかし、何故王家の影がソフィアに向かって跪いているのだろうか。


「ではソフィア・フローレス様、失礼いたします」


「はい、よろしくお願いしますね」


王家の影は素早く馬車と男達を回収し、姿を消した。


「皆さん、お騒がせして申し訳ございません」


「いや、構わない。それよりも、ソフィアは英雄様のご息女だったのか?」


王家の影がソフィアのフルネームを名乗った瞬間全てを理解した。


英雄とは20年以上前に、この国を国落としの魔物“ヒュドラ”から救って下さった冒険者の夫婦の事だ。

英雄であるアルセニオ様とヴァレンティナ様はこの国で知らない者はいないと言われている偉大なSランクの冒険者であり、爵位はないが王家の次に尊い身分に位置づけられている。


そして、フローレスと言う名を持つものはこの世に英雄か英雄の娘である二人しか存在しないのだ。


「はい」


「そうだったのか」


それなら王家の影が護衛としてついていてもおかしくないし、英雄の娘が事件に巻き込まれたら出張ってくるな。


「団長、気がついていなかったのですか?」


「え、ロベルトお前は知っていたのか?」


「ソフィアさんもレティシアさんもヴァレンティナ様にそっくりではないですか。ご本人が知られたくなさそうにしていたので口には皆出してはいませんでしたが」


何で毎年建国祭で姿を拝見しているのに気が付かないのだとロベルトは言いたげな顔をしている。

確かになぜ俺は今まで気が付かなかったのだろうか。

周りの貴族出身の団員達もマジかよって顔をしていた。


「いや、まぁ、ここは貴族の社交の場ではないのだし、親が誰であろうとソフィアである事に変わりはないのだから問題ないだろ」


「はい、今まで通りただのソフィアとして接してください」


「ああ、もちろんだ」


ソフィアがそう望むなら英雄様の娘であろうが今まで通り接していこう。


「それにしてもソフィアの魔法はとても美しく繊細だな、余程努力したのだろう、つい見惚れてしまった」


そんな言葉を口にしたらソフィアは目を見開いた後に何故か花開くほどに嬉しそうな顔をして笑っていた。


「ふふっ、ありがとうございます」




















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