⑵ 小学生時代の友人 ~幼馴染の悔恨録~
彼女とは小学校に上がってすぐに仲良くなった。
美人とか凄くかわいいとかって感じじゃないけど、人見知りせず誰とでもすぐに仲良くなってる愛想のいい子だったし、俺をふくめて男子の友達と遊んでることの方が多いくらいお転婆だった。
その頃はガキだったし、友達と駆け回ってるのがただただ楽しい年齢だった。だから、彼女のことも友人として好きだったし、ほかの面子もそうだったと思う。
いつも遊ぶ面子は決まってて、男子3人と女子2人の5人グループだった。
小学校低学年だと普通は同じ地区の子共たちで遊ぶものだと思うけど、俺たちのグループは結構離れた地区の子が入り混じってた。
それもこれも、彼女が未就学のころからあちこちの地区に現れてはその辺の子に積極的に声をかけて遊ぶことを繰り返していて、俺たちも小学校に入ってすぐ彼女から紹介されて一緒に遊ぶ仲になった。
一番遠い地区の子は当時の足で彼女の家から1時間半くらい歩くほどの距離があったから、彼女の行動範囲の広さはお察しだ。
そのくらい当時の彼女は活発な印象が強かったよ。
彼女と疎遠になったきっかけもはっきり覚えてる。
小3の夏休み前くらいにいつもの面子で駅前にあった神社に行ったんだ。
そこはよく行く遊び場の一つで、近場に2つの公園もあったし、みんなの家からの距離もちょうど同じくらいだったからそのあたりが縄張りみたいになっていたんだ。
駅前の道がまっすぐのびてその神社がある小山に突き当たって、左右に別れる大通りが通ってる。小山にはくねくねとまがりながら頂上へ上る階段がのびていた。
その中腹に朱色の鳥居と祠があって祠の両脇には巻物や玉を加えた二対の狐が祠を向いてすわっていた。階段と祠の周りには竹林があってその影で少し暗いけど怖くはなくって、暑くなってきた時季にはすずしくて過ごしやすいくらいだった。
頂上には公園の一つがあるけど、その日は上級生がドッチボールをやっていてそっちで遊ぶには上級生たちが怖かった。
俺たちは階段でじゃんけんで歩数をきめるグリコって遊びをやったり、追いかけっこしたりしてた。
祠の左右で鬼の子と対峙していたとき、ふと真っ黒な穴が目の端にひっかかった。
鬼の子も気が付いたのか足を止めてゆっくりと祠のうしろに視線を移した。
じっと目を凝らすと今まで気が付かなかったのが不思議なほど大きな洞穴が祠の真後ろの山肌に真っ黒な口をあけていた。入り口には何かのツタが絡まりながら伸びていて不気味さを増していた。
背中につぅぅと汗がつたい、背筋を嫌な感触が這っていく。不安になって周囲をみるとほかのみんなも洞穴に視線をとらわれていた。
しばらくみんな黙って洞穴を見つめていたけど、俺たちのグループでリーダー格だった男の子が「だれか中見て来いよ」と言い出した。みんな首を振って「やだよ」「こわーい」「ねぇもうかえろうよ」「お前が行けよ」と断った。
すると言い出しっぺの男の子が「つまんねぇやつらだな、こんなんこわくねぇし」と言いつつ穴の中を覗き込んだ。「なんもみえん。暗すぎ。」そう言うと、祠の横に積んであった長い竹を手に取り、どこまで続いているかもわからないその穴に先端を差し込んだ。
「なんかあっかな」そのまま少しずつ竹を差し込みぶんぶんと振っていると、
「あっ!」と声を上げ一瞬で竹と一緒に地面に座り込んだ。
周りでびくびくと怯えながら見ていた俺たちは一斉に駆け寄って、彼のもつ竹を全員でにぎって引き抜こうとしたけれど、ドスンと重いものがのっかった思ったら、グイッっと中に引き込まれそうになった。
全員慌てて手を離し、ぎゃぁぎゃぁぁと悲鳴をあげなから階段を駆け下りた
下から見上げた神社はいつになく不穏な空気が漂っていて、重い空気がまとわりついてさっきの悲鳴のせいなのか「キィィイィィ」と高い音が耳に響いていた。
「もうかえる」彼女らしからぬか細い声でなきながらとぼとぼと歩き去る彼女の背をしばらく見送ったが、俺たちは何の言葉も発せずに解散しそれぞれの家路についた。
その夜から3日間、俺たち全員熱を出して寝込んで、その後はあの神社に行くのが嫌であの4人を避けていたから5人全員が集まることはなかったよ。
数週間後の夏休み真っ只中にリーダーの男子がうちに来て、急に引越しが決まり転校することになったと告げてきた。そして「例の洞穴にもう一度行きたいから一緒にきて」と頼んできたが、俺はこわくて断った。
その後彼とは連絡がとれなくなってしまい、俺は別のグループの子たちと遊ぶようになっていたからほかの3人がどうしたかは知らなかった。
彼と彼女の訃報は偶然テレビの情報番組で見知った名前と同じ文字列を目にして、ネットニュースを検索して知った。
もしあの時一緒に行っていたら二人があんな死に方をした原因が何かわかったのかもしれないー。




