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連続猟奇自死事件に関わる記憶の補完  作者: 嫗 熊猫


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⑷ 訪問看護の元同僚 ~元同僚の内談録~

彼女は年下ですが仕事先では先輩でした。


 彼女はおっとりした優しい人で、“仕事ができる”というタイプではないけれど、患者さん達やそのご家族からは“じっくりと話を聞いてくれるし頼りになる”と評判もよかったです。


 私とは入社後すぐの研修期間に教育係として着いてくれて、すぐに仲良くなりました。

明るいし社交的な人だったので、終業後にみんなで飲みに行ったり、休日に一緒に出掛けることもありました。


 ある日、幼少期から精神疾患があり、引きこもりだという男性の新規の訪問依頼が入ってきました。


 その名前を見て彼女は「え!?まさか…」と驚きを隠せない様子でカルテを手に取り読み始めました。

「知り合いだった?」と声をかけると、

「…多分…。」「でも、だとしたらあれからずっと…?」と困惑していました。

 

 その様子を見ていた所長が、「別の人に担当してもらう予定だけど、気になるなら一緒に行ってみても良いよ。難しそうな患者さんだし、担当1人だと負担が大きいかもだから、その辺も見てきて報告くれると嬉しいし」と提案したんです。


私も「所長もそう言ってくれてるんだし、行ってみたら?」と勧めました。


彼女ははしばらく考え込んでいましたが、

「行ってみます」と返事をして担当予定の看護師と調整し、初回訪問の日を迎えました。


 その日は訪問数が多くて、他の人のことまで気をかける余裕がなかったんですが、初回訪問から戻ったその看護師と彼女が硬い表情で所長室へ入っていく姿を見かけました。


その後、2回目の訪問の時には彼女が担当になっていました。


 彼女に事情を聞いたところ、担当になるはずだった看護師が担当を固辞したらしくて…

初回訪問でかなりきわどい‘’攻撃性‘’のある患者さんだと分かったそうなんです。

その看護師とは会話が成立しなかったというのもあるようなんですが、その看護師がどうしても関わりたくないと所長に言っていたそうです。


 そのこともあって2回目の訪問の際は念の為にと所長が付き添って行きましたが、何事もなく戻ってきていました。


 報告会では、初回訪問時は部屋への侵入を拒むようにクッションなどを投げつけることがあった様子でしたが、人に当たらない場所に向かって投げていた為、‘’他傷行為‘’にはならないと医師の判断がありましたし、2回目の訪問の際には、特に興奮した様子もなく彼女の呼びかけに対して部屋の扉を少し開けて外の様子を伺うなどの反応があったと言っていました。

 そのこともあって彼女がメインの担当者として対応することが決まり、今後の状況を見てほかにも担当者が必要か判断することになりました。


 そして3回目の訪問の日、花が萎んだ様に項垂れていた彼女に

「今日は体調でも悪いの?」

と声をかけると白んだ顔を上げて、

「例の患者さんのことなんだけど、やっぱり知り合いだった。小学3年の時の同級生で途中で引っ越して連絡取らなくなってて………こんなことになってるなんて思わなかった」

「今日は1人なんだよね。ちょっと不安かも…」

と人差し指で頬を掻きながら言ってきました。

 「誰が患者さんでもいつもとやることは変わらないでしょ!大丈夫!もしプランとかで悩む様なら手伝うし、いつでも言ってね。」と声をかけると

「そうだよね。頑張ってくる!」と、から元気ながらも笑顔を向けてくれたので大丈夫だと思っていたんです。


 しかし、その訪問の翌日から彼女が出勤することはありませんでした。

例の患者さんから暴行を受けて顔面や腕などに傷をおって足と手の指を骨折し、搬送先の病院で入院になったんです。

患者さんの方は自室で頭部数カ所を自分で切り裂いて死亡していました。

 その事件後、担当予定だった看護師は辞職して、彼女も怪我は治ったんですけど、PTSDと診断されて……ずっと独り言をいっていて周りの声に反応しない状態だったんです。

身の回りのこともできない状態でしたから、しばらくは入院していましたが、半年くらいで退院してその後は通院を続けていたようでした。

退院して1年程たって彼女との連絡がつかず、これ以上の休職扱いができないということで解雇になってしまって…私からの電話やメッセージも無視されていて連絡が取れなくなりました。


 ………彼女の事件はニュースで知りました。

 彼女も看護師ですし精神科の治療に関しては理解も深いので、自分が患者側になったとしても通院を続けていると思っていたんですけど…やめてたんですね。


 あの事件は、PTSDになった件が関係していると思っています。

なにせあの患者さんに似ていましたから………


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