姉妹でお出かけ
「ただいまー!あれ?お姉ちゃんどこか出かけるの?」
事件が収束し団長さん達を見送った後、元気で明るい声色のレティシアが帰ってきた。
随分お茶会とお泊まり会が楽しかったのかニコニコしてご機嫌なようだ。
「おかえりなさいレティ。出かけようとしたのだけど少し面倒な事があったのよ」
今まであった事を大まかに説明したら、私の事を攫おうとした男達に対して馬鹿だなぁと思っているような顔をした。
相変わらず考えている事が分かりやすい子ね。
「わぁ、お姉ちゃんに手を出すとか命知らず過ぎる。怒らせたら怖いのに」
「レティ?それはどういうなの意味かしら?」
顔に出ているどころか声に出てしまっていたレティシアを窘める。
「い…いえ、何でもないです」
ヤバイ、口が滑ったと焦るレティシアは顔をそらし口を手で塞いだ。
口は災いの元よって言ったら口を手で塞いだまま頭を大きく縦に振ってうなずいていた。
「さて、色々あったけど気を取り直して買い物に行ってくるわ」
「どこに行く予定なの?」
「新しく出来た大型複合施設よ、新しい靴を買いたくて」
「私も着いてくー!」
「ふふっ、なら靴と一緒に春服も買いましょう」
「うん!レッツゴー」
「それにしても今回お姉ちゃんを連れて行こうとした人達って何が目的なんだろうね、話を聞く限り計画性が全くなさそうなんだけど」
「お父さんお母さん絡みの誘拐ならもっと誘拐犯らしい人達よね」
「うん、私達を囮に使ってお父さんとお母さんに言う事を聞かせたい他国の人だからね」
最近は減ってきているけど昔は定期的に誘拐未遂にあっていたから感覚が麻痺してしまっているのだろうか。
でも思い返してみても今回の誘拐犯は素人よね。
「今回もレイ兄様が調査してくれると思うからきっと直ぐに分かるわ。王太子としての公務が大変なのに申し訳ないわね」
「お姉ちゃんが悪いんじゃないから気にしないほうが良いよ、レイ兄様達だって今頃誘拐犯達に怒りを向けていると思うし」
この国の王族は国王と王妃の間に二人の王子と一人の王女がおり、王太子の名前がレイナルド、第二王子がライムンド、そして王女はシャルロッテだ。
そして王太子の妃がセラフィナであり、レイナルドとの間にすでに双子の男の子を授かっている。
私は幼い頃から王太子殿下の事をお兄様と慕っており、当時婚約者であったセラフィナ公爵令嬢の事もお姉様と慕っている。
現在も親しくして貰っている為、私がまた誘拐未遂にあったと知れば二人は激怒する事だろう。
「そうね。そういえばシャロちゃんとのお茶会とお泊り会は楽しかったのかしら」
そして王女のシャルロッテはレティシアの1つ下の生まれであり、歳が近いため仲の良い姉妹のように育ち、今でも定期的にお茶会やお泊まり会を開いている。
「うん!久しぶりに会えて話が弾んじゃったよー!相変わらずリカ兄様の話が多かったけど」
「ふふっ、シャロちゃんらしいわね」
リカ兄様とはシャルロッテ王女が恋してやまない公爵家の当主であるリカルド・アルバ公爵のことである。
第一騎士団の団長を務めているリカ兄様は私達と王太子、第二王子にとって頼れる兄的存在であり、第三騎士団長のルイス団長よりも背が大きく素晴らしい体格の持ち主なのだ。
因みにシャロちゃんとは12歳差であるため、毎度シャロちゃんがリカ兄様に告白するが親愛だと思われ片思いが続いている。
「後、途中で仕事を抜け出してきたライ兄様が混ざってきて。
あ、ライ兄様がロイヤルストロベリーをお土産でくれたから帰ったらショートケーキ作ってあげる」
「それは嬉しいわね!ロイヤルストロベリーは普通じゃ手に入らないもの。楽しみだわ、レティの作ってくれるショートケーキ」
それにしても相変わらずライ君はレティの事が大好きなのね。
こちらもライムンドからレティシアへの一方通行の恋であり、当の本人であるレティシアはライムンドに恋心を向けられている事に一切気がついていない。
乗合馬車に揺られて数十分で目的地に到着して馬車から降りると目の前には赤茶色の煉瓦で出来たアーチ型の門と壁、白い格子の窓と彩り取りの花の花壇が並んでいてまだ中に入っていないのにわくわくしている自分がいた。
「おー。凄く大きな建物だね」
「そうね、飲食店も含めると100店舗以上が入っているんですって」
「沢山だね」
円形に建てられた建物の中心には見上げるような噴水の水が、ステンドグラスの天井から射し込む光を反射してキラキラと輝いて目を奪われる。
「あっ、あそこのお店のドアが勝手に開いた!」
「まぁ、自動で開いてくれるドアなのね」
「見て見てお姉ちゃん!階段が動いてるよ」
「新しく帝国から入ってきたエスカレーターって言う魔導具らしいわよ、乗ったら動かずに上に着くまでじっと待つんですって。
今回この大型複合施設を作るにあたってフェニーチェ帝国の魔導具を沢山採用したと聞いたわ」
「そうなんだ、凄いね帝国って。おぉー、本当に上ってる。不思議な感覚」
「5階建てだから階段を登らなくていいのは楽で良いわね」
「面白いね!もう一回乗ろうよ」
「後でね。女性物の洋服屋さんが入っているのは2階だそうよ」
「一つ一つのお店も結構大きいね」
「そうね、沢山商品が置いてあるから見応えがあるわ」
気になるお店の端から次々と入ってはレティシアと気に入った品を購入していった。
「けっこう買っちゃったねー」
「今日は気分転換にしたかったし、たまにはパーッと使うのも良いかなって」
「おぉーお姉ちゃん太っ腹ー」
「うふふ、さあ、まだまだ買うわよー」
「わーい!次のお店に行こう」
二人ではしゃぎながら歩いていると、一軒のショーウィンドウの中のワンピースが目に入った。
「このワンピース綺麗ね」
「綺麗だね、このワンピースお姉ちゃんに絶対に似合うよ。そうだ、これ私がお姉ちゃんにプレゼントするよ」
「あら嬉しい、じゃあ私もレティに何かプレゼントするわ」
店内に入り店員にワンピースを出してもらうと、レティが私にワンピースを当ててみる。
「うん、やっぱり似合う!サイズは大丈夫そう?」
「ええ」
レティシアは持っていたワンピースを店員に渡してギルドカードを見せる。
「支払いはこれでお願いします」
「はい、かしこまりました。少々お待ちください」
成人したレティシアはお小遣い制じゃなくなってギルドカードに魔物討伐した報奨金を貯めるようになった。
たぶん相当な金額を貯めていると思うけど無駄遣いしてないから心配はしてない。
数年前からギルドカードで買い物ができるようになったから現金を持ち運ばなくて便利よね、
いっぱい買い物したいときお金を沢山持たないといけなかったから本当に便利になったわ。
帝国ってカード払いの仕組みを考えたり支払い端末の機械を作ったり、他にも色々魔導具を開発してるって聞いて、どんな国なのか気になって仕方がない、いつか行ってみたいわ。
洋服屋を出た後、レティシアも靴を欲しがったので私が靴をプレゼントすることにした。
自分の靴も一緒に買うために三階のフロアへと向かう。
「お姉ちゃんこの靴可愛い!あっこっちのも可愛い、どうしよう悩むな」
「こっちの高いほうをプレゼントするから、それは自分で買ったら?用途が違うんだし」
「そうだね、そうする。お姉ちゃんは決めたの?」
「ええ、私はこれにするわ」
毎年レティと行く山菜採りに履いていく靴を新調することにした。
選んだ靴はレッドシープを鞣した革で出来ていて柔らかくて軽いからどれだけ歩いても疲れなさそうね。。
会計を済ませ店を出ると三階の一番奥にレトロ調の喫茶店を見つけた。
レティは遠くからでもわかるのかガラスケースの中に入っているサンプルを見ている。
「お姉ちゃん!お姉ちゃん!あそこのお店のパフェが凄く美味しそうだよ」
「あら良いわね、買い物も終わったしパフェを食べて休憩しましょうか」
カランカランとドアベルを鳴らし扉を開けると落ち着いた雰囲気の店内に数人の客が楽しそうにパフェを食べていた。
店員に席を案内してもらい、席に着くとお水とメニューを持ってきてくれる。
「私このチョコレートパフェ食べたい」
「なら私は苺パフェにするわ」
10分程待つと二人の前にパフェが運ばれてきた。
「かわいいわね、食べるのがもったいないわ」
「本当だね、一番上にハートのクッキーが刺さっているよ」
「いただきましょうか」
「うん、いただきまーす」
私はスプーンでアイスと生クリームと苺を一緒にすくって食べ、レティはクッキーでチョコレートの付いたアイスをすくって口に入れた。
「おぉ、凄く美味しい」
「苺パフェもとても美味しいわよ、一口食べる?」
「食べる!」
あーんと口を開けて待つレティを見たら雛鳥みたいでつい可愛いと思ってしまった。
「美味しい!お姉ちゃんもどうぞ」
「ありがとう、チョコレートパフェも美味しいわね」
ゆっくりとパフェを味わいながら次はどこへ行こうかとかんがえる
ふと、店内に貼ってあるポスターが目に入った。
楽しそうだと思いレティを誘ってみることにした。
「ねぇレティ、せっかくだから屋上に行ってみましょうよ」
「屋上に何があるの?」
「遊園地って言う遊ぶ場所があるらしいわ」
「遊園地?」
「大人も子供も楽しめる遊戯施設だって」
「へー、行ってみたい!」
お店を出てエレベーターへと向かう。
エレベーターという名の乗り口には大きな扉と鉄で出来たおしゃれな格子があり、綺麗な制服を着た店員が立っていた。
ポーンと音がすると店員が格子をスライドさせてたたむと扉が開いた。
中から数人の人達が降りてくると中にいた同じ制服を着た人が「上に参ります」と案内してくれる。
レティとドキドキしながら入ると扉がしまり動きだした。
「これに乗ったら一番上にまで行けるみたいよ、名前はエレベーターですって」
「エスカレーターじゃないんだ、でも面白そうだね」
エレベーターの中に入ると目の前には王都の街並みと遠くの山々が見えた。
「わぁー、正面がガラス張りになっているから上がっていくのが分かるんだ。遠くの山の上にまだ雪が残っているのが見えるよ、綺麗だね」
「凄いわね、エレベーターを王城にもつけたらいいのに」
「確かに。王城って階段が多すぎるよね」
ドレス姿で階段を登るのは結構疲れるのよね。




