↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/31

19.鳥さん


「今日はお庭の掃除をするのです!」


 シュトリさまが起きるよりも早く、眠い目を擦りながら庭へと出た。


 大きなお屋敷だけあって、庭も広々としていた。荒れ放題だったせいで花はないけれど、残されていた木には果物が実っている。


 書庫から持ち出した本によると、ラズベリーやレモンの木のようだ。地上には驚くほどたくさんの食べ物があるらしい。


 草を抜いていると、白いものが動くのが見えた。


「鳥さんなのです!」 


 手のひらほどのサイズで、つぶらな瞳が可愛らしい。

 私はそっと話しかけてみた。


「どこから来たのですか? ひとりぼっちなのですか?」


「……」


「なるほど、分かりません。でも、天使みたいな羽根で素敵なのです!」


 このお屋敷に来てから、初めてシュトリさま以外の生き物に会えた。

 それがうれしくて、ついつい望んでしまう。


「私とお友達になってくれませんか? また遊びに来てほしいのです」


 小鳥は首を傾げるように動いて、高く飛び去っていった。


「あっ……。また来てくださいね、約束なのです!」


 見上げた空は太陽が眩しくて、きっと気持ちがいいだろうと思った。


「……そういえば。この羽根になってから、飛ぶ練習をしていません」


 移動はシュトリさまの羽根か、自分の足で歩くことだった。

 こんなに大きな羽根なら、もしかして自由に早く飛べるかもしれない。


 うずうずして、我慢できなくなった。


 肩幅くらいに足を開いて、息を吸った。

 小さな羽根をパタパタと懸命に動かしていた、あの感覚。

 思い出して――飛べ!!


 羽根を大きく動かすと、身体が浮いた。


「きゃー!」


 引き上げられるように身体は空へと舞い上がった。

 けれど、羽根は上手く動かせない。手足をバタつかせても、思う通りにはいかなかった。


「駄目なのですー!」


 今度は急降下していった。


 バサバサバサ……。

 木に引っかかり、そのまま枝を折りながら地面へ落ちた。


「痛い……」


 小さな身体だった頃よりも下手になっている。

 涙目になりながら起き上がると、パキッと枝を踏む音が聞こえた。


「ツムギ……?」


 シュトリさまが驚いたような顔をして、私の全身を見た。


「傷だらけになってるけど、どうしたの?」


「シュトリさまぁ!」


 私はシュトリさまの胸に飛び込んだ。

 溢れ出る涙は止まらず、声を詰まらせる。


「怖……かったのです……! 手足も痛いし、背中も痛いのですー!」


「うん、手当てしようね」


「飛べ……なくなってしまいました……ぐすっ」


「大丈夫だから、泣かないで」


 私の身体を抱きかかえたシュトリさまは、あやすように背中を撫でてくれた。

 少しでも動けば、唇同士がぶつかりそう。


「……あ」


 シュトリさまとの距離に戸惑っていたはずなのに、私から近付いてしまった。


「どうかしたかい?」


「……なんでもないのです」


「まだ体調が良くないのかな?」


 シュトリさまは髪についた葉っぱを取ってくれた。


「実は僕もまだ眠くてね。一緒にお昼寝しようか」


「子どもじゃないのです」


「分かってる。怪我をしてるから休むんだよ」


 昨日は逃げたのに、またシュトリさまと同じベッドで寝ることになった。

 鼻をくすぐる芳香にドキドキして、とても眠れないのにな……。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。