5.僕がいないと不安?
シュトリさまにこっそりと手伝ってもらうことが増えて、私は少しずつストーンが増えていった。
ごきげんになりながら、シュトリさまからもらった王子様とお姫様の絵本を読んで、ノイルたちに髪を梳かしてもらった時のことだった。
「お姉様の髪は光に当たると色味が変わって、綺麗ですね」
「そうかな? みんなみたいにキラキラしてないよ」
ブロンドの髪をした天使が多い中で、私の髪は暗い色合いをしていた。
「花の香油を塗り込んでおきますね。いい香りがしますよ」
「おしゃれだ……!」
こういう些細なことが、大人になれない私とは違う気がする。
手元の本に視線を落として、疑問を口にした。
「ねえ、ノイルたちは恋をしたことがあるの?」
「恋ですか?」
「大人になれたらね、私も恋をするのかな?」
絵本みたいな二人に、ちょっと憧れている。
ノイルは何度かまばたきをして、不思議そうに言った。
「お姉様、私たち天使にその感情はないと思います」
「え? そうなの?」
「神と人間に対し、尊敬や慈しむ気持ちはありますが……。人間のように一人を深く愛したり、恋に悩んだりすることはないかと」
思いもよらない事実に、私は呆然とした。
天使って人間みたいな恋愛の感情はないんだ。
思い出してみれば、地上で見る恋人たちみたいな二人を天界でみたことがない!
これが答え合わせなのかも。
「なんだか残念だね」
「そうでしょうか? たくさんの人に向けられる愛のほうが綺麗ですよ」
ノイルの言葉に、そういうものなのかと思った。
* * *
摘んできた花を部屋に飾って、明日からのお役目に備えて眠ろうとした時だった。
「やあ、ツムギ」
「シュトリさま! 会いに来てくれたんですか?」
「そろそろ寝るところだった? ごめんね」
ドアを開けると、シュトリさまは家の中へと足を踏み入れた。大きな身体を見上げていると、目線が合うように抱きかかえられた。
「残念なお知らせがあってね」
「え?」
「明日のお役目には同行できない。僕も手が離せない仕事があって」
「そうなんですか……」
最近はずっと一緒だったのに。
「僕がいないと不安?」
「少し……。でも、シュトリさまと一緒にいた時みたいに頑張るのです!」
シュトリさまは目を細めて、「頑張ってね」と励ましてくれた。
新しいストーンを手に入れたら、一番にシュトリさまに見せたいと思った。




