8.私にその方法を教えてください!
後ろから私を呼び止める声が聞こえるけれど、こう見えてもみんなよりお姉さんなんだから。
蝶が逃げないように、そーっと近付いていく。
シュトリさまは羽根の動きを見つめていて、こちらに気づいている様子はない。
「あ!」
蝶が羽ばたいたと思ったら、いつの間にかシュトリさまは私の手首を掴んでいた。
「驚かそうとでもしていたの?」
「違うのですー!」
柔らかな眼差しは、とても機嫌が悪そうには見えなかった。
シュトリさまは私をお腹の上に乗せて、手首を掴んでいた指を滑らせると、私の手はすっぽりと覆われてしまった。
「シュトリさま、大きいのです」
「ツムギは小さくて、かわいいね」
やっぱり全然怖くない。
ノイルたちは何を勘違いしたのだろう。
「どうして、ここにいるのですか?」
「ツムギに会いに来たんだよ」
「そうなのですか? 何かご用事でも……」
シュトリさまが視線を逸らした。
見つめる先に目を向ければ、こちらを見守るノイルたちの姿があった。
「邪魔だなぁ。ツムギとおしゃべりしたいのに」
そうシュトリさまが呟いた瞬間、ピリッとした電流のようなものが走った。自分の頭を押さえたノイルたちが、背を向けてそれぞれ羽ばたいていく。
「え? どうしたのです?」
「気を遣ってくれたみたいだね」
「なるほどー!」
みんながいい子で優しいと思った。
「ちょっと愚痴を言ってもいい?」
「もちろん!」
珍しいけど、シュトリさまだってそんな日もあるよね。
「僕より上のおじいさんたちがね、頭が硬くて嫌になるよ。前例のないことは認められないんだって」
「そうなんですね」
「聞く耳すら持たないんだよね」
それは分かるかもしれない。
私は口を挟まずに頷いた。
「あのね、ツムギ」
「なんですか?」
「まだまだストーンが集まらないけど、別の方法で大人になってみたくない?」
そよ風が吹いて、花が揺れた。
「そんな方法があるのです?」
「あるよ、特別なね」
「……」
聞いたこともない話だ。
みんなコツコツとストーンを貯めるものだと思っていた。
シュトリさまは物知りで、私の知らない方法を教えてくれる。
「大人になりたいです。そうしたら、もっとみんなみたいにお役に立てるのです!」
本当は同じようにできたらいいけど、早く大人になってその分たくさん働けばいい。
真っ白な大きな羽根で空を舞って、困っている人のところに駆けつけたい。
「シュトリさま、私にその方法を教えてください!」




