26.私が上手く飛べないせい
書庫で日向ぼっこをしながら本を読んでいると、いつの間にか眠っていたようだ。
「キィェェ…! キィーキィー!」
悲鳴のような叫びに飛び起きた。
慌てて窓際に向かうと、小鳥が白い羽根に血がにじんでいた。
「鳥さん、どうしたのですか!?」
バタバタと翼を動かし、必死に痛みを訴えているかのようだ。
「手当しないといけません! でも、どうやって……」
両手で小鳥を包み、シュトリさまを探すけれど、屋敷の中に姿が見つからなかった。
「痛いですよね。治してあげたいのです」
手当たり次第に本を探してみるけれど、使えそうなものは見つけられなかった。
「人間のところなら、鳥さんのお医者さんもいるかも」
これ以外の方法は思いつかなかった。
人里の場所すら分からないまま、私は屋敷を飛び出した。
庭を駆け抜け、門扉に手をかける。
「……っ!?」
バチッと雷のようなものが、指先を痺れさせた。
もう一度触れてみると、やっぱり刺激があった。
「こんな時になんなのですか!」
小鳥は動く元気も無くなっている。
バチバチと火花が上がるのを無視して、私は門扉を開けた。
「痛かったのです」
まだ痛みの残る手のひらは、歯を食いしばって我慢する。
自分の痛みよりも小鳥の命が大切だった。
「太陽のある方向に行けばいいかも……?」
旅行記の青年は、道に迷った時にそうしていた。
木々の生い茂る森の中、葉の隙間から覗く太陽を見失わないように走った。
整えられた道ではないため、何度かぬかるみに転びそうになった。森を抜けるだけでも日が暮れそうになっていた。
「ごめんなさい。私が上手く飛べないせいなのです」
やっとのことで開かれた草原へと出ると、太陽はほとんど消えかけていた。
「目印がなくなるのです! 急がないと」
へとへとになりながら、少しでも早く人里を見つけられるように走った。
「鳥さん、寒くないですか? 頑張ってください!」
大切な友達を失いたくなかった。
私に本を選んでくれて、お話を聞いてくれて、まだ一緒に空をお散歩していない。
やがて道が現れて、光がポツポツと見えてきた。
思っていたよりも大きな街のようだった。
羽根を隠し、人間へと擬態する。
賑わいを見せる通りで私は叫んだ。
「お医者さまはいませんか! この鳥さんを助けてください!」
私の訴えに、近くにいた青年が返事をした。
「俺の兄さんは医者だよ。人間のだけど」
「この子は助けられませんか?」
「難しいと思うけど、兄さんなら獣医の知り合いもいると思う」
もしかして『じゅうい』というのが動物のお医者さまなのかな?
私は頭を下げた。
「お願いします。お礼は後で必ずするのです!」




