7.お待ちになってお姉様
先生役である天使が目を吊り上げて言った。
「最近はちゃんとお役目をこなすようになったかと思えば、役目を放り出していたとは何事ですか!」
製造番号 00317のサファエルは、昔からすごく真面目。私と一緒に遊んでいた時代もあったはずなのに、瞬く間に大人になってしまった子だ。
「あなたは成長せずに、このまま遊んでいるつもりですか?」
「そんなつもりは……」
「おふざけばかりして、神への冒涜ですよ!」
目の前に指を突きつけられて、私は口ごもった。
「ねえ、サファエル。聞いてもいい?」
「なんですか? 質問することを認めましょう」
「ここから追放……『だてん』っていうやつになったら、その天使はどんな目に遭うの?」
「悪魔に堕ちると言えば、あなたにも理解できますか?」
私は首を横に振った。
「悪魔は聞いたことがあるけど、見たことがないからわかんない。たしか、人間を誘惑したり支配したり?」
「ええ。害にしかならない存在に成り果てます。天使であった時の慈愛の心も何もかも悪へと染まってしまうのです」
「……天界からいなくなるだけで?」
自分が自分じゃなくなるなんて、よく分からなかった。
「それが怖いなら行動を改めなさい。あなたも立派に一人前の天使となり、神に従い、人間を導くのです」
「はい……」
「また失敗が続くようなら、しばらく謹慎にしますからね」
「えっ」
それは嫌だ。
誰とも会えずに、遊びにも行けなくなる。
勢いよく首を振る私を見て、サファエルは小さく息を吐いていた。
* * *
次のお役目まで、まだ時間がある。
ノイルたちとおしゃべりをしたくて、私は花園へと向かっていた。
「あれ?」
いつも集まる場所より手前。そこに、浮かない顔でノイルたちは集まっていた。
「こんなところに集まってどうしたの?」
「お姉様! それが……」
ひらひらと蝶が舞うのを目が追いかけた。
花に囲まれて、誰かが中央に寝そべっていることに気がついた。
その人は、そっと指を伸ばすと、そこに吸い寄せられるように蝶が止まった。
「シュトリさま!」
私が駆け出そうとするのを、周りの天使たちが止めた。
「お待ちになって、お姉様」
「なんで?」
ノイルが遠慮がちに教えてくれた。
「少々、シュトリ様は気が立っているようで。お姉様でも近付くのはやめておいたほうが……」
「そうなの? 珍しいね」
私は唸りながら考える。
機嫌が悪いなら、どうしてこんなところに現れたんだろう?
「私がお話を聞いてくるね。みんなはここにいていいから!」
「お姉様!?」




