3.煩わせるだなんて言い方が悪いな
神様はたくさんの天使を作りました。
神を愛し、地上の人間を守護しなさいと言いました。
それがあなた達に与えられた役目なのです。
何十回も聞いた話を、教師役の天使から再び教えられた。
私はうつむきながら反省文を書き、出来上がった文章を読み上げる。
「困っていたおばあちゃんを助けた結果、本来手助けしなければいけない人間を見失いました。彼女の運命を変えてしまったこと、深く反省しています……ううっ」
最後のほうは涙ぐんでしまった。
また、やっちゃった。
「あんまりにも落ちこぼれだと、身体が成熟する前に堕天してしまいますよ」
私は顔を上げ「だてん?」と復唱した。
「傲慢さで神への反逆と見なされると、天界から追放されるのです」
「……ひっ」
追放?
それってどうなっちゃうの?
何も想像できないことが怖くて、また涙があふれ出した。
「神は慈悲深い方なので、あなたの失敗くらいではそうなりませんけど。……聞いてますか?」
「だてん……」
どうしよう。ここから追放されたら……。
* * *
ノイルたちが過ごす花園へと私は駆けた。
小さな背中の羽根で飛ぶのも、こうして走るのも変わらないのだ。
大人になれば皆みたいにうまく飛べるのに……。
「あら? 可愛らしいお顔を真っ赤にしてどうしたのですか?」
「泣いているの? お姉様」
天使たちに囲まれて、私は「追い出されちゃうー!」と叫んだ。
「ツムギお姉様を追い出す者なんていませんよ。こんなに一生懸命頑張っているんですもの」
「失敗が怖いのなら、人間界になんて行かないでください」
「地上に行くことだけが守護じゃないですもの」
みんなは慰めてくれるけど、私は首を横に振った。
「地上で頑張らないと、大人になれない……」
失敗するのは怖い。
でも、小さなままだなんて嫌だ。
散々泣いて、ちょっと眠くなってきちゃった。
みんなよりも私はいっぱい眠ってしまう。たぶん、これも子どもだから。
「お姉様は眠そうな時も可愛らしいわ」
「でも、こんなところでは駄目よ」
「一番近い、ノイルの家に運びましょう」
みんなの話し声が、突然止まった。
「やあ、ツムギはいるかい?」
……シュトリさま?
うっすらと瞼を開けると、シュトリさまが私の顔を覗き込んでいた。
「お勉強で疲れたのかな」
「……ふぁい」
「運んであげるね」
そこで、ノイルが声を上げた。
「シュトリ様。上位天使である、あなたの手を煩わせるわけにはいきません。私たちにお任せください」
「煩わせるだなんて言い方が悪いな」
「……申し訳ございません。でも、本当に大丈夫ですから」
「ノイル」
シュトリさまの腕が、私を抱き上げた。
「上位天使のすることに口を出すんじゃない」
バサッ。
羽根の広がる音とともに、浮遊していく感覚。私はシュトリさまに抱えられたまま、空を飛んでいた。
「眠っていなさい、ツムギ」
「……はい」
私はシュトリさまの腕につかまって、眠りに落ちた。




